第73話 生徒指導室にて
◇
「…お前ら、なんでここに呼ばれたか…わかるか?」
「伊那先生、うち生徒指導室入ったの生まれて初めてやで?なんや、茶も出ぇへんし居心地悪すぎるんとちゃいますか?」
「ウィラ、よく気付いたな…だけどあたしは慣れているからさ、むしろくつろげるぜ?このソファーの質感も悪くねえだろ?」
「「HAHAHA!」」
「お前らを指導する身にもなってくれよ?…で、謹慎明け早々にこの騒ぎだ。それとなく事情は聞いた。黙秘しても構わない…だが、このままではまずい…香坂、ノイマン、お願いだからちゃんと先生に話してくれよな?」
「ほんならうちから言わしてもらうで?…体育祭実行委員の不正会計は黒や。それもな、またしょーもない伝統言うてたわ」
「こっちも役員に調査を進めてもらった。提出していない分の領収書、レシートでも良いが、紛失と言い張るなら自腹を切らせて当然だろ?…で、体育祭実行委員のメンバーを集めて打ち上げ…カラオケまでは良い。だが、あたしらぐらいのガキンチョごときの会計がさ、8人ぐらいで4万越えるのは不自然すぎるだろ?」
「せやからうちの役員にな、該当のカラオケ店に問い合わせてもろたんや…ほんであいつらな、アホ過ぎるんとちゃうか?脳ミソ足りてへんやろ?」
「服装を誤魔化せてもさ、振る舞いや仕草、何よりも内容は誤魔化せねえだろ?」
「ああ、それはこちらも確認済みだ。未成年飲酒と喫煙、おまけに条例違反で表沙汰にはなっていないものの、学生証を確認しておきながら提供したお店側にも問題ありだ」
「たまたま責任者不在やったのがあかんかったな」
「全くよ、ジュースみたいに甘いカクテルをガブガブ飲みやがってよ…急アルで倒れたらどうするつもりなんだ?」
「そうならなかっただけまだマシだが、毎年のように予算を横領してこれだろ?…お前らがさ、戦前の特別高等警察みたいに取り締まるのもわかるよ…だが、やり過ぎだ。個人的には褒めてやりたいけどな?」
「「「HAHAHA!」」」
「先生にそう言うてもらえるだけ御の字や。流石にあれやな、実行委員長とそれに関係したメンバー集めてな、床に正座させたのがあかんかったな?」
「ああ、お前の詰め方がエグかったな。取り立てようにもさ、使っちまったからあるわけねーもんな?…今度からお前は親指姫ならぬ、親呼び姫と呼んでやろうか?」
「ああ、おかげで大騒ぎになった訳だ。自分のガキの不始末を棚に上げる話の通じない親御さんも居たけどさ、退学届けを突き付けたら静かになっただけマシだよな?」
「「「HAHAHA!」」」
「ほんで先生、天安門のあれみたいにな、愛国無罪なんて言わへんけど…、うちらはどないなるんや?」
「流石に覚悟はしているぜ?…伊那先生、結論決まってるなら早くしな?」
「ああ、あいつらには使い込んだ分と学園の名誉毀損分を親に請求した。もちろんそれだけではなく停学だ。また、推薦組は他に譲ることを同意させた…取り消し?何のことかな?」
「「「HAHAHA!」」」
「ほんでうちらはどないなるんや?」
「ああ、決まっているなら早くしてくれよな?」
「まあまあ焦るな、お前らは…」───。
◇
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