第83話 言語の壁






「おーいウィラ、今日の放課後なんだけどさ」


「なんや? うちがそんな暇そうに見えるんやったらな…そらあれや、生徒会で急ぎの仕事はあらへんし、部活もあらへんし、宿題もガーッと気合いでちょちょいのちょいやろ? おまけにな…」


「性格悪いし、彼氏もいないし」


「せやせや、こんなかわええうちの魅力に気付かへんアホしかおらんやろ? そらうちに彼氏出来へんわ…って、うっさいわボケ!」


「「HAHAHA!」」


「で、そんなかわいいウィラちゃんはさ、いつも通り暇だし、今日もあたしと一緒に帰るんだろ?」


「せやで。ほんで夕飯の買い物してな、買い食いもするやろ?」


「ああ、寒くなってきたからさ、アイスがうめえんだよな」


「せやせや、ガタガタ震えながらハナタレ小僧やろ? ま、うちらやったらハナタレ小娘やな…って、アホか! 寒いわボケ!」


「「HAHAHA!」」


「おいおい、誰が外で食うって言ったんだ? ウィラ、やっぱりお前…変態ドMだろ?」


「そらそうやろな、うち勘違いしてはったわ。しっかしあれやな、ナギにいじられると言うか、可愛がられると言うか、そらちょっぴりゾクゾクするのがたまらんへんで?…って、アホか! 誰が変態ドMや! うちは普通やで!?」


「ああ、声を大にして言ってる時点で変態ドMだろ?」


「「HAHAHA!」」


「うっさいわ! そんなんどうでもええねん! ナギ、アイス言うたらあれやろ? サーティワンか?」


「サーティワン?…ああ、BaskinーR〇bbins の事か」


「いや、何でそこアメリカンなんや?…って、あんた一応帰国子女やったわ」


「ああ、こっちの方が長いはずなんだけどさ、未だに向こうの感覚が染み付いたままなんだよな…」


「ま、それも個性なんとちゃうか?」


「そうだな、ドイッチュラントの事を忘れかけるお前のそれも個性だな?」


「せやせや…って、それは言わんといてな?」


「「HAHAHA!」」


「あ、そうだ…小幡も誘ってみる」


「カズサちゃんか? ええんとちゃうか?」


「なんか呼ばれた気がしたっす」


「わっ!? なんでいつの間におるんや!? びっくらこいたで?」

「小幡、お前はNINJAか?」


「どうっすかね? 単に会長と書記長が忍ばな過ぎなんっすよ? 少しは忍べよ…」


「「「HAHAHA!」」」


「ところでカズサちゃん、放課後一緒にアイス食べに行かへんか?」


「あー、いいっすけど…寒くないっすか? 会長と書記長、ついに頭がおかしくなったっすか?」


「いや、もう手遅れだ…とりあえずBaskinーR〇bbins 一択だろ?」


「ばすきんろびんす…っすか? 会長、この日本語の上手い、牛久大仏みたいな見るからに怪しい日系アメリカ人…って、知り合いっすか?」


「あれ、カズサちゃん知らんかったんか? ナギな、一応帰国子女やで? ま、そんなんどうでもええねん。うちはホッピングシャワーやろ?」


「ああ、聞かれたこと無いから言わなかったんだよ。あたしはチョコミント」


「通りで、書記長って話が通じないときあるっすからね。サーティワンっすか、とりあえずラブポっすね」


「ラブポ?…って、なんかエロいもんとちゃうか?」


「お前が想像しているものとは違うと思うぞ?」


「会長もなんかズレてるっすからね、話通じないっす」


「そら気合いが足らんとちゃうか?」


「気合いでなんとかなる問題か?」


「いや、会長、書記長…そもそもっすけど、標準語、関西弁、英語、ドイツ語が飛び交うカオスを作り出してるの、あんたらっすからね?!」


「あ、せやった…Tut mir leid(ごめんね)」


「My bad(ごめん)」


「言った傍からなにやってるんすか!? リクエストじゃねーから!?」


「「「HAHAHA!」」」───。







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