第84話 魔法のコート






「ナギ、そのトレンチコート、めっちゃシュッとしててええな!」


「ああ、マリーンの払い下げだよ」


「海兵隊か、ナギにお似合いやで? ほんでな、身体のラインが浮き出てエロすぎるんとちゃいますか?」


「そこがトレンチのおしゃれポイントだろ?」


「せやな。なんかあれやな、トレンチコートって言うたら…ゾンビゲームのクリーチャーにごっついのおったやろ?」


「おいおい、あたしは暴君かよ?」


「いや、そらあんた、Tyrran(暴君)やろ? 何回始末書を書いたんや? 言うてみ?」


「ああ、お前が言うな?」


「「HAHAHA!」」


「ま、そらええねん…ナギ、あんたのおかげで反省文なんか楽々やねんで?」


「そうだな。ま、あたしがダッフル似合わねえからさ、トレンチコートをチョイスしたわけさ…あ、校則なんてつまらねえ事を言うなよ?」


「そらな、牛久大仏でチョモランマなあんたが指定のPコート、またはダッフルコートしか選べん言うたらな、サイズがあらへんとちゃいますか?」


「そうそう、色指定があるのもキツイぜ? ネイビーカラーのPコートならさ、ブレザーと合うから良いけど、ダッフルはフードが邪魔だ…なにより、胸がキツイ」


「出荷せい!」


「「HAHAHA!」」


「そう言うわけにはいかねえんだよ? ところでウィラ」


「なんや? 今日のうちはPコートやで? めっちゃ似合っててかわええやろ?」


「ああ、世界で一番似合っているぜ? …ところで、色指定はどうしたんだ?」


「そら Grau(灰色)やで?」


「そうだな、グレーだね? ところで校則は?」


「それ言わんといてな」


「「HAHAHA!」」


「服装規定を一個一個直さなきゃいけねえし、本当面倒だよな」


「いっそ一からでもええんやけど、かえって時間かかってまうしな…」


「そういえばウィラ、Pコートも…ってことは他も持ってるのか?」


「せやで? ちょっとええダッフルコートもあるで?」


「生地が厚くてずっしりしてる奴か?」


「せやせや、あれもかわええうちにめっちゃ似合うんやで?」


「ああ、そうだろうな。フードを被ったら魔術師みたいだぜ?」


「そんなにうちを褒めてもな、ナギ、ほんならあんたに魔法かけたろか?」


「それはどんな魔法なんだい?」


「そら決まっとるやろ? 恋の魔法や! ナギ、あんたが伊那先生とな、もっと仲良くなれる魔法かけたるで?」


「ああ、そりゃ付き合ってデートしてさ、手を繋いだり、ハグしたり、KISSやf**kしてえのは山々だけどさ…出来れば遅効性にしてくれよ?」


「あー、こら煩悩にまみれてますな? そんなん言われてもな、そらうちはなんも保証出来へんわ…ナギやし」


「おい、どういう事だよ? この、ペテン師!」


「そんなん未来の事なんかわからへんやろ? それとな、ペテン師ちゃうわ!」


「「HAHAHA!」」───。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る