第99話 ホワイトデーの後に







「ナギ、あんた今日も嬉しそうやな? 見ているこっちまで幸せになってまうで」


「ああ、そりゃさ……伊那先生のホワイトデーのお返し、あたしのセンスとドンピシャだからさ、嬉しいに決まっているだろ?」


「そらナギ、あんたがホワイトデー当日までそわそわしとったやろ? ほんまハラハラしたで?」


「ははっ、悪いなウィラ。どうやらあたしは思春期らしい青春を送っているようだ」


「そんなん知っとるで? ナギ、あんた今日も伊那先生から貰ったスカーフをな、これ見よがしに巻いとるんやからな?」


「当たり前だ、伊那先生のセンスが良すぎるんだからな。そりゃ見せびらかしたくもなるぜ?」


「せやな、そらめっちゃ光沢のある上等なシルクやし、白黒のパトカーカラーやけどええ感じの馬具が描かれてめっちゃおしゃれやろ? じゃじゃ馬のあんたにお似合いの手綱やな?」


「ああ、伊那先生に手綱を握られるならさ、喜んで……アーッ!! 駄目だ、あたしは何を言ってるんだ!?」


「あ、こらあかんわ」


「「HAHAHA!」」


「そうは言ってもさ、あたしは先生が好きなんだよ……」


「ナギ、あんたようやっと素直になったんやな。ほんで、いつ告るんや?」


「それがさ、まぁ気持ちはいくらでも受け取ってくれると思うけどさ……」


「せやな、法と倫理の壁やな。あんたはアメーリカ出身やし、先生も留学、ホームステイ経験あるんやから向こうの文化を知っとるんやからな。そらこっちでもあかんけど、向こうやったらタブー扱いやからな……あまり軽率に煽るっちゅう訳にもいかへんやろしな」


「ああ、それだけが問題だよ…」


「ま、あんたらが両想いやっちゅうのは、誰がどうみてもそうなんやから…じれったいわ、ほんまに」


「そうだな、ウィラ…あたしさ、どうすれば良いんだ? あたしはさ、いつも通り自然に振る舞っているはずだけど…やっぱりさ、くるしいんだよ」


「せやな、そろそろさらし巻くのやめて、ちゃんとおブラ様を買えばええと思うで?」


「おい、そう言うことじゃねえよ?」


「「HAHAHA!」」


「ナギ、せやけど先生も男やろ? ほんでナギはめっちゃ美人でセクシーなチョモランマ持っとるやろ? おまけに何でも器用に出来るし、家事全般はもうおかんやからな。ナギ、あんたはいつでも嫁にいけるで?」


「ああ、そうであって欲しいよ」


「それにあれや、おブラ様の話も冗談で言っとる訳やあらへんで? ナギ、勝負してもええやろ? 結果はどうなるかわからへんねんけどな、行動せんとなんも変わらへん」


「ああ、そうだな……ウィラ、あたしはどうすればいい?」


「ほんならうち、春休みは実家に帰らせてもらいますわ。ナギ、うちらが伊那先生と一緒にジェフと会うやろ?……ここまで言うたら、あとはわかるやろ?」


「……なるほどね、行きは三人で先生の車。帰りはあたしと先生は二人きりの空間って訳か」


「せやで、ナギ……うちが言うことやないんやけど、当たって砕けてもええやろ? あんたと先生のことやから、気まずくなってまうこともあらへんやろうし。ま、なんも保証は出来へんけどな、あれやったら骨ぐらいは拾ったるわ」


「おい、どちらにせよ名誉を遂げる前提だな?」


「「HAHAHA!」」


「そら行動せん奴に名誉なんていらんやろ?」


「ウィラ、いいこと言うね?……わかった、乗るよ」


「ふっふっふっ、ナギ、それでええんや。どっちに転んでもな、うちがいっぱい慰めたるから安心しぃ? あ、報酬はケツネうどんで頼んます」


「オーライ、ジェフに会うのも楽しみだけど、決戦だろ? おいおい、全くもって最高の青春だな?」


「そらな、うちらは無敵のJKやからな?」


「ああ、戦いに挑んだあたしがどうなるか、是非刮目してくれよ?」


「うちは見れへんから知らんけど、あとでいっぱい聞かせてもらうんやから、めっちゃ楽しみや。どっちにしてもな、たまにはうちがナギを慰めるんやから……ふっふっふっ……」


「ああ、それは楽しみだ。その時が来たらさ、是非ともお前の控えめなお胸に抱かれたいものだ」


「せやでせやで…って、誰が控えめなお胸や!? このっ、チョモランマ!」


「「HAHAHA!」」───。








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