MISSION:56 スカイアイズ
待ち構えてたエリヴィラ様に捕まって、僕らの今日の行動は終わった。晩ご飯の際に東大陸に向かうと伝えたら、酷くガッカリしてたのが印象的だったよ。ちょくちょく帰れる距離じゃなさそうだもんね。
そして王様からは買い物したことないだろ? って、お金を使うことを心配されたけど、まあ大丈夫じゃないかなあ?
「買い物、できるするっ!」
「本当にそう言えるのか? 屋台で銀貨を出したりするのではないのか? んん?」
「ウチもお使いくらいしとりますけん」
≪宿でお釣りをもらえば、銅貨に崩せそうだし平気じゃないかな≫
「色々と学ぶこともあろう。世の中を知るが
「ン~?」
なんかよく分かってなさそうなフーちゃん。王様は戦闘ばっかじゃダメだよって、言いたいんじゃないかなあ?
だってバトルジャンキーなんだもの。
なんかアレだね。可愛い子には旅をさせよ的な気分で、王様は送り出すのかもしれない。世界地図を見せてもらって飛行プランを考える。安全というか、船に降りて休憩できそうな飛行ルートを取るとしたら、カンフポスティ⇔アラムの航路上空。ミケルブエバ⇔キネシムの航路上空ってことになるね。
カンフポスティとミケルブエバは邪人の被害者を送り届けた港街。エリヴィラ様の兄、エリオ氏のミルセラからカンフポスティ→ミケルブエバ→ラーハルト辺境伯のリドゥリーといった順で回った街の1つだよ。
距離的にはキネシムって港街に飛ぶほうが近いんだけど、りゅうぐう、りゅうおうの潜水艦部隊は、カンフポスティ⇔アラムの航路近辺をモグモグ中なんだよね。今はまだクラーケンをモグモグしてるんだけど。
魔石の回収とか増えた残機を集合させるとなると……もう1つの港町、アラムへ向かうのがベストかもしれないなあ。距離的には王都からチヒ鉱山街の4倍ってくらいかな。巡航速度上がる前だとチヒまでは片道3時間ってところだったから、12時間を目安に準備をしておこう。今ならもっと時短移動可能だけどねっ。
「ほお、その程度で到着可能なのか」
「そうですわね。船でしたらひと月ほどは必要ですのに」
これにはエリヴィラ様もニッコリのご様子。いや、だからといって頻繁に、ここに帰って来るわけではございませんぞよ?
どんだけワワンパァに構いたいんダヨォ~。フーちゃんにも構いたいんだけど、王様の姉ポジっていうのが、邪魔してるのかもしれないね。だからその分ワワンパァに……ガーンバレ。
「はぁ、寂しくなりますわ」
≪まあ、そんなに長期間向こうにいるってこともないと思いますよ?≫
「とはいえ、そなたらは長命種であるゆえ、時の感覚が違うであろう」
「確かに人族はいつの間にか歳を取っちょりますね」
「そう~」
≪あ、僕は元々普通の人間だから、寿命は80~90歳の感覚ですよ≫
「ええっ! ホ、ホンマに?」
「ポーちゃん、少ないする!」
≪は? え、ソコソコ長寿に国に住んでたけど……100歳以上も、それなりにいたしさ≫
「我ら人族は平均すれば200年だ」
「異世界とはどれほど過酷な世界なのでしょうか……想像もつきませんわ」
な、なんて怖ろしい世界に住んでたんだろう、僕。ってナラナイヨ!
