九月四日 日曜
「又三郎ほんとにあそごの
「待ぢでるんだ。又三郎
「ああ
「どごがらだが風吹いでるぞ。」
「又三郎吹がせだらべも。」
「何だがお日さんぼゃっとして来たな。」空に少しばかりの白い雲が出ました。そしてもう大分のぼっていました。谷のみんなの家がずうっと下に見え、一郎のうちの
みんなはまるでせかせかと走ってのぼりました。
「そだら早ぐ行ぐべすさ。おらま
三人は
「ぼくのうちはここからすぐなんだ。ちょうどあの谷の上あたりなんだ。みんなで帰りに
「うん。まんつ野原さ行ぐべすさ。」
みんながまたあるきはじめたとき
四人は林の
みんなはそこまで来ると来た方からまた西の方をながめました。光ったり
「ありゃ、あいづ川だぞ。」
「
「何のようだど。」一郎がききました。
「春日明神さんの帯のようだ。」「うな神さんの帯見だごとあるが。」「ぼく北海道で見たよ。」
みんなは何のことだかわからずだまってしまいました。
ほんとうにそこはもう上の野原の入口で、きれいに
「もう少し行ぐづどみんなして草刈ってるぞ。それがら馬の
三郎はその
しばらく行くとみちばたの大きな
せなかに〔約二字分空白〕をしょった二
「
「おおい。ああい。
ずうっと向うの
「
兄さんは向うへ行こうとして、
「土手がら外さ出はるなよ。
「うん。土手の中に居るがら。」
そして一郎の兄さんは、行ってしまいました。空にはうすい雲がすっかりかかり、
「この馬みんな千円以上するづもな。来年がらみんな
馬はみんないままでさびしくって
そして
「ははあ、
「わあ又三郎馬
すると三郎は「
「わあい、又三郎馬怖ながるじゃい。」悦治がまた
「そんなら、みんなで
競馬ってどうするのかとみんな思いました。
すると三郎は、「ぼく競馬何べんも見たぞ。けれどもこの馬みんな
「そいづ
「
「
「よしおらこの馬だぞ。」「おらこの馬だ。」
「そんならぼくはこの馬でもいいや。」みんなは
一郎がそこで
「うまぁい。」嘉助ははね上って走りました。けれどもそれはどうも競馬にはならないのでした。
馬はすこし行くと立ちどまりそうになりました。みんなもすこしはあはあしましたがこらえてまた馬を追いました。するといつか馬はぐるっとさっきの小高いところをまわってさっき四人ではいって来たどての切れた
「あ、馬出はる、馬出はる。
一郎はまっ青になって
「早ぐ来て押えろ。早ぐ来て。」一郎は
「
ところが馬はもう
嘉助はもう足がしびれてしまってどこをどう走っているのかわからなくなりました。それからまわりがまっ
嘉助は、
嘉助はやっと
そこで嘉助は、
おうとどこかで三郎が叫んでいるようです。思い切って、そのまん中のを
空はたいへん
(ああ、こいつは
(ああ、悪くなった、悪くなった。)
草がからだを
嘉助は
「一郎、一郎こっちさ
ところが何の
嘉助はもう早く、一郎たちの
風が来ると、
「あ、西さん、あ、東さん。あ西さん。あ南さん。あ、西さん。」なんて
嘉助はあんまり見っともなかったので、目を
けれども、たよりのないことは、みちのはばが五
嘉助はがっかりして、黒い道をまた戻りはじめました。知らない
空が光ってキインキインと鳴っています。それからすぐ
空がくるくるくるっと白く
「
「一郎、一郎、
また明るくなりました。草がみな
「
そして、黒い
空が
そんなことはみんなどこかの遠いできごとのようでした。
もう又三郎がすぐ眼の前に足を
又三郎の
そして馬がすぐ眼の前にのっそりと立っていたのです。その眼は
嘉助ははね上って馬の
「おおい。嘉助。
「おおい。居る、居る。一郎。おおい。」
一郎の兄さんと一郎が、とつぜん、眼の前に立ちました。嘉助は
「
みんなは一郎の兄さんについて
一郎の兄さんが
「おじいさん。
おじいさんは霧の中に立っていて、
「ああ
半分に焼けた大きな
一郎の兄さんは馬を
馬もひひんと鳴いています。
「おおむぞやな。な。何ぼが
「
「
「おじいさん。馬
「うんうん。
「
「うん。また好ぐなるさ。あ、
一郎の兄さんが出て行きました。
兄さんがまたはいって来ました。
「おじいさん。明るぐなった。雨ぁ
「うんうん。そうが。さあみんなよっく火にあだれ、おらまた草
草からは
はるかな西の
帰りながら嘉助が
「あいづやっぱり風の神だぞ。風の神の子っ子だぞ。あそごさ二人して
「そだなぃよ。」一郎が高く云いました。
*はそれぞれ小文字の「ん」「な」「な」「づ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます