第11話 僕の生まれた場所を知った。
浮遊馬車がフォウリアスの町へ向かう中で、
僕の気分は沈んでいた。
きれつなんて、もう二度と行きたくない。
お父さんの身に何があったんだろうか?
どうやってお母さん達にこの事を聞いたら良いんだろう?
僕に教えてくれないのは何故なんだろう?
やっぱり怖い事だからなのかな?
僕たちは川辺にさしかかり、ほんとだったらその場所で食事をしたのだろうけど、
僕は馬車に残されて、みんなは水の入った四つのコップを持って帰ってきただけだった。
ナラセさんは馬車の側から離れなかった。
コップはお父さんが土の素材から錬金術で作ったものだった。そして今、周囲を見回っていた。
それから再び進み始めた馬車の中で、僕だけが食事をした。
細長い干し肉を二本と、薄い透明な袋に隙間無く詰められた柔らかいビスケット、干して砂糖漬けにした紫色のベリー、それとトウモロコシを茹でて乾燥させたものを水につけて、ふやかして食べた。
全然おいしくなかった。
マルズーの町からきれつまでは、北東に向かって来た。そして今は東の方に向かっていると、お母さんは言っていた。
~~~~~~~〜
~~~~~~~〜
窓の外を見ても、
代わり映えしない景色がずっと続いている。
特に何かが起きる様子はなかった。
馬車の中では会話が始まっていたけど、それほど明るい空気にはならなかった。
その時に僕が考えていたのは、町の外というものはどこで何が起こるかわからないと言うことだった。
安心して暮らしたければ町の中から出ない方がいい。
…………、
何か見落としているような気がした。
ずっと、ずっとだった。きれつの近くにいた時に何かを思いついたのに、その正体がわからなかった。
そして今、やっとのことでわかった。
「あれ?」
思わず声が出るくらいに驚いた。
きれつに到着する前に、お母さんが言っていたことだ。
僕自身の記憶にも残っていない頃の僕を連れて、旅をしてマルズーの町にまで来たって。
そうだった。
僕は、マルズーの町で生まれたわけじゃない!
この何も無い景色を、怖い世界を通って、僕にとって当たり前だったはずのマルズーの町の中にやってきたんだ。
僕が生まれた町は別にある!
「ねぇ、お母さん!」
お母さんは驚いていた。
「なあに、急にどうしたの?」
僕は……。
「僕はどこから来たの?」
「どこからって?」
「だから、マルズーの町に来る前だよ」
お母さんは僕の顔を見ながら、まぶたを素早く何度か瞬かせて考えていた。
「あなたが生まれた町がどこかってこと?」
「…うん」
「あなたが生まれたのはね、『ノースライタ』の町。ここから西の方へ行って、それからずっと北の方にあるとっても寒い町なの」
説明してくれた。
僕が生まれたのはノースライタ、……ノースライタだ。
この言葉は絶対に忘れないと思った。
後、他にも聞きたいことがあった。
「何で住む場所を変えたの?」
「ノースライタはあまりにも寒い町だったから、あなたがお外に遊びに出られないと思ったのよ」
でもそれじゃあ……。
「何でお父さんとお母さんはその町で暮らしたの?」
「あなたが生まれてくるってわかったからよ。あの辺りで、ノースライタが一番大きな町だったから」
僕は自分の頭がとてもよくなったような気がした。
お母さんの言ったことが全部わかった。理解出来た。
「僕、ノースライタに行ってみたい」
「ええ、必ず行きましょうね」
「うん!」
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