××××前は黒、後ろは灰色
点と点が繋がった。
知りたくもなかった2つの点が。
目を背けることができたらどれだけ楽だっただろう。
本当に知りたくなかった。繋がっててほしくなかった。
進むか停滞するか夜空を見上げて思案する。
雲と雲の隙間から宝石が顔を出した。
憎たらしいほど綺麗なまん丸が道を照らす。
まるで進めと言っているように。
月明かりに沿って歩く。
間違ってなんかいない。英断だ。自分は悪くない。
全ては彼女が生み出したものだから。
そう他人に責任を押し付け、腐敗していく様から目を背ける。
自分の弱さが、拙さが、愚かさが、哀しさが、
こんなにも醜い化け物を作り出してしまった。
ごめんなさい。
でももう遅い。
どれだけ理性が働こうと、真っ黒な塊は先へ先へと進んでいく。
たとえば、大好きで大嫌いな人の心の鍵を手に入れたとする。
それをどう使おうと手に入れた者の勝手ではないか?
そう言い聞かせて。
月が雲に隠れた。
何も見えない。暗い。怖い。
でも心地良い。
ピューッと生温い風が静寂を破る。
ああ、夏だ。夏が来る。
大嫌いな夏が来る。
ギュッと右手で制服の袖を力強く握る。
シワがついた。シワはなかなか直らない。
白紙に墨をかける。
黒に染まった。白には戻りっこない。
蟻を踏み潰す。
動かなくなった。今ある景色を見ることはもう叶わない。
そうか、終わってしまうのか。
戻りたい。戻れない。
月が再び顔を出した。
でも視界はモノトーンのまま。
踵を返し、もう1度月に問う。
彼女を引きずり降ろした先に何が待っているのか、
本当にこれは英断なのだろうかと。
「・・・・・・」
月は意地悪だ。2度も答えてはくれない。
ごめんなさい。
そう呟きながら暗闇の奥底へと進む。
「行かないで」
背中から馴染みのある声がした。
でも、振り返ることはもうなかった。
いつだって宝生さんは鳥かごの外に手を伸ばす。 世月春人 @Kiyo1996
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