第90話 未来を信じて…
◇
「ナギ、あんためっちゃ機嫌ええな? どないしたんや、先生に愛の告白でもされたんとちゃうか?」
「おいおい、初っぱなから飛ばすねえ? そうじゃねえよ、春休みの予定が楽しみでさ…」
「ナギが否定もせえへん、なんや、ほんまに進展でもあったんか?」
「いや、間違っちゃいないけどさ、そういう話じゃないぜ?」
「ほんならなんや? ちょっとはうちに説明しぃ?」
「いいぜ、あたしの中学時代の恩師の話になるけど、いいか?」
「ええで、めっちゃ気になるからはよはよ」
「そう慌てんなって? あたしが入学出来たのは、伊那先生のおかげだって言っただろ?」
「せやな、面接の時に英語で暴言吐いて、不貞腐れとったあれやろ?」
「そうそう、志望動機もクソもなかったからさ、途中から『あたしはいったい何でここにいるのだろう?』ってなってさ、思わずね…結果的に伊那先生に拾われたって話」
「ナギのキレ芸を拾ってもろたんやからな、ほんま拾う神っておるんやな」
「ああ、ま、そうなることも事前にわかっていたらしいし、出来すぎた話だよ」
「そっか……せやけど、なんで伊那先生、そうなるってわかっとったんやろ? あれか、それナギの中学時代の恩師に繋がるんか?」
「ご名答、英語の講師をしていたジェフってステイツ出身の先生がいてさ、たまたま伊那先生と知り合いだったんだよ」
「ナギ、そらいくらなんでも話が出来すぎとちゃいまっか?」
「あたしもそう思うぜ?」
「「HAHAHA!」」
「ほんでジェフが推薦するのもぶっ飛んでおるからあれやけど、伊那先生とどう言った関係やったんや?」
「どうやらホームステイ先で知り合ったのが始まりでね? 歳が近くてすぐに意気投合したんだってさ。その後、日本に興味を持ったジェフが英語の講師として来日した……それがたまたまあたしのいた中学だった訳さ?」
「ほぇ~、そらなんちゅうか、不思議なご縁を感じはりますな」
「だろ? 今でもジェフと伊那先生はマブダチだし、連絡を頻繁に取り合っているんだってさ」
「ええね、うちらも将来そういう関係でありたいもんやな」
「ああ、あたしもだ」
「「HAHAHA!」」
「ほんで、ナギがめっちゃ機嫌ええのはわかったんやけど、そら続きもあるんやろ?」
「もちろん。今年の春にジェフは帰国するらしいんだけど、その前に伊那先生とあたしで送ろうって話になってさ?」
「そらめっちゃご機嫌な訳や。ちょっぴり寂しいもんやけど、ジェフに感謝して送らんとあかんで?」
「もちろんさ。それでウィラ、春休みの予定なんだけど…」
「なんや? うちも人数に入っとるんか?」
「当然だろ? あたしに最高の友達が出来たってなったらさ、ジェフも大喜びだろ? そりゃ是非とも紹介するに決まってる!」
「ふっふっふっ、そら光栄や。うちもナギと友達になれて最高に楽しい高校生活送れるんやからな? 毎日メゾン サルゴ・リラチンパンジーで美味しいご飯を食べれるやろ? 家事全般も完璧なおかんやし、牛久大仏を眺めて観光気分も味わえるし、チョモランマに包まれて眠れるんやから……」
「おい、ずいぶんと濃いな?」
「「HAHAHA!」」
「そらそうよ、ほんでジェフはええ男なんか? はよ紹介してくれるのを楽しみにしとりますわ」
「ああ、素敵な奥さんが子供を身ごもっているぜ?」
「あぁ~、そらええ男なのも納得や」
「「HAHAHA!」」
「ああ、今度産まれる子供は女の子らしい。産まれてきたらさ、きっとジェフはメロメロなんだろうな」
「その惚気、めっちゃ聞きたいわ! うちらも幸せ分けてもらわなあかんわ」
「ああ、そうだな。その子の名前もさ、もう決めているんだってさ」
「へぇ、なんて名前なんやろ? ちょっと待っててな、うち、当てにいくわ…」
「なんも景品は出ねえぞ?」
「うっさいわ! 気分や、気分!」
「「HAHAHA!」」
「それで、答えは?」
「うーん、なんとなくやけど……ジェニー、なんてどうや?」
「……ウィラ、お前…すげえな?」
「なんや? あたったんか? それやったらうち、すごない!?」
「ああ、ジェニファーだ」
「めっちゃかすっとるやん! むしろあれや、ニックネームや!」
「正確には、ジェニファー=ズザンネ、だってさ。奥さんが北欧系だから、ミドルネームにズザンネを入れたらしいぜ?」
「ほぇ~、流石にそこまではわからんかったわ。せやけど素敵な名前やな」
「そうだな、いつか一緒に遊べる日が来るといいね」
「せやせや、そんな日がはよ来るとええな」───。
◇
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