第6話道と海賊




ローランド城へ向かう為に馬車に乗り込もうと思った瞬間に、曲がりくねった道を思い出した。

このまま放置はできないな~。


御者に向かって「たしか君の名はアイデンだったね」


「そうですが何かありましたか、領主さま・・・あの~・・・馬車に乗らないのですか・・・」


「そうだな・・・ここから見える道が真直ぐだったらどうなると思うかな」


「そうですね・・・楽に速く走れると思います」


「そう思うか・・・真直ぐな道なら速く走れるか」


「真直ぐなら馬も気持ちよく速く走るでしょう・・・ロン・・お前もそう思うな」


馬に名が付いていたのか・・・手で触る顔は、愛情にあふれてる。

それに答えるように「ブヒーヒ」と鳴く馬だった。


その時になってアイデンがモンスター使いだと鑑定結果で分かった。

これはレアなスキルだ。私以外では分からなかったスキルのようだぞ。

アイデンの今後は、城に帰ってから話そう。



馬車に乗るのを止めて歩きながら曲がった道を観察してしばし考えを巡らす。


真直ぐな道をイメージしながら鑑定を発動。

鑑定が魔法の使い方をあれこれ教えてくれるぞ。

やはり薬草で効果抜群の薬を作りたいと思った時と同じだ。


教えられた土魔法で道を掘り起こして、無魔法で真直ぐになるように移動させた。

なんだ、こんなに簡単なのか・・・移動した道を土魔法で再度固めてゆく。

ただ固めるだけでない。

小さな小粒同士をくっ付けて、固まる層に適度なスキ間を作ってやる。

そうする事で雨水は、固まった層に吸収されて地面深くまで吸収される仕掛けらしい。


この道は右に大きく曲がってるな、目の前の大岩が邪魔で右に迂回してるのは誰の目にも分かる。

大岩に手が触れる「粉々に砕けろ!」

一瞬で大岩が砕けて均一な小粒となった。


それまで黙っていた兵士も「そんなバカな、あんな大岩が無くなるなんて」


「この粒が岩だと・・・信じられない」


そんな大岩跡に真直ぐな道を作る。

ちょっと盛り上がった道をサイドが崩れないように圧縮して固めていく。



「アイデン!通ってみてくれ・・・違和感があれば正直に話して欲しいな」


「分かりました。走ってみます」


できあがった道を気持ちよく走る馬車はもどって来た。

道幅も広げたから、Uターンも楽にできてる。


「真直ぐでいい道だと思います。ロンも喜んでいます」


「そうか」私は馬車に乗り込んだ。御者が「えい」と発してムチで合図すると走り出した。



ローランド城へ着くまで6回程、道を作り変えた。

まだまだ気になる道は有ったのだが、ダークが恐い顔をするので諦めた。



叔父上に会いに行くと、杖を突きながら歩いていた。


「叔父上良くなられたのですか」


「ああ、薬を飲んでから気力が湧いてきたみたいだ。お前のおかげだ」


滅相めっそうもありません。元気になられて安心しました」


「カルエルよ例の件を、ナルタからまだ聞いていないようだが」


「心の準備がまだ出来ていません。聞いてしまうと自分自身が暴走してしまい恐いのです」


「そうか、わしもそんな思いを何度も味わった。わしの力が及ばなく、悪かった許してくれ」


「叔父上が悪いのでなく、アザルが悪いのです。その為にもローランド辺境伯領を盛り上げて、協力者を作ろうと思っています」


「そうか、良い考えだ。わしも協力するぞ」




ナルタの報告で例の3人からの報告では、2人は順調に回復していた。

残りの1人は高齢が原因なのか、少し緩和した程度らしい。


その1人の過去の平均的な食べた材料を調べるよう指示をした。


「それと領内の主に使う道を調査してくれ。調査内容は、曲がりくねった道・危険な道・細い道など馬車が走行する為に不向きな道を調べて欲しい」


「何故調べるのですか」


「分からないか・・・そんな道を走りやすい道に変えるだけで物流の流れが速くなり商品の痛みも少なくなると思わないか。今後この領内の物流の向上が向上して、領内の発展への足掛かりと考えている」


「そこまで考え深いとは、恐れ入ります。わたしの不勉強に恥じる思いです」


「しっかり調べてくれ、頼むぞ。それと例の薬作りの連中は、研究室か」


「いえ商業ギルドが用意した研究所へいきました」


「その場所は何処にある」


「C区の21-5です」




手書きの看板が掛かっていた【薬研究所 領主公認】


私が入っていくと、机で書き物をしていた女性が立ち上がった。


「どちら様でしょうか」


「領主のカルエルだ、責任者の所へ」


「失礼しました、こちらで御座います」


案内された部屋には、4人が機器の前で何かしている。


「所長、領主様です」


一同振向き驚きながら「あ!領主さま何か御用でしょうか」


「あれからどうなったか気に為って来てみた。進展してるか」


「最後の回転と液体分離が上手くいきません」


「そうか・・・昔読んだ本に歯車なる物があって作ってみた。これが実物だ。大きな歯車と小さな歯車を噛み合わされている。大の歯車1回転に対して小の歯車は10回転する仕掛けだ。回転数を増やす事になり、速く回せば高速回転になるぞ」


「そんな便利な物が・・・」


これでもかと回す所長と研究員。


「それとは別件だが、この2種類の草を混ぜて薬の手順で同じように作るとこの薬が出来た。薬の効果にMP回復の効果が加わった薬だ。その草は魔の森で発見したもので、定期的に購入する事になった。魔法使いなら誰でも欲しがる薬だ。それと無魔法も練習するように、色々使い道があるからな」



執務室に戻るとナルタが2枚の書類を渡してきた。


「第1砦と第2砦からの報告書です。書類内容は同じ内容でした。スライムの不法投棄です」


「不法投棄!」


「はい、隣接したタミアン領とグレス領からです。前にも同じような事がありまして、回収して海に投棄する破目になりました。抗議するとタミアン領とグレス領は知らないと抗議を突っぱねられました」


「そうか、それでどうする」


「はい、今回も海への投棄するしかありません。スライムは物理・魔法攻撃無効の為、討伐不可で居るだけで邪魔になります。道に居座り通行止めに度々なります」


「海か、たしか港町バークレイに帆船2隻があったはず」


「はい、今も停泊中です」


「え!貿易してないのか」


「事情がありまして、冬の季節風に乗って南国へ夏の季節風で戻って来ます。年1回の貿易です」


「・・・・・・」


「それ以外の航海は、隣領グレスの海賊に襲われ航海できません。小型船に魔法を使って船足を速くするようです。こちらは季節風を使う以外追いつかれてしまいます。過去に1隻が沈められていて、仕方なく1回の貿易に甘んじています」


「そんな理由があったのか、隣領グレスに抗議しないのか」


「グレスと海賊は繋がっていますので意味が無いかと」


「海賊討伐は出来ないのか」


「何でも結界師がいて遠距離攻撃が効きません。それに情報が洩れて上手く裏をかかれているのが現状です」


「そんな奴らなのか・・・クソだな、あ!汚い言葉がでてしまった。それは何とかしないといけないな、今回は私も同行しよう。考えがあるから、しばらく泊まるかもしれない。あとは頼むぞナルタ、それに叔父上の事も」


「分かっております。責任もって守てみせます」



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