第7話 りんごマーク製品の音声入力が神すぎてキーボードで打つより速い件


うーむ、コーヒーの良い香りがする。

 気がつけば、なぜか転校生と一緒にファミリーレストランCUCUSに来ていた。

 このファミリーレストランは高校生が入るにはちょっとお高めでも、ドリンクバーに様々な紅茶があることから、ドリンクバーだけを頼むのであれば、コスパは非常に良いファミリーレストランと言える。


 ここはその中でも、コーヒーの種類もそこそこあったので、お気に入りの店舗である。

 転校生は優雅に紅茶をたしなんでいた。


 転校生の考える事はよくわからないが、苦学生に思えた。彼女の髪の手入れが学校にいる女子のそれよりも荒れて見えていたからだ。

 もっとも、金髪の上と黒上では見え方が違うため、私の思い違いかもしれないが、彼女の持っている財布やハンカチのほつれが見えることも考えるとどうにもそう思えてしょうがない。


 牛アレルギーと聞いていたあたり、飲み物の中でも牛乳が入っているものは特にダメなのだろう。

 その分カロリーが取れないから、食も限られてくる。

 紅茶を優雅に飲みながらも見たこともない。メニューにちらちらとココロオドらさせられている。


 話しかけてこないなら訳す必要もないので、heyひたすら無言でコーヒーを飲み続ける。


「いい加減何か話したほうがいいかや。」


 ポソりとつぶやいてしまった。

 その言葉に反応したのか、メモを取るようにノートと辞書を取り出した。

 タイトルには、ノルウェー語から英語と英語から日本語への英和辞典が用いられていた。

 やはり、ノルウェー語から、日本語への直通の辞典はなく一旦英語に訳してから聞き取らなければいけないらしい。

 彼女の努力は本当に必要なものではあるが、なぜここまで来たのか端々疑問だ。


 コーヒーと紅茶の香りに包まれながらも、彼女は必死に辞書を引き思考を巡らせ、ペンを走らせる。

 そして出来上がった文章は、拙いながらも、頑張って書いた日本語が見受けられた。


『なんでノルウェー語わかるんですか?今なんて言ったか教えてください。』


 必死に翻訳した結果がそうなるだろう。ひとまずはやることとして、英和辞典の和英検索を引き今言った言葉の意味を話した。


『今話したのは何か話して会話をした方が良いか、そういった意味のつぶやきだよ。』


 また、必死に翻訳し始める。すると、今度は自分が書いた言葉をどのように発音するのかといった質問が出てきた。


『ありがとうございます。これをどのようにして発言するば良いのでしょうか後は先程の翻訳した言葉も教えていただけると嬉しいのですがよろしいですか?』


 ノートの分を指差しながら、発音をしてあげることにした。ちょっと上から目線なのはご愛嬌。

 何度も言うが、3年を長く生きた意味合いでは少し幼い子どもに見えてしまい世話を焼きたくなる。

 ノルウェーからの留学生との事なので、多少の年齢幅はあるかもしれない。

 でも後輩であることには変わりない年齢差だ。


「今、なんて、言ったか、教えて、ください。」


「イマ、ナンテ、イッタカ、オシエテ、クァサイ。」


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