第94話 バレンタインのあとに







「ウィラ、バレンタインは来年から廃止にしよう」


「せやな…って、そらちょっとやり過ぎかもしれへんけどな、そらどこまでいっても食品を扱うもんやし、チャーリーもこんなん望んどらんやろな」


「だな、当日にそわそわするのはいいけど、行動しない奴に未来なんてねぇんだよな」


「辛辣やけどそらそうよ。そのくせな、その日だけ校内は変な空気できしょいし、ゴミも増えて面倒やし、なんやねん!」


「「HAHAHA!」」


「そうだな、とりあえず来年度は生徒会、家庭科部として手作りチョコよレシピ一覧、作る際の手順の公開と衛生管理に対する注意喚起を促さないとな」


「せやで、そんなしょーもないことでチョコ嫌いになられたら勿体ないやろ? そもそもあれや、作る方もやけど、もらう方にも問題あるやろ。なんや、チョコがロハやと思っとるアホは? ちょいと教育せなあかんな」


「ああ、とりあえずバレンタイン前の調理実習室開放は好評だったし、情操教育的に有意義だっただろう。もちろん家庭科部の活動内容として胸を張れる実績になっただろうな」


「あんたが胸張ったら大変やで? ま、鬼の書記長が調理実習室におるから、そら知らん子達はびっくらこいたやろな?」


「シャツの規定も変わって緩くなるからな、もう胸を張っても大丈夫だぜ? ところでよ、誰が鬼だって?」


「そらあんたしかおらんやろ?」


「「HAHAHA!」」


「ま、家庭科部としてバックアップする手前さ、変なもの作られても困るだろ? これも教育だって訳さ」


「あんたが教育言うたらあれや、焼きいれるんとちゃうか?」


「お前が言うなよ?」


「そら礼儀のなっとらん輩にはおしおきせなあかんやろ?」


「おお、怖い怖い」


「「HAHAHA!」」


「ほんで調理実習室を使わんかったところからトラブルの発生や。歯折った、お腹ピーピー言うた、放置されてもうたチョコをどないするか、愛情込めたのに受け取って貰えんかったとか……そんなん生徒会に言うてどないすんねん? うちらはそんな暇やあらへんで、ほんまに?」


「ああ、そもそも食べ物を粗末にするなって話だし、まともなもの作れない結果、各所で阿鼻叫喚……あたしらがなんでそいつらの面倒見なきゃいけないんだ?」


「ほんなら予約制でええやろな。おかえし出来るかわからん言うなら、材料費と手間賃渡さんかいって訳や。せやけど自分たちで消費する分ならなんら問題はあらへん」


「そう言うわけで来年度は中止と言わずとも、事前に生徒会から声明を出しておこう。ついでに調理実習室の開放、およびお菓子作り教室の開催をもっとおおっぴらに告知ってところだ」


「せやせや、それでええやろ。そういやナギ」


「なんだ? あたしの本命チョコの行方が気になるってか? 先生にはちゃんと渡したぜ?」


「おっ、ナギやりますなあ~。伊那先生、めっちゃ喜んでいたんとちゃうか? あんたの作ったチョコ、店で出せるやろ? いや、もう店やったわ」


「「HAHAHA!」」


「ああ、おいしく食べてくれて作った甲斐があるよ。そう言えば先生、一口食う度に『うまい』ってメールで送ってきたぜ? そのうち実況スレみたいな事になってきたからさ……もう電話しろよ!」


「「HAHAHA!」」


「ほんまええ青春しとりますなぁ~? うちにもちょっぴり幸せのお裾分けをたのんます」


「ま、付き合っている訳じゃねえからアレだけどさ……本当、恋をするっていいよな……って、あたしらしくねええええぇ!!」


「うっさいわ! あれか、幸せのお裾分けちゃうわ、こんなん皺寄せの押し付けや! 甘過ぎて胃もたれ起こしてまうわ!」


「おかしいな、割りと甘さは控えめだったんだけどな」


「あんたや!」


「「HAHAHA!」」


「ま、あたしはバレンタインを楽しめたさ」


「うちもやで。ナギのおかげでめっちゃ腕上がったんやからな、店出せるんちゃうか?」


「お前はプロデュース側に回った方がいいかもな」


「そらええな!…あ、ほんなら家庭科部、生徒会主催で販売ブースやってもええんちゃうか?」


「いいね、学園祭以外で保健所に行くなんて、そりゃなかなかレアだな?」


「フォンダンショコラもええんちゃうか?」


「「HAHAHA!」」───。






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