第15話 誰かの屋敷に辿り着いた。

 僕らは坂道を登り続けていた。


 坂の途中の右手に、階段を使って上がれるような壁の隙間がある。

 やはり上から垂れてきている黒い物は植物の蔓だった。壁から直接出てきているわけでは無く、上から降りてきている。


 階段の先は、坂の下よりかは裕福な人達の住む場所のようで、

 家四軒ぐらいの距離を進んだ先に、また階段が見えた。


 そしてどの家も、どこかしこと黒くなっている。家の建物に植物の蔓が絡まっていて、それが黒く見えていたのだ。

 何で蔓を取らないのだろうか。めんどくさがり屋が多い町なのかな。


 次の階段を上るときには、僕は結局、ナラセさんにおんぶされることになった。

 眠たかったからだ。

 この階段にはもっと蔓が多かった。


 ナラセさんが前に進むと、僕の体が少し揺れる。

 頭の中が重くなってきていて、ずっと目を閉じていることにした。そうすると頭の中が軽くなるような気がしたからだ。


 ナラセさんが階段を登り終わったことに気付いた。それから立ち止まったので、目を開けると正面に門があった。人の背よりも高い。左に道が続いて、その道の右側に塀がずっと続いている。定期的に灯りが置かれていたから分かった。丸い壺みたいな物が光っている。僕らの右側は壁だ。綺麗に凹凸の無いスペースがあった。

 お父さんがの場所を手の甲で叩いた。


 それだけで、門の向こう側から誰かが走ってくる音がした。

 この仕組みは確か僕の屋敷にもある。僕は気付いた。

 そうして現れた男は、


「リヴァーサラさんと、その御家来の方々です…ね?」

 と聞き、父さんが答えた。

「はい」

 男は眠そうにしていた。


「では開きます」

「よろしく」


 お父さんが僕の方に振り返りそうだったので、僕は目を閉じた。

 そして、

「あれ、もう寝ちゃったんじゃないか?」

 と言うのが聞こえたけど、

 僕は寝てるふりをして無視することにした。


「ナラセさん、お願いね」

「はい」

 お母さんにも、

 寝たフリはばれていないみたいだった。


 門が開く音と同時に、

 誰かもう一人が歩いてくる音がした。

 僕は目を閉じたまま、声だけを聞いた。


「これはこれは、クロトさんだ。いやぁ、久しぶりだ」

「はい、久しぶりですね、レイザラさん。こんな夜分にすみません」

「いえいえ、いいんですよ」


「タチナツさん、ナラセさん、君は、ライラ君だな?」


 しばらく経ってからお父さんが、

「寝てます」

 と言った。

 お父さんは動きながらその言葉を言ったみたいだ。声の発生源も動いていた。


「彼女はうちのメイドでタミラといいます」

「はいはい」

 男はタミラさんについては軽く流しただけだった。

「――。まあとりあえず適当な部屋を開けさせますよ。それまでお待ちいた…………、


 …………、


 …………。

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