第29話 初凪と浪花節







 「…あーテステス…よし、それじゃ始めようか…。全校生徒の皆さん、こんにちは、はじめまして。あたしは、学校法人 東方共栄学園、普通科第二郡 一年B組所属、生徒会書記候補生の香坂凪沙だ。あたしの事はナギと覚えてくれ」


「………」


「既にご存じの方もいるとは思うが、どっかの美人で性格の悪いドイツクォーターの生徒会長候補生がいるだろ?…「ナギー!なにうちのことネガキャンしとんねん!?あんたアホちゃうか?」………な?そいつの相棒と言えばわかるか?」


「「「「HAHAHA!」」」」


「…あたしの名前を知らないやつでも、多分大仏、チョモランマと言うアダ名が一人歩きしている事だろう。ああ、怖がらなくていい、実物のあたしは当然歩くけど、もっと小さいからな?」


「「「「HAHAHA!」」」」


「見ての通りあたしは近寄りがたい成りだ、そりゃ大仏やら山が動いたら驚くよな?」


「「「「HAHAHA!」」」」


「だが安心してほしい。そんなあたしはこれから生徒会書記として運営をサポート、この性格の悪い生徒会長候補生を"おとこ"にしてやりたいんだ」


「いや、うち女なんやけど?」


「「「「HAHAHA!」」」」


「ああ、例え話さ。あたしが当選の暁にはこの学園を変えていく。生徒達に寄り添い、声を届けていく為にあたしは一肌脱ごう」


「そらセクシーやな」


「「「「HAHAHA!」」」」


「…おいおい、脱いだら校則違反ってか?」


「「「「HAHAHA!」」」」


「…さ、冗談はここまでだ。あたしが生徒会書記、役職はともかく役員になればさ、関わっていくであろう事があるだろ。生徒達それぞれの抱える個人的な問題。学園の黒歴史に等しい三葉虫の化石レベルに風化した慣行への疑問。学園・教員側への様々な要望も沢山あるだろう。生徒達の声を形に、見える化していければもっといい学園ライフを送れるかもしれない。ま、理由を見つけようとすればさ、いくらでも落ちているんだ。どこまで拾えるかはわからない、ままならない世の中かもしれないけどよ、あたしら生徒会が率先し、お前らの為に行動するをここに誓う! そう、あたしは常に諸氏の先頭にあり!…」


「よっ!ナギ!おとこまえ!みんなうちらに投票するんやで?」


「そして!…あたしが当選することでよ………生徒会に観光名所の出来上がりさ。大仏とチョモランマの欲張りセットだぜ?」


「「「「HAHAHA!」」」」


「そんなお前らに一つだけ、あたしからお願いがある。…あたしの名は香坂凪沙。フルネームで書くのが面倒ならさ、カタカナでナギと投票用紙に書いてくれても大丈夫だ。…間違えても大仏、チョモランマなんて書いたら無効だから、そこだけはよろしくな?」


「「「「HAHAHA!」」」」


「もちろん生徒会長候補生のウィラ・フォン・ノイマンにも投票頼むぜ?あたしが支えたいんだからな!よろしく!…あたしからは以上、香坂凪沙の政見放送でした………よし、こんなもんかな?」


「ちょっとナギ…これ、全校放送やろ?」


「あ?そうだけどお前が落選したらさ、あたしは辞退するって話だろ?」


「そらそうやけど…あれや、未成年の主張で告られた人の気持ちがようわかったわ…」


「ああ、確かにそう聞こえるかもな…面白い。おい放送部、録音もバッチリだよな?…よし、ナイスだ」


「永久保存版かーい!はあ…来年の生徒会総選挙、どうなってまうんやこれ?」


「それは神のみぞ知るって訳さ…えっ?まだオンエアー中?…え、マイク切ってない?………それじゃお前ら、生徒会書記は香坂凪沙、ナギをよろしくな!」


「生徒会長にはうち、ウィラ・フォン・ノイマンこと、ウィラをよろしく頼んます!」


「「………」」


「ウィラ…やっちまったわ…」


「せ、せやな…あれや、いつものやろか?」


「ああ…そうだな、いつも通りいこうか…」


「「せーのっ!」」


「「HAHAHA!」」───。




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