第85話 ワーカーホリックと大蔵省




「生徒会で一番仕事しとるんは誰やって?…そらな、会計、監査、庶務とちゃうんか?」


「ああ、あたしも同意だ。兵站があってこそお前が思い通りに作戦行動出来るし、潤沢な選択肢に恵まれるって訳だ」


「あんたは統率能力で書記長やっとるようなもんやからな? ほんま言うたらあんたが会長やるべきやで?」


「あ? 面倒ごとは御免だぜ?」


「面倒言うてもあんた話聞いとるやん? そらナギの能力からしたら指揮官に向いとるやろ?…面倒くさがりで怠けもんやし、天の邪鬼やから書記長ちゃうやろ?」


「確かにな、お前の方が参謀タイプかもな…このワーカーホリック」


「そら…ワーカーホリックなうちが将来結婚出来へんかったらな、仕事と結婚したろか?」


「ああ、お前は仕事が出来てエネルギッシュだからな。うん、仕事に愛される一方で、いい男が逃げ出すな?」


「「HAHAHA!」」


「って、なんでやねん! こんなかわええうちをほったらかしにする男なんてありえへんで!?」


「そうだな、そうして自分を安売りして後悔する訳だ…20年ぐらいしたら最高の男に出会えるんじゃないか?」


「うっさいわ! もっと早くうちがええ男見つけたるわ!」


「「HAHAHA!」」


「ま、せいぜい頑張れよ? 少年よ、大志を抱けってか?」


「うち女やからな? そんなん名言なんて言うてもあれな、お前ら頑張れよ程度の事やで? そらうちらの事なんて博士は知らんし、そんなんどうでもええねん」


「死人にくちなしってか?」


「いや、もうちょい博士を敬ってもええんとちゃうか?」


「「HAHAHA!」」


「で、その参謀に最適なワーカーホリックがさ、兵站部門を重視するだろ?…さて、何が起こる?」


「そうっすね、私も中学で生徒会やったりしてたっすけど、ここ裏方優遇が半端ないっすね…あ、会長、書記長、お疲れっす」


「カズサちゃん、またいつの間におったんかいな? お疲れ様やで、やっぱあんた忍者とちゃいますか?」


「小幡、お疲れ様…もう何も突っ込まねえぞ?」


「いや、私まだ処女っすからね? 会長と書記長と同じっすよ? へんなの突っ込まないで欲しいっす」


「なにエロい事言うとんねん? その突っ込みちゃうからな?」


「ああ、かしましいったらありゃしねえぜ?」


「「「HAHAHA!」」」


「冗談は程々にするっす。ま、あれっすね、会長と書記長のやり方は突っ込みどころ満載っすけど、私らが仕事しやすい環境を整えてくれたっすから、感謝っすよ」


「そら働きやすい仕組みをぎょうさん考えてな、どんと構えてやったるのがボスの仕事やからな?」


「ああ、正常に機能していればさ、決裁だけやってりゃいいのによ。ちょこまかとよく動き回るワーカーホリックのお飾りだよ、全く」


「会長が働きすぎると私らの仕事が減るっす。重要な場面で確実に動いて欲しいっすから、程々にするっすよ?」


「いや、程々に言うてもな…うち、じっとしてられへんで?」


「小幡、飯富さんと土屋を呼んでこい。ウィラに大人しくしてもらうぞ?」


「いや、会長を押さえるだけっすから、牛久大仏の書記長一人で十分じゃないっすか?」


「カズサちゃん、甘いで?…ナギはな、伊那先生来たら全く使い物にならへんやろ?」


「確かにそうっすね、乙女モードの書記長かわいいっすよね?」


「ほんまやで? そら甘ったるい空気でうちらの胃がもたれてまうわ。ナギ、サッカリン盛ってどないすんねん? 二人っきりでごゆっくりさせたろか?」


「ああうっせえな、飯富さんと土屋を呼んで早くこのワーカーホリックを黙らせようぜ?」


「「「HAHAHA!」」」


「土屋はともかくっすけど、会長と書記長、何故か飯富さんには頭あがらないっすよね?」


「そらそうよ、飯富はんうちらの先輩やし、生徒会の大蔵省やからな?」


「ああ、生徒会の財政を握っているからな、そりゃ裏番長のようなものだろ? あの人、無駄口叩かねえし、真面目だからなんかおっかねえしな?」


「………」


「…噂をすればなんとやらっす」


「あっ、飯富はんや。お疲れ様やで」


「飯富の姐さん、お疲れっす」


「………」


「二人ともお疲れ様って言ってるっすね?」


「カズサちゃんすごっ! なんでわかるんや? うち全然わからへんで? 飯富はん、なんかしゃべらんかい」


「ウィラ、お前がやかましいだけだからな?」


「そうっすね、会長って口から生まれたんっすか?」


「そらうちはな、どっかのナメクジ星人みたいに口から出た卵から生まれ…って、ちゃうわ!」


「「「「HAHAHA!」」」」


「…って、飯富はん普通に笑うんかーい!?」


「ウィラ、お前は飯富さんを何だと思ってるんだよ?」


「そらあれや、真面目な無口キャラとちゃうか?」


「………」


「会長の言ってるイメージはわかるっすけど…」


「………」


「飯富さん普通に喋るぞ?」


「………」


「いや、それ言うてもな…」


「………」


「いや、なんかしゃべらんかい!」


「「「「HAHAHA!」」」」───。




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