マジでぇ? 人も長寿じゃんか、この世界。
≪驚愕の事実。魔力とかマナとかが関係してるのかなあ。魔法なんておとぎ話の世界だし。
「ポーちゃんが生き急いどる感じがするんは、こういう理由じゃったんかあ」
「うん、すぐ動くする。考える、ないする」
≪いやいや、考えてるってー!≫
うーん、時間の感覚のズレ。これからどうなるのかなあ、僕。
≪あんまり気にしてもしょうがないかな、コレは≫
「少し、のんびり、
「ほうじゃね」
≪え、なに言ってんの? 獣人見たいんだから、すぐ行くに決まってるじゃ~ん≫
遅くても明後日には出発したいと伝えたら、異世界人は忙しないんだなあって顔されました。
実を言うと僕、karoushiの国からやって来た、HENTAIを生み出すトンデモ民族です。スイマセーン。
一晩王城に泊まった僕らは、王様たちとの朝食時に挨拶をしてワワンパァダンジョンへ向かった。お弁当とか厨房で用意してもらってもいいんだけどさ、ワワンパァ本体にも会ってから行こうってことで、旅の準備はダンジョンでしようってなったよ。
「おかえりー」
「帰るしたっ!」≪ただいまー≫
「「ドールのメンテナンスをついでにしちょこうか」」
「ウフウフ、パァちゃん、同時喋る、好き~。面白いする」
両手を口に当ててクスクスしてるフーちゃんを見て、僕とワワンパァは萌え萌えキュンしてるトコ。
みんながみんなに萌えてるから、このパーティは仲がいいと信じてるぅ~。まあ、ワワンパァが僕に感じてる想いは、研究方面な気がしなくもないんだけど。
「今日準備。明日行くする?」
≪するっ!≫
「「よく分からん情熱じゃねえ」」
「私、少し分かるする。獣人、カワイイあるするー」
やっぱそうだよね! ワワンパァは故郷が東大陸だから見慣れてるんじゃないかなあ。
≪僕は果物でも取って来ようかな≫
「私、行くするー」
「晩ご飯用のもお願いするわー」
≪オッケー≫
マンゴーとブドウとリンゴを収穫して、明日に備える。エアタンカーでヒエヒエにしておくのだー。
お弁当はワワンパァ本体が、明日の出発に間に合うよう作っておくってさ。
僕も料理を覚えたほうがいいかなあ。僕がいっぱいいるから、どの時間でも行動可能だしね。全部が同時に起きてる必要がないから、食事の準備ができたらワワンパァも楽になる。
ただ……味見が不可能だから、分量や時間をキッチリ記録しておかないと、マズイご飯になっちゃうのが問題だね。走る椅子部隊から調理担当を分離して、厨房で習おうかな。焼き加減や煮加減なんかは、見て判断するしかないけど。
そんなことをつらつら考えつつ、半覚醒状態のまま夜が明けた。
楽しみすぎかよ、僕。
≪オハヨー。連れて行くエアタンカーを
「分かるしたー」
「「名前付けるんじゃろ? 別のを」」
≪モチのロン。スカイアイズにした。あんまり奇をてらっても、しょうがないしね。荷物も持ってもらうから、持って行くものは積み込んでおいてよ≫
「まかちょけぇ!」
「「ああ、じゃあフーちゃん、これ、お弁当も持ってってー」」
んーって返事したフーちゃんが、オヤツの果物と一緒にお弁当を抱えて飛んで行った。
お金は半分くらい持って行こうかな。残りはワワンパァ本体に預ける。ダンジョンのお宝にしてもいいんじゃないかな。えーと、金貨78枚と銀貨100枚をコッチに持ってきてもらう。僕らが持って行くのは金貨75枚、銀貨138枚。
これくらいあれば問題ないと思う。
≪ところでさ、高級ホテルって1泊いくらくらいなの?≫
「「さあ? ウチぁ泊ったことないけん知らんねえ」」
フーちゃんと行動を供にしてから、初めて高級ホテルに泊まったんだって。僕もだけど。そもそも物の価値が僕には分かんないしね。
フーちゃんが戻って来たので、聞いてみる。ダメな気がするけど。一応。
≪フーちゃんは高級ホテルの宿泊費って知ってる?≫
「お金、払うないしたー。知るない!」
≪元気いっぱいのお答えありがとうっ。王城で聞けば分かるけど……いくらか分かんない状態で泊まるほうが、ワクワクドキドキするから聞かずに行っちゃう?≫
「行くっちゃう、する~!」
「「なんか無意味なスリルのような、気がするんじゃけど……」」
ワワンパァは若干不安そうだけど「行くっちゃう」に反応して鼻がピクピクしてるから、その程度なんだろう。超嬉しそうだから問題なしっと。
でもその態度はフーちゃんにバレちゃうよ? ほらぁ、修正する羽目になったじゃんか。
「行っちゃうするぅ~」
フーちゃんの朝ご飯も済んだし、さっそく東大陸に向かおうか。
≪行ってくるねー≫
「行ってらっしゃーい」
そんな時にりゅうぐうから連絡が来た。
<エアタンカー2機分増えたから1機はそっちに回すよ。いやあ、儲けたね。クラーケン
まだやってたのか……無限1UP。
じゃあ回収した分をAWACSスカイアイズにしよう。
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次回≪第3章 東の国の獣たち≫に、ヘッドオン!
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