第7話 告白
「おい、あんた大丈夫か」
フクダは歯を食いしばり、腹に刺さったメスを抜いた。
部屋に入ってきた男は、中に探している相手がいるとは思っていなかったようだ。双方虚を突かれた形になったが、一瞬の後、男はフクダにつかみかかった。
一分に満たない格闘の末、男は気を失って倒れている。他の人間が部屋に入ってくる気配はない。
しかしフクダは、棚にあったメスで腹部を刺されてしまった。
俺のことは気にするな、とフクダは言った。
「おまえはこいつの服に着替えろ」
カサイは言われた通りに、倒れている男の着ている茶色い服を脱がし始めた。
フクダは、自分の傷をおさえて、血だらけの手をしばらく見つめた。
そして、男との格闘の末、床に散らばった器具の中から、無傷の試験管を手に取り、そこに傷跡から滴る自らの血液をいれ、栓をした。
カサイが着替え終わったとき、フクダは服の上から包帯を巻いていた。包帯を巻き終えたフクダは、胸の内側から三つのものを取り出した。建物の見取り図と輸血袋が二つ。
「これはこの建物の見取り図だ。いいか、ここに裏口がある。うまくすればここから出られる」
そういって、見取り図をカサイに渡してくる。
額に脂汗が浮かんだフクダを、放ってはおけなかった。
「あなたはどうするの」
「俺は、まだ動ける」
そう言って、二つの輸血袋を手に取った。
「これはベータ血液だ。こいつを使ってパニックを起こして、すきを見て俺もここから脱出する」
輸血袋の一つを胸元に入れる。
「そしてきみに…最後に、正直なところを話す。きみの、その血について」
もう一方の輸血袋と、試験管を差し出して言った。
「人はベータのにおいをかぐと、それを飲もうとするようになることは話したな。だが、それだけじゃない」
彼の口から、伝えなければならない。
「ベータを一定量飲んだら、人は足が破裂して、そして死に至る。俺たちは、あの施設は、ベータの兵器利用のための研究を、目的としていたんだ」
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