第36話 ご褒美の赤提灯







「ほらっ、焼けたぞ?」


「ふっふっふっ、ナギに任せて待っているだけでええんか?うちは楽チンなんやけど…うまっ!」


「良いんだよ、肉を育てるの…地味だけど好きでさ」


「おかんやな、あんたはええんか?」


「ああ、あたしもちゃんと確保して味わっているさ」


「ほんならええんやけど、ほんまこのタンの焼き加減…最高やで!」


「タンばっか頼んでんじゃねーよ、他にもおいしいものがあるだろ?」


「せやな、カルビは…ちょびっとでええな。脂も欲しいけど、そんな食べられへんわ」


「おい、ここはホルモン屋だからカルビはねーよ?」


「せやった、焼肉屋とはちゃうんやな」


「ああ、やることは変わらねえけどな。ところで脂が、って言ったな?…お前も中身と胃袋がおっさんじゃないか?」


「うっさいわ!」


「「HAHAHA!」」


「ま、内臓系は女の子に嬉しいものさ」


「低カロリー・高タンパクやからな。そらええんやけど、中々上手く焼けへんのや…」


「ああ、ホルモンは特に難しいかな…よし、レバーも良い塩梅だ」


「おっ、ダンケ!…うまっ、レバーの焼き加減も完璧や!ちゃんと火が通っているけどパサつかず、ええ歯ごたえ…ふっふっふっ、こんなにうまいんか?」


「鮮度も大事だからな、良いものを仕入れているし、丁寧な仕込みだ」


「それを焼くナギの腕もええんやで?あんた、肉と会話しとるんとちゃうか?」


「その通り、音と見た目の変化で感じとるんだ」


「なるほどなぁ、ほんなら今焼いとるハツはなんて言うとるんや?」


「ネエサン、ソロソロヒックリカエシテ…おう、それで?…アトハササット、ヨシネーチャンタチ、オアガリヨ!」


「なんかめっちゃかわええな」


「フフッ、テレルゼ…アツアツノウチニアジワッテクレ!」


「うん、うまっ!ハツってこんなにおいしいもんなんか!?」


「オレノアツイハート、ネーチャンニトドイタナ!」


「いや、もうええっちゅうねん」


「「HAHAHA!」」


「次はホルモンだ…まずは皮目をじっくり、こんがりキツネ色になるまで…」


「おっ、ケツネ言うたらうち焼かれてまうんか?そら罰当たりとちゃいますか?」


「いや、そうじゃねーよ」


「冗談や」


「「HAHAHA!」」


「よしよし、良い焼き色だ。次は脂に透明感が出るまでさっと…」


「ナギー!フォイアしとるで!?」


「落ち着けよ?ここで一緒に焼いていた玉ねぎに乗せて避難…上杉家の大好きな舟遊びだ」


「あんた意外と歴史好きよな?」


「ああ、ロマンがあっていい。新発見で覆されるのもまたな」


「そらわかる。ところでナギ、なんで玉ねぎに乗っけるんや?」


「ああ、玉ねぎを咬ませてホルモンの脂の中心をゆっくり温める為だ。炎上させたら全体が焦げてちんちくりんになっちゃうだろ?…よし、玉ねぎもしんなりして良い頃合いだ。いいぞ」


「せやせや、ホルモンをなかなか上手く焼けんってよう聞くけどな、あんたもよう考えたもんやで?」


「ああ、程よく火が通って、ホルモンの脂とうま味を吸った野菜もおいしくいただける。なかなか良いアイディアだろ?」


「あーむっ…うまっ!ほんまや!玉ねぎもうまっ!」


「ホルモンも楽しんでくれて何よりだ」


「おっさんくさいチョイスかと思うたけどな、めっちゃおいしいやん!そんなんやったらホルモン女子が増えてもええんとちゃうか?」


「ホルモン女子か、ああ、そんな未来もあるかもな」


「せやな、流石にJK二人は浮きすぎやけどな…。ま、あんたはほんまに最高の焼き肉奉行やで」


「それはどうも、よし次はハラミで肉感を味わっていこうか」


「賛成!」───。





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