第31話 一学期の終わりに







「さ、いよいよ夏休みか」


「なに言うとるんや、夏休みは明日からやろ?まだ始まっとらんで?」


「いや…そうだけどさ、そう言うことじゃねーよ!禅問答か?」


「「HAHAHA!」」


「さっき終業式やったばっかやないか?浮かれるのは家に帰って明日からにしぃ?」


「ああ、確かにお前の言う通りだ。それはそうとこの炎天下の中でさ、校長と前任の生徒会長、あいつらのおかげで浮かれる前に沈むかと思ったよ」


「せやせや、こないな炎天下でな、校長先生の長くておもんない話やろ?うちが熱中症で倒れたらどないすんねん?」


「昔は…とか、根性が…とか言い出すんじゃないか?」


「昔と今で気温がちゃうの知らんのかいな?根性言うとる場合か、性根腐って頭沸いてるんとちゃいますか?ほんま、どついたろかと思ったで?」


「確かに、お前の言うことはわかる。校長先生の頭を叩いた女として伝説になるな」


「そう言うあんたは初日にやりかけたやろ?」


「校長じゃねーから無効だ」


「「HAHAHA!」」


「そらええねん、校長先生の話がなんで長いか不思議でしゃーないわ」


「ある意味で学校の七不思議かもな」


「それな!それ言うたらな、前任の生徒会長はんも大概や。ようあんなおもんない話を延々としゃべれるんやから、あれ一周回って天才とちゃうか?」


「炎天下の中でそれだからな。無駄な頑張りか足掻きか知らねえけど、暑さに頭やられたのかもな。…または天災か?」


「「HAHAHA!」」


「そら落選しはりますわ」


「性格悪っ!」


「うっさいわ!あんなおもんない話聞いてられんわ、誰やねん、あんなん選んだアホは?」


「生徒だよ」


「「HAHAHA!」」


「全く、誰が自分らのボスになるか、少しは考えときぃ?」


「ま、性格悪いけど美人でかわいくて面白い奴と比較するまでもないさ」


「それや、性格悪い言うのは余計やけど、うちの挨拶なんか優しすぎるんとちゃいますか?」


「ああ、お前の簡単な自己紹介とよろしく、そして校長と前任の会長を皮肉混じりにいじって笑いをとって終わり…そりゃ終わりよければ全てよしだな」


「少しはみんなの気が晴れたんならええんやけど。ま、かわええうちやからこそ、許されとるんやろな」


「確かに、まぁ一刻も早く浮かれたいあたしらからすれば、お前は小さな英雄だよ。さ、明日から夏休みをどう過ごすか…」


「あんたな、浮かれるのはええねん。せやけど夏休み言うてもな、課題やらなあかんからしばらく自宅学習やで?」


「確かにそうだ、面倒くさいな…」


「コラッ!面倒くさがったらあかんで?うちも夏休みぐらい実家に帰らんとあれやし、その前に一緒に終わらせるで?」


「ウィラ、あたしに協力してくれるか?」


「そんなん決まっとるやろ?うちがいつもお世話になりっぱなしやし、教えることが出来てようやく一人前なんや、一肌と言わずいくらでも脱いだるで?」


「ああ、暑いのはわかるけど、あたしの家はヌーディストビーチじゃないからな?」


「そう言う意味とちゃうわ!」


「「HAHAHA!」」


「冗談はともかく、お前のおかげでテストも問題なかったし、教え方も上手いから勉強も捨てたもんじゃねーな」


「ふっふっふっ、ナギの学習意欲、好奇心の扉を開いてもうたからな、うちも楽しくてたまらんのや」


「本当、あの日お前に話しかけてよかったよ」


「ほんまやで?あんたがうちのこと拾ってくれたんや、おケツネ様の恩返ししたるで?」


「じゃ、あたしからは大仏の加護でもくれてやろう」


「「HAHAHA!」」───。




───cut!




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