第36話 ご褒美の赤提灯
◇
「ほらっ、焼けたぞ?」
「ふっふっふっ、ナギに任せて待っているだけでええんか?うちは楽チンなんやけど…うまっ!」
「良いんだよ、肉を育てるの…地味だけど好きでさ」
「おかんやな、あんたはええんか?」
「ああ、あたしもちゃんと確保して味わっているさ」
「ほんならええんやけど、ほんまこのタンの焼き加減…最高やで!」
「タンばっか頼んでんじゃねーよ、他にもおいしいものがあるだろ?」
「せやな、カルビは…ちょびっとでええな。脂も欲しいけど、そんな食べられへんわ」
「おい、ここはホルモン屋だからカルビはねーよ?」
「せやった、焼肉屋とはちゃうんやな」
「ああ、やることは変わらねえけどな。ところで脂が、って言ったな?…お前も中身と胃袋がおっさんじゃないか?」
「うっさいわ!」
「「HAHAHA!」」
「ま、内臓系は女の子に嬉しいものさ」
「低カロリー・高タンパクやからな。そらええんやけど、中々上手く焼けへんのや…」
「ああ、ホルモンは特に難しいかな…よし、レバーも良い塩梅だ」
「おっ、ダンケ!…うまっ、レバーの焼き加減も完璧や!ちゃんと火が通っているけどパサつかず、ええ歯ごたえ…ふっふっふっ、こんなにうまいんか?」
「鮮度も大事だからな、良いものを仕入れているし、丁寧な仕込みだ」
「それを焼くナギの腕もええんやで?あんた、肉と会話しとるんとちゃうか?」
「その通り、音と見た目の変化で感じとるんだ」
「なるほどなぁ、ほんなら今焼いとるハツはなんて言うとるんや?」
「ネエサン、ソロソロヒックリカエシテ…おう、それで?…アトハササット、ヨシネーチャンタチ、オアガリヨ!」
「なんかめっちゃかわええな」
「フフッ、テレルゼ…アツアツノウチニアジワッテクレ!」
「うん、うまっ!ハツってこんなにおいしいもんなんか!?」
「オレノアツイハート、ネーチャンニトドイタナ!」
「いや、もうええっちゅうねん」
「「HAHAHA!」」
「次はホルモンだ…まずは皮目をじっくり、こんがりキツネ色になるまで…」
「おっ、ケツネ言うたらうち焼かれてまうんか?そら罰当たりとちゃいますか?」
「いや、そうじゃねーよ」
「冗談や」
「「HAHAHA!」」
「よしよし、良い焼き色だ。次は脂に透明感が出るまでさっと…」
「ナギー!フォイアしとるで!?」
「落ち着けよ?ここで一緒に焼いていた玉ねぎに乗せて避難…上杉家の大好きな舟遊びだ」
「あんた意外と歴史好きよな?」
「ああ、ロマンがあっていい。新発見で覆されるのもまたな」
「そらわかる。ところでナギ、なんで玉ねぎに乗っけるんや?」
「ああ、玉ねぎを咬ませてホルモンの脂の中心をゆっくり温める為だ。炎上させたら全体が焦げてちんちくりんになっちゃうだろ?…よし、玉ねぎもしんなりして良い頃合いだ。いいぞ」
「せやせや、ホルモンをなかなか上手く焼けんってよう聞くけどな、あんたもよう考えたもんやで?」
「ああ、程よく火が通って、ホルモンの脂とうま味を吸った野菜もおいしくいただける。なかなか良いアイディアだろ?」
「あーむっ…うまっ!ほんまや!玉ねぎもうまっ!」
「ホルモンも楽しんでくれて何よりだ」
「おっさんくさいチョイスかと思うたけどな、めっちゃおいしいやん!そんなんやったらホルモン女子が増えてもええんとちゃうか?」
「ホルモン女子か、ああ、そんな未来もあるかもな」
「せやな、流石にJK二人は浮きすぎやけどな…。ま、あんたはほんまに最高の焼き肉奉行やで」
「それはどうも、よし次はハラミで肉感を味わっていこうか」
「賛成!」───。
◇
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