愛とは?
後日、出社すると、いつものように明るく仕事に励む亜衣さんの姿が見られた。ひとまずほっとして仕事を進めていると、突然亜衣さんに声をかけられた。
「あ、あの……」
「あ、はい……」
いつになく気まずい俺たちに、周りも少し騒然としてしまう。
「何かあったのか?」「もしかして付き合ったとか?」「いや、そういう感じには見えねぇ」やらなんやら、色々なうわさが渦を巻いて、会社全体の雰囲気も疑惑と憂鬱に包まれてしまう。
「ちょっとお話が……」
「分かりました。えぇっと……、帰りとかでいいですかね?」
「はい」
そこで会話は終わり、昼休みも特に会話のないままついに退勤時間がやってきて、いつもは並んで歩くところを、少し距離を開けて歩いた。
気まずさと罪悪感と、一歩を踏みしめるたびにそれは増長していき、耐えられなくなった俺は切り出した。
「あの、本当にすいませんでした……」
「ぜ、全然大丈夫ですよ……。あはは」
また会話がストップしてしまう。
どう接すればいいのだろうか? 何を言えばいいのだろうか? 必死に頭を回転させた。
「……亜衣さんは、どうしたいんですか?」
「どうしたい……。先輩に迷惑はかけたくないなって……」
その言葉を聞いて思わず息が詰まった。
迷惑……。確かに今のままだと付き合えないといったのは俺だ。だけど、その言葉はあまりにも冷たく感じられて、否定したくもなった。けれど、否定も出来そうになかった。
そして俺はしばらく考えた。どうすればいいのだろうと……。
誰も傷つかないなんてそんな傲慢なことは言わない。せめて亜衣さんがしっかりとした愛情表現を学べる機会があれば……。……あれば。
いいことを思いついたかもしれない。
「亜衣さん!」
「は、はい!」
突然の勢いに、亜衣さんがたじろいでしまう。
「俺たちちゃんと付き合ってみましょう!」
「……え。えぇ⁉」
亜衣さんはそれはもうオーバーなぐらいに驚いて、目を泳がせた。
「え、ええ、えぇ? どういうことですか?」
「俺とちゃんと付き合って、それで俺がちゃんとした愛情を教えます!」
「ちゃ、ちゃんとした愛情を……、先輩が私に……?」
我ながらとんでもない提案だと思う。けれど、亜衣さんもしっかり愛情を知ってくれさえすれば万事解決する。
「そ、それってつまり、えぇっと……」
「……とりあえず付き合ってみましょう! ということです」
「な、なるほど……。ちなみにそのまま結婚という線はありますか?」
亜衣さんは上目遣いをしながら、乞うように言ってきた。
俺は目をそらして少し考えた。
「可能性は……、無きにしも非ずという感じです」
「…………」
亜衣さんの顔がみるみる内に明るくなっていき、再び歩き始めるとその足取りは信じられないほど軽快な歩みになっていた。
「ちなみになんですけど、同棲は……」
「それもまぁ、まだ決めないですかね……。というか、シズさんが許すかどうか……」
「シズさん……」
「まぁ、今日はちょっと話したいこともあるし、一緒に来てください」
「分かりました」
そして二人で家に帰り、事情を説明すると……。
「本当にそれでいいのか?」
「ま、まぁ、とりあえず様子見ということで……。別に何か変わるわけでもないと思いますし」
「……そうか」
シズさんの表情にはどこか陰りが見えるような気がしたが、俺はなるべく笑顔を絶やさぬように努めた。
そして亜衣さんはというと、俺の腕に抱き着いて、シズさんに向かっていった。
「というわけなので、ごめんあそばせ!」
「……ふん!」
シズさんはプイっとそっぽを向いてしまった。
それから、色々シズさんと亜衣さんの小競り合いなんかもあったりしてちょっと不安にもなったが、何とかまとまってくれた。
そして亜衣さんを帰し、シズさんと二人きりになると、シズさんが不意にこんなことを言った。
「言っておくが、私の方が先に幸せにしてもらうと約束したのだからな?」
「は、はぁ……」
「だから……その、あれだ、アイがだめだったときは私を……、いや、何でもない」
そうして口を閉ざしたシズさんは、うれしそうな、腹立たしそうな表情をしていた。
『お知らせ』
すいません。全く展開考えてないので、この作品はここで終わりにします。いや、考えてたには考えてたのですが、ちょっと胸糞というか、シリアスすぎるというか……。そういうのなしにしようと思ってたので、ちょっとここらへんで打ち切りにします。すいません!
復讐に燃える女騎士、転生先で因縁の相手そっくりの社畜と出会う @tottttti111
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