第35話 泣いた赤鬼と智天使と
◇
「まるで合宿のようだったな…」
「そら…うちの三徹とあんたの課題を四日間、合わせて一週間を駆け抜けたんやからな?」
「自由研究を過去の統計からの予測、考察するなんてガキンチョのやり方じゃねーだろ?」
「うちは先人の作った轍を解釈しただけやで?例えば教科書ってあるやろ?あれは数ある学問の中でな、わかりやすくておもろいものだけを抜き取ったもんなんや。そら考えようによってはええもんやろ?」
「なるほどね、お前のおかげで勉強嫌いを克服出来たよ」
「ふっふっふっ、うち凄いやろ?」
「ああ、最高だよ。焼き肉でもいくか?」
「ええね、もちろん…」
「あたしの奢り、報酬代わりに受けとれよ?」
「そんなん言うてもな、あんたは美術を手伝ってくれたんやし、おいしい手料理も作ってくれたんや。うちからも出させてや?」
「おう、ありがたい。上タン塩も食えるな」
「JKの胃袋は宇宙やで?」
「まるでブラックホールだな、財布が軽くなるぜ?」
「「HAHAHA!」」
「それよかあんた、美術の課題…なかなかおもろいもん描いてはりますな?」
「ああ、ただ描くだけじゃあれだし、リフレッシュしたいからさ…。中々ファンタジックな世界になっただろ?」
「羽根が四枚の天使か…これ、ケルビムとちゃうか?」
「おっ、よくわかったな。智天使ケルビムをそのまま書くのはあれだから、あたしの想像力で美しく、凛々しく、そして何よりもかわいく描いた…本当、良いリフレッシュになったよ」
「…どっかで見たことあるような顔やけど?」
「ああ、身近にいるだろ?かわいくて美人で凛々しくて性格の悪い奴が?」
「性格悪いのは余計や!」
「「HAHAHA!」」
「ま、目の前に最高のモデルがいるんだからな、ありがとう…智天使ウィラ」
「あんたに学問の知恵を授けたるで?」
「ああ、これからも頼むぜ」
「ふっふっふっ、なんなら卒業までナギの手料理食べ放題やからな」
「いいぜ…しかし、夏休みになるのもあっという間だったしな…」
「せやで?モタモタしとったらあっという間におばはんやで?」
「ああ、人生って儚いね」
「まだ早いっちゅうねん」
「「HAHAHA!」」
「ま、だから絵を描くのも好きなんだよ」
「そうなんか?美術部入らんのが不思議なぐらいや」
「あ?じっとしてられねーから当然だろ?料理や裁縫の方が動くし、実用的であたしには必須だからさ」
「ナギらしいな、そういうとこ…大好きやで?」
「ありがとう、だけど絵も嫌いじゃねーんだ。鉛筆一つで人生の足跡が残せる、色や仕上げは見たやつの想像力に任せればいいんだ」
「よっ、ナギ先生!…ほんなら美術館も行ってみたいわ」
「お、良いね。空調完備のミュージアムを学割で、世界の名画、作品の海に漂って…」
「ほんで美味しいご飯を食べながら感想会やろ?」
「そうそう!…あたし、それやってみたかったんだよ!…この成りでいつも泣いた赤鬼だったからな」
「ふっふっふっ、猛獣使いのうちがおるんやから心配不要やで?」
「「HAHAHA!」」
「さ、焼き肉食べながら夏休みを楽しむ計画を立てるか」───。
◇
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