第3話薬と鑑定水晶
次の日、挨拶に行くと少し顔色が良くなっていた。
このまま順調に回復してもらいたい。
今は、血の繋がった家族で頼れるのは叔父上だけだから。
訓練場でダルを探す。
ダーク隊長が的に向かってエナジー球を当てている最中だ。
私に気付き駆け寄り「領主任命、おめでとう御座います」
「ああ、ありがとう。ダルを知らないか」
「長旅のご褒美に、今日は休暇を与えました」
「そうか、それにしてもエナジー球を使えるようになったんだな」
「はい、自分でも不思議に思ってます。ダルに何の用事ですか」
「ダルに、近くの他領を調べて貰おうかと思っている」
「そうですか、それはいい考えです。明日、執務室にいかせます」
「うん、そうしてくれ」
執務室に戻ると、商業ギルドの3人が居た。
「待たせたようだね」
「先ほど来たばかりです」
「薬草類を扱っているのは、誰かな」
「わたしです」
「そうか、その取引量を増やす事はできるかな」
「できますが、領内での消費は多くありませんよ」
「これなんだが薬草といくつかの植物の配合から作り出した青い液体の薬だ。密封すると1年間は保存できる。それに薬草の5倍の薬効がある事は確実だ。私の鑑定の保証付だ」
「そんな物が有ったんですか、王都産ですか」
「いや私がここで作った物だ。この製造を商業ギルドに任せたい」
3人はコソコソと話し合う。
「ぜひ、お任せ下さい」
「これを作るには、無魔法持ちと鑑定師が必要だが私が探しておく。あとはナルタに任せているから進めてくれ」
「分かりました」
「それと兵士を他領への諜報活動をさせたい。その為に商業ギルドで、商人証書を発行してほしい」
「それは商業ギルドに諜報活動を助けろと・・・それでは他のギルドを裏切る事に」
「そのギルドに貿易で裏切られていてもかばうのか・・・穀物を安く買い叩かれている事は知っている。迷惑はかけない積もりだ・・・それでもダメか・・・」
「分かりました。商人証書を発行します」
「これはまだ効果の確認が出来ていないのだが黄土病の薬も作った。君達の知り合いで試して貰える人を探してくれ」
「わたしに任せて下さい」
「いやいやわたしにお願いします」
「お前達抜け駆けか、薬草類は俺だろー」
3人はもめだす。今にも殴りかかる勢いだ。
「分かった。これを3等分にして後日取りに来るといいだろう。食事時に4粒とぬるめの水で飲む事を忘れるな、期間は1週間で毎日の経過報告をナルタにするように」
3人は揃って「お任せ下さい」と言った。
昼過ぎに大広間に集まった鑑定師達30人。
22人が10年前から他領から流れて来た鑑定師で、領主から追放された経緯があった。
皆が注目する中、私は言い放った。
「みなさん鑑定師であるが故に、他領から
「しかし、鑑定は鑑定水晶より劣るのですか・・・いや違うはずです。わたしが証明してみせます。その為に皆さんに、協力して欲しいのです。皆さんの知り合いの鑑定師が、他領に居るならこちらに呼び寄せて下さい。私が責任もって仕事を斡旋します」
鑑定士たちは、不安な顔をしたまま聞き入っている。
「それと皆さんに一人ずつ質問と鑑定をします。理不尽を証明する為の一歩だと思って下さい」
皆ガヤガヤと話した後に、賛同してくれた。
質問しながら相手に私を鑑定させ、鑑定の度合いを調べた。
私も相手を鑑定して鑑定結果を比較して確証を確認出来た。
私の鑑定横の数字は、そのスキルランクであって。
数が大きいと上位ランクである事。
確証としてⅤ(5)以下だと、私の魔法を鑑定できなかった。
その事から鑑定水晶が、Ⅴ以下のランクであると考えられる。
私を鑑定のみと鑑定した事でも明白である。
鑑定水晶はもっと低ランクの可能性がでてきた。
それは私が王都にいた頃、領主の鑑定結果を調べた事があった。
その時から鑑定水晶に疑問を持っていたからだ。
20年間調べたが10年以上前には、スキルや魔法の2つ持ちが鑑定されていた。
しかし鑑定水晶に変わってから、2つ持ちは現れていない。
ここ10年でスキルも魔法も持たない人が新たに現れたのだ。
国民からはハズレと呼びれて差別対象にされている。
私は間違いだと思っている。レアなスキルと魔法を持っているはずだ。
10年前まではレアスキルの剣聖やレア魔法の亜空間魔法が鑑定されていた。
それが10年間鑑定水晶は、レア持ちを鑑定していないのが現状だ。
鑑定水晶は劣化版の鑑定具と考えるしかない。
この事を世間に知らせたいが、知らせても嘘つき呼ばわりされるのが落ちだ。
もっと証拠と協力者を作らないと行けない。
時間をかけてもやって行こうと決意した瞬間だった。
本当は鑑定水晶を手に入れたいが、アルア教団の管理下に厳重に保管されている。
鑑定水晶を作った人が誰なのか不明のままだ。そこから調べるしかないかも知れない。
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