第5話 前髪で目線を隠している奴って気になる異性をこっそりみるためじゃねって思ってる。

「ゲームアプリがこれでもかと入ったスマホガ。」


 悲しみのあまり勉強に手が付かない。

 久しぶりに始めるけど俺の推しは健在だったから走りながらやっていたのに。

 

「Er du ok?」大丈夫何とかなりそう?


「ごめ、ちょっと疲れてただけ。」

[Beklager, bare litt sliten.]


 早速学校の備品は大助かりだ。


「Takk skal du ha.

Jeg følte meg ensom når jeg kom til denne videregående skolen, men jeg er glad det var folk jeg kunne snakke med.

Men hvis du kan høre meg så langt, hvorfor kan du ikke snakke?」

 そっか、ありがとう。

 この高校に来るのは心細かったけどお話しが通じる人が居て良かった。

 でも私のここまで聞き取れるのに何で話せないの?

 

「映画を見て言語を学ぶ人が発音を理解できると思ってる。

 俺の音楽の成績は2だよ。

 2、日本だと下から2番目だよ。

 ただでさえ日本語の発音ですら苦手意識あるのに日本語以外の言語の発音なんて話せやしないよ。」

[Jeg tror folk som lærer språk ved å se filmer kan forstå uttale.

 "Musikken min er 2."

 2. I Japan er det den andre fra bunnen.

 "Selv om jeg ikke er god i japansk uttale, kan jeg ikke snakke andre språk enn japansk."]


 納得が行ったのかコクリと頷いた。

 これは俺も話せるようにならないといけないパターンなのだろうか。

 それから授業の説明を翻訳するのにスマホが手から離せない状態になってしまった。


 昼休みに成ったら没収されていたスマホが帰ってきていたが、ゲームをする暇もなく質問攻めにされていた。

 流石に学校支給の備品スマホも充電が足りないと悲鳴を上げていたので筆談で済ませられる範囲での会話をしていたが。


『私、日本に来るのが初めてなの。

 日本には和菓子って言う牛アレルギーの人でも食べられるスイーツがあるんでしょう。

 どこのお店がこの辺りでは有名なの?』


『甘味処だと、近くにあるけど有名ってわけじゃないけど。』


『放課後よれるところにある?』


『あるけど、放課後一緒についてくるの?』


『なにかあったら頼りたいし、家の場所を教えて欲しい。』


 全国の男子高校生諸君みんながこぞって欲しがるであろう言葉ですよ。

 積極的な女子が自分の家の場所を欲しいですって。

 いやだ。


『それはちょっと。』


『私、家の都合でスマホを持てないの。

 だからお願い。』


 上目遣いで揺らされる彼女の前髪の中から覗く水色の瞳に思わずOK出しそうになったけど……


... ..- .-. .- .. -- ..- -.. --- ..-


2話20230204加筆修正

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