第2話叔父上の病状




朝早くから呼び出され、叔父上と対面した。

その部屋には、私と領主代行のナルタしか居なかった。


ベットに寝ている叔父上の顔や手は、黄土色に変色している。



一般的に黄土病と呼ばれ貴族や金持ちがなる病気で有名であった。


痛々しい顔だ・・・


「よく来たカルエル・・・本当にミランダに似ている。わたしはミランダを手放したく無かった。よく聞くのだカルエル。お前の母を殺したのは、第2夫人のアザルだ」


「え!本当ですか・・・病死と聞かされていました」


「本当だミランダが死んだ時に、わたしが必死で調べた。証人も殺されたが、わたしはこの耳で聞いた。第2夫人アザルの弟ミザル・ダーランも気を付けろ。ダーラン領はアルア教団の本拠地だ。証人を殺したのはアルア教団配下の暗殺部隊で手強てごわい存在だ。この事は事実だ。この事を知っているのは、わたしとナルタ・アーモンだけだ。この事をお前に知らせて、思い残す事は無い。くわしい事はナルタに聞くといい」


「用意をしてくれ」


ナルタが呼び鈴を鳴らす。



扉が開き白いローブを着た3人が入ってきた。

1人は男性、後ろに控えている2人は女性だった。



ひざまずくように促され、跪く。


なんじ、この盾を持ち領民と領土を守る事を誓うか」


「誓います」


女性から盾を渡された。


「汝、この剣を持ち領民と領土のために戦う事を誓うか」


「誓います」


女性から剣を渡された。


「汝、農耕神ルラに偽りが無い事を誓うか」


「誓います」


男性からタネを口の中に入れられた。


「ここに宣言する。ローランド辺境伯にカルエルが任命された事を・・・」



叔父上は最後の力を使ったように、寝息を立てながら眠りに落ちた。




ナルタから母の事を聞くのは、止めておいた。

聞くと冷静にいられない自分自身いて、暴走しそうで恐ろしかったからだ。



執務室に料理長を呼び出し、領主の悪化する前の献立材料と衛兵の献立材料を用意するように指示をした。



料理長は額に汗をかきながら、料理人を伴って材料を持ってきた。


「心配するな、罪を問う為にそろえろと言った訳でない。思う事があって、その材料が必要だった」


わたしは、チラッと材料を見た。


「下がっていいぞ」


私はその献立材料を丹念に鑑定していく。


そのデータを書き溜めて、比較するとおのずと答えが見えてきた。

やっぱり栄養にかたよりがあった。この世界には栄養と言う認識はないのだろう。


私の鑑定から得る知識は、どの栄養が体にどのように作用するかまでデータ化されている。


炭水化物120パーセント:+20オーバー


大まかな必要とされる栄養が8個あり、叔父上は4つを食事として取っていた。

後の4つが全然足りなかったのだ。

4つが多く含まれる材料は、値段的に安い。

しかし、苦く、固く、癖のある、臭いの貴族が嫌う食材であった。


今となっては、4つの栄養たっぷりな食材を料理して出しても、食べないだろう。

病気で食べる気力がないのが原因だ。


そんな悩みを鑑定が弾き出してきた。

栄養たっぷりな4つを凝縮して粒状にして飲ませる方法だ。

粒状にする事で苦く、固く、癖のある、臭いを解消。

水と一緒に飲み込む事で消化も早く吸収されるだろう。


とりあえず作ってみて、失敗したら改善すればいい。



無魔法で野菜を握りつぶす感じで汁を搾り出す。

溜まった液を鑑定をするもあまり栄養は失われていない。

そのまま水分を抜き取る。これは錬金術の一種だ。

そしてギュギュギュと固めて1粒、2粒、・・・10粒の出来上がりだ。

これは無魔法の圧縮だ。


違う野菜を同じように搾り出す。上手くいっているぞ。

水分を抜き取って固めて10粒の完成だ。


穀物を粉砕して更に粉砕して粉状まで粉砕だ。

それをギュギュギュと固めて10粒の完成だ。


もう1つの食材も同じようにして10粒を完成させる。

鑑定しても栄養は少しだけ失ったが問題ないレベルだ。


完成品は、どれもこれも臭くない。


そうだ!試してみよう。

ぬるま湯に「ポチャッ」と入れてみた。

底に沈んで1分経ったら溶けだしたぞ。3分で全てが溶けてしまった。


分量的に1回の食事に4粒飲んで欲しい。

叔父上に会いにいこう。




叔父上は起きていた。


「どうしたカルエル」


「ここに薬草に変わる薬と言う物を作りました。叔父上の為の薬です。飲んでくれますか」


「そうか、ありがたく頂こう」


「食事の時に飲んで下さい。コップ一杯のぬるま湯で飲んでもらえれば大丈夫です」


「こんな感じで飲んで下さい」


4粒を口に入れてからコップで「ゴクゴク」と飲んだ。


「そうか、そうか、分かった」


「食事時に毎回飲んで下さい。1週間飲んで経過を見ましょう」


「そうか、毎回飲むのだな」


丁度、食事のしたくが始まった。


私は薬を飲むまで待ち、飲むのを確認してから退出した。



執務室にナルタを呼び寄せ。

叔父上の薬の事を話して鑑定で分かった事も話した。


名:ダルタ


歳:42


HP30/260:栄養過多、偏った食事による栄養の不足


MP 0


スキル

鑑定Ⅴ:人や物を仔細に理解できる 

剣Ⅳ


魔法


「良くなるかは、分からない。しかし叔父上の力になりたいんだ。頼むぞナルタ」


「お任せ下さい。ダルタ様はやっと幸せをつかまえました。わたしからも有難う御座います」


「何を言っているナルタ」


「ダルタ様に代わって、礼を述べたのです。ダルタ様は努力家で苦労の連続でした。傍で見ているわたしが一番よく知っています」


「そうか、苦労をしていたのか」


「はい、しておりました・・・・カルエル様、例の話を聞かないのですか」


「う!それは迷っている・・・聞きたい気持ちは大きい。暴走しそうな、自分が恐いのだ・・・しばらく待ってほしい」


「そうですか、分かりました。しかし、1つ知ってもらいたい事があります」


「なんだ」


「証人が殺された件ですが、その者には娘がおります。娘も重傷を負い、一命を取り留めましたがその時のショックで記憶を無くしたままです。ダルタ様の指示で名をミランダとして、かくまう事にしました」


「名を母の名にしたのか」


「はい。ダルタ様もミランダ様を亡くして思う事が有ったんでしょう。娘の鑑定の儀式もダルタ様がなされました。娘はレア魔法の亜空間魔法とレアスキルの剣聖の2つ持ちでした。1年前からローランド辺境伯領で手に入らない物を秘密に手に入れています。確かな事は言えませんが、そろそろ帰ってくる時期かと」


「必要な物は、その娘に頼めば良いのか」


「はい、必要な物はなんなりと申しつけて下さい」


「親の事は知っているのか」


「ダルタ様が忘れたいから記憶をなくしたのだろうと本人は知りません。記憶のない娘を見つけて助けられたと信じてます」


「分かった・・・その者も犠牲者なのだなむごい事だ」



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