第2話 しかし僕は蚊帳の外に置かれ、
出ていったお父さん達が帰ってくるまで、そんなに長い時間は掛からなかった。
僕はその頃、外の方の砂場で陣を書く練習をしていた。陣は錬金術とあまり関係が無いらしく、お父さんはあまり僕に教えてくれない。
「あーあ」
また形が崩れてしまった。
今回はうまくいきそうな気がしたんだけどなぁ。
僕が砂の凹凸を消そうかと思って屈み込んだ時、
後ろから「ライラ様」と呼ぶ声が聞こえた。
僕は振り返った。
執事のテトックさんだった。
「タチナツ様とナラセさんがお帰りです」
僕が家の中に入ると、お母さんとナラセさんが幾人かの使用人を連れて、こっちに向かってくるところだった。
「ライラ、ちょっと待っててね」
僕の姿を見つけたお母さんはそう言いつつ、ナラセさんと共に二階に上がっていった。
とても忙しそうだった。
使用人達も何か指示を受けたようで、色々と動いている。
僕はしばらく考えて、二階に上がる二人の後を追おうとしたが、その時がまさに、二人が階段を降りてくるところだった。
階段を降りてきた二人は、大事そうな木箱を持ってきていた。僕は知っている。あの箱の中には、瓶があって、とても綺麗な見た目の水が入っている。
お父さんが前に箱を開けて、中身を見せてくれたことがあるから知っていた。
「ほら、綺麗だろ? 父さんの発明品だ。これで世界を変えてやろうと……俺は思っている」
そう言っていた。
ということは、今から世界は変わるのだろうか?
ナラセさんが男性の使用人を何人か連れて、再び屋敷を出て行った。布や箱なども持って行った。
残されたお母さんが僕のもとにやってくる。少し沈んだ表情だった。
出掛ける前は何も無いって言ってたのに。
「何かあったの?」
「あったけど、心配することは無いわ」
「じゃあお母さんは歩き疲れたってこと?」
「考えすぎてるだけよ。心配いらないわ」
何かあったのは間違いない。
「お父さんは?」
「この町で見つかった良くない物を壊してるわ」
「大丈夫?」
「大丈夫よ。時間はかかるかもしれないけど、クロトは本当に平気だから」
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お父さんは、一日の内でたまに帰ってきてはすぐに出て行くと言うことを繰り返して、どこで寝ているのかもわからなかった。
それでも疲れた様子は全く見えなかったけど、心配は心配だった。
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結局、一番始めに出て行ってから一週間ぐらいしてやっと、
お父さんは晴れ晴れとした顔で帰ってきた。
例の木箱を小脇に抱えて、
「あー疲れた。ハハハッ」
とか言いながら。
その時に僕が思ったのは、
世界はまだなんにも変わっていないということだった。
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そして次の日、お父さんはお母さんとナラセさんを合わせた三人で長々と話をしていた。
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