Summer Break
第32話 登校日とちょっとした冒険
◇
「ナギ…、あんた校則違反で呼ばれたんか?」
「あぁ、あたしが金髪にしたら大騒ぎだぜ? そもそもなんであたしだってわかるんだ?」
「そらな、夏休みデビューするのはええねん。せやけどあんたぐらいの高身長女子はな、そうおらんからすぐバレてまうやろ?牛久大仏やし」
「そう言うことか、牛久大仏呼ばわりが相変わらずなのは良い…いや、あたしさ、金髪が絶対似合うと思ったから染めたのに!…」
「めっちゃ似合っててうちは大好きやで?ほんまナギはかわええのう」
「慰めてくれてありがとう、ウィラ…」
「ええんやで!…そらな、あれよ、あんたはマリア・シャラポワ(188cm)、エリザベス・デベッキ(190cm)みたいにな、めっちゃシュッとしたええ女やし」
「…ウィラ、褒めてくれるのはありがたいけど…」
「なんや、比較対象があかんかったか?」
「いや、あたしが高身長(187cm)だから比較対象としては間違ってないけどさ…ウィラ、"シュッとした"ってさ…あたしは男か!?」
「そら男前やろ!…ついでにおっさんや」
「お前が言うな!」
「「HAHAHA!」」
「それな!そらそうとナギ、あんたは女子にモテモテやからな」
「ああ、登校日を狙ったのか知らねーけど、下駄箱に手作りのとてもかわいらしい、校舎裏行きのチケットが届いていたよ…」
「屋上やないんか?知らんけど」
「よう生徒会長、屋上は許可が降りないのをご存じで?」
「…知らんかったわ、うちらの定番は校舎裏かいな」
「あぁ、隠れやすくて見学もしやすいと評判だぜ?」
「せやろな、そんで…今度は誰を消すんや?」
「そのネタもう良いから!」
「「HAHAHA!」」
「ナギなら男子にモテてもええんやけどな?」
「それがこの成りだろ?(187cm) 出来るのは舎弟ばっかり、いいんだけどさ…そういうウィラはどうだ?」
「それ聞くんか? 聞いちゃうんか??」
「その様子だと断ったようで?」
「せやで、ほんではっきりせんと焦れったいからな、ドイツ語で捲し立てたら尻尾巻いて逃げられたわ」
「日本語で断れよ!」
「「HAHAHA!」」
「うちの性格がキツいの知っとるやろ? せやけどな、うちだって気ぃ遣ってんねんな。そら多感な思春期の男子を傷もんにしたら…あれや、なんかあかんやろ?」
「お前も思春期真っ盛りだろ! なにグローバルな洗礼を浴びせているんだよ!?」
「「HAHAHA!」」
「やっぱあれや、古臭いかもしれへんけど根性って言うか、ちょびっとでも度胸ある男や無いとな、そら張り合いなくて退屈やろ?」
「それには同意する…って言うかな、ウィラ、いいか? よく聞け…、単にあたしらが異常なだけだ?」
「せやな、高嶺の華同士頑張らなあかんな」
「…ウィラ、お前の言う高嶺はチョモランマか?」
「そらあんたの事やろ?しかも牛久大仏やし」
「うっせーよ!」
「「HAHAHA!」」
「ま、あれや、チョモランマは行くだけでも大変やからな。まずパンダを説得せなあかん」
「あたしらが十分客寄せパンダだろ?」
「それな! ほんでお胸がチョモランマはん、うちにもその身長と素晴らしい持ち物をちょびっとでもええんや、分けてくれへんか?」
「ウィラ、バストの話は不毛だ…。それはいい、お前もこの国では十分高身長だ、168cmもあれば十分だろ? それでも欲しがるなんて珍しいな?」
「あれや、あんたと並ぶとな、エウロパ感が無くなってまうやろ?」
「ウィラ、お前な…、バリバリ関西弁混じりだからみんなそれ忘れているだろ!」
「「HAHAHA!」」
「せやせや、うちの地毛と瞳がほんのりエウロペーイシュなぐらいやな」
「そう言うウィラこそ金髪が似合うんじゃないか?」
「せやろか? うちも染めてみたいんやけどな、そないな事しちょったらな、うちの真面目な優等生キャラが崩壊するんとちゃうか?」
「ウィラ、もう手遅れだ…、お前はただの優等生気取りで性格の悪い問題児だ」
「「HAHAHA!」」
「それ言わんといてな? ま、うちも夏休みデビューぐらいやってみたいんや」
「ああ、職員室行きになるけどよ、夏休みぐらい多目には見てくれるぜ?」
「先生方も気持ちはわかってくれるんやな」
「ま、自分達も通った道だって笑ってたよ」
「そら昔は学生やったんやしな。先生方も立場があるんやろうけど、うちら生徒会が橋渡しになれればええな」
「ああ、髪も肌も色なんて関係ない、そう言う未来への大きな一歩にしようぜ」
「ええこと言いますな?ほんまナギがおってよかったわ」
「こちらこそ。それじゃ、そろそろ昼にでもするか?」
「賛成や!今日も暑いからな、うちは冷やしケツネやな」
「あたしは何にしようか迷うな…ま、行ってから考えるか」───。
◇
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