Summer Break

第32話 登校日とちょっとした冒険







 「ナギ…、あんた校則違反で呼ばれたんか?」


「あぁ、あたしが金髪にしたら大騒ぎだぜ? そもそもなんであたしだってわかるんだ?」


「そらな、夏休みデビューするのはええねん。せやけどあんたぐらいの高身長女子はな、そうおらんからすぐバレてまうやろ?牛久大仏やし」


「そう言うことか、牛久大仏呼ばわりが相変わらずなのは良い…いや、あたしさ、金髪が絶対似合うと思ったから染めたのに!…」


「めっちゃ似合っててうちは大好きやで?ほんまナギはかわええのう」


「慰めてくれてありがとう、ウィラ…」


「ええんやで!…そらな、あれよ、あんたはマリア・シャラポワ(188cm)、エリザベス・デベッキ(190cm)みたいにな、めっちゃシュッとしたええ女やし」


「…ウィラ、褒めてくれるのはありがたいけど…」


「なんや、比較対象があかんかったか?」


「いや、あたしが高身長(187cm)だから比較対象としては間違ってないけどさ…ウィラ、"シュッとした"ってさ…あたしは男か!?」


「そら男前やろ!…ついでにおっさんや」


「お前が言うな!」


「「HAHAHA!」」


「それな!そらそうとナギ、あんたは女子にモテモテやからな」


「ああ、登校日を狙ったのか知らねーけど、下駄箱に手作りのとてもかわいらしい、校舎裏行きのチケットが届いていたよ…」


「屋上やないんか?知らんけど」


「よう生徒会長、屋上は許可が降りないのをご存じで?」


「…知らんかったわ、うちらの定番は校舎裏かいな」


「あぁ、隠れやすくて見学もしやすいと評判だぜ?」


「せやろな、そんで…今度は誰を消すんや?」


「そのネタもう良いから!」


「「HAHAHA!」」


「ナギなら男子にモテてもええんやけどな?」


「それがこの成りだろ?(187cm) 出来るのは舎弟ばっかり、いいんだけどさ…そういうウィラはどうだ?」


「それ聞くんか? 聞いちゃうんか??」


「その様子だと断ったようで?」


「せやで、ほんではっきりせんと焦れったいからな、ドイツ語で捲し立てたら尻尾巻いて逃げられたわ」


「日本語で断れよ!」


「「HAHAHA!」」


「うちの性格がキツいの知っとるやろ? せやけどな、うちだって気ぃ遣ってんねんな。そら多感な思春期の男子を傷もんにしたら…あれや、なんかあかんやろ?」


「お前も思春期真っ盛りだろ! なにグローバルな洗礼を浴びせているんだよ!?」


「「HAHAHA!」」


「やっぱあれや、古臭いかもしれへんけど根性って言うか、ちょびっとでも度胸ある男や無いとな、そら張り合いなくて退屈やろ?」


「それには同意する…って言うかな、ウィラ、いいか? よく聞け…、単にあたしらが異常なだけだ?」


「せやな、高嶺の華同士頑張らなあかんな」


「…ウィラ、お前の言う高嶺はチョモランマか?」


「そらあんたの事やろ?しかも牛久大仏やし」


「うっせーよ!」


「「HAHAHA!」」


「ま、あれや、チョモランマは行くだけでも大変やからな。まずパンダを説得せなあかん」


「あたしらが十分客寄せパンダだろ?」


「それな! ほんでお胸がチョモランマはん、うちにもその身長と素晴らしい持ち物をちょびっとでもええんや、分けてくれへんか?」


「ウィラ、バストの話は不毛だ…。それはいい、お前もこの国では十分高身長だ、168cmもあれば十分だろ? それでも欲しがるなんて珍しいな?」


「あれや、あんたと並ぶとな、エウロパ感が無くなってまうやろ?」


「ウィラ、お前な…、バリバリ関西弁混じりだからみんなそれ忘れているだろ!」


「「HAHAHA!」」


「せやせや、うちの地毛と瞳がほんのりエウロペーイシュなぐらいやな」


「そう言うウィラこそ金髪が似合うんじゃないか?」 


「せやろか? うちも染めてみたいんやけどな、そないな事しちょったらな、うちの真面目な優等生キャラが崩壊するんとちゃうか?」


「ウィラ、もう手遅れだ…、お前はただの優等生気取りで性格の悪い問題児だ」


「「HAHAHA!」」


「それ言わんといてな? ま、うちも夏休みデビューぐらいやってみたいんや」


「ああ、職員室行きになるけどよ、夏休みぐらい多目には見てくれるぜ?」


「先生方も気持ちはわかってくれるんやな」


「ま、自分達も通った道だって笑ってたよ」


「そら昔は学生やったんやしな。先生方も立場があるんやろうけど、うちら生徒会が橋渡しになれればええな」


「ああ、髪も肌も色なんて関係ない、そう言う未来への大きな一歩にしようぜ」


「ええこと言いますな?ほんまナギがおってよかったわ」


「こちらこそ。それじゃ、そろそろ昼にでもするか?」


「賛成や!今日も暑いからな、うちは冷やしケツネやな」


「あたしは何にしようか迷うな…ま、行ってから考えるか」───。





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