第95話 春よ、遠き春よ







『フギャアア!…ミャアア、ウーン?』


「ようバンチ、おはよう。最近春の陽気で過ごしやすくなってきたな?」


『フギャアア!…ミャーン』


「バンチ、おはようさん……モフモフしてもエエか?」


『フニァア、ウーン、キャッキャッ』


「ウィラ、バンチもお前に会えて嬉しいみたいだな。あたしにもモフモフさせろよ?」


「ふっふっふっ、ええで。ほんまあれやな、相変わらずエエ毛並みで最高の撫で心地や。それに冬毛やからめっちゃモッフモフやで?」


「ああ、最高だよな。地域猫とじゃれて遊ぶ、女子高生に化けたゲルマンギツネさん?」


「いや、そらうちケツネの化身言うとるけどな、まだ本当の姿を見せたことあらへんで?…そもそもうち、変身出来へんし…あ、メイクすればええんやった」


「「HAHAHA!」」


「メイクのお勉強も経験がものを言うからな。これからあたしらはもっと綺麗になるし、元々お前は動物的な可愛さってもんがあるだろ?」


『フギャア、ウーンニャ!』


「バンチ、あんたの話ちゃうで?」


「「HAHAHA!」」


「間違ってはいないな。ウィラ、お前はキツネ顔の美人だし、小動物のような仕草を見せるもんだからさ…なんだろう、庇護欲が湧くって言うのか?」


「あ、そらあれよ、うちと一緒に寝るときとかやろ? なんか知らへんけど、ナギと寝るときな、うち丸まってまうんやけど…なんでなんやろ?」


「ああ、多分だけど、甘えたいって潜在意識じゃねーか? そりゃここだったらお前がお姉ちゃんしなくてもいいからだろ?」


「せやな、そらナギはおかんやし、ほんまもんのうちをさらけ出せるんやから当然やろ?」


「だろうな、本当、お前はかわいいよ……」


「ナギ、パンチを撫でながらそんなん言われてもな、どっちのことかわからへんで?」


「あ、そうだな……お前が自画自賛するぐらいだけどさ、かわいいのは本当だぜ? 性格は悪いけど」


「レッドカーペットがお似合いの美人さんにそう言われるんやからな、そらめっちゃ嬉しいで? 性格悪い言うのは余計やけど」


「「HAHAHA!」」『フギャアアア! キャッキャッ…』


「不思議なものだよな、今から約一年前にさ、お前と出会わなかったらあたし……どうなっていたのか、未だに想像してしまうんだ」


「そらうちもや。なんちゅうか、運命なんやろな」


「ああ、幸運にもお前とあたし、二つの運命が導かれあったのかもな」


『フギャア、ウ~ム…』


「バンチもそう思うんか?」


「多分な。これもまたご縁だろうよ」


『ニャ!』


「せやな、ところでバンチ……あんた、成長したとちゃうか? いや、むしろ肥えたんやないか?」


「確かに冬毛ってだけの問題じゃなさそうだけど、ちゃんとご飯を食べれているようで何よりだ」


『フギャアアア』


「そらそうとあれや、最近うちもな、体重計乗るやろ?……なんか目方増えとるんやけどあれか、体重計の反抗期とちゃいますか?」


「奇遇だな、あたしの乗る体重計もそうなんだ……ウィラ、保健室」


「ナギ、屋上行きみたいに言わんでもええやろ?」


「「HAHAHA!」」


「多分だけど、あたしら……身長伸びた?」


「せやろな、最近カズサちゃんが身長縮んで変やと思っとったんや。なんや、うち、モデルのスカウト来るんとちゃいますか?」


「ああ、そういえばこの間もさ、街中でナンパかと思って撃退したけどさ、あれ……多分その手の業界っぽかったぞ?」


「そらあれよ、怪しいビデオとかやったら嫌やし、仮にな、ほんまもんのモデルのスカウトやったとしてもや……そらうちのやりたいこととちゃうからな。せやけどちょびっとだけ興味は湧くやろ?」


「ああ、ドイツ語通じなくて残念だったな?」


「通じたら世界に羽ばたいたかもしれへんな。そう言うナギもあれやろ、英語が通じんで残念やったな」


「ああ、ビバリーヒルズの豪邸なんて夢よりもさ、今はお前と過ごす青春が楽しくてね?」


「そらそうよ、ついでに伊那先生もやろ?」


「…言うな」


「「HAHAHA!」」


『フギャア、ウーン…』


「ほんじゃバンチ、またな」


「じゃあなバンチ…次会ったらそうだな、病院で定期検診だな?」


『フギャアアア!!』


「「HAHAHA!」」───。





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