第26話 情報戦を制するもの







 「ウィラ、お前もよく考えたな。まるで政見放送みたいじゃないか」


「ええやろ?原稿の読み上げも真面目ちゃんとギャグの二本立てやで?」


「2パターンあるのがいいね。それでお前はギャグと言ったな?」


「せやせや、うちがお行儀よく、うわべばっか言うてもおもんないし、似たようなのばっかで聞き飽きてまうからな。そんなん何も伝わらへんやろ?」


「ああ、確かにすげえ横長の『ウィラ・フォン・ノイマン』って書いた、雑でわかりやすいネームプレートに目がいくな」


「「HAHAHA!」」


「そらうちぐらいやからな、カタカナ表記は。仮に『Willa Von Neuman』って書いてもな、誰やねん!?…ってなるやろ?」


「いや、面白いんじゃないか?アルファベット表記で普通に関西弁だから」


「「HAHAHA!」」


「そらありやな、来年の生徒会総選挙はそれで決まりや」


「気が早いね。それよりもな、ビデオカメラで録画、放送室ジャック、当選の暁には希望者に配布、または生徒会予算確保の為に販売…うん、いいね、良いアイディアだ」


「せやろ、せやろ!?…ナギ、もっとうちの事褒めてもええんやで?」


「ああ、美人で賢くてかわいいウィラちゃんだから当然だろ?」


「ふふっ、ありがとう…。そんでな、これならいつでもかわええうちに会えるし、なかなか突っ込んだ内容やからな、絶対にウケるで?」


「ああ、かわいい顔して下ネタやブラックユーモア、変な校則にFワードを交えた突っ込み…最高にロックだぜ。…ところでウィラ、これ誰が編集するんだ?」


「…知らん」


「おいっ!」


「「HAHAHA!」」


「あれや、これはノーカット版や…配布、販売用にええやろ?」


「ああ、最高だね。かわいいウィラちゃんのあんな姿までもが見れるからね…それで、政見放送用は?」


「「HAHAHA!」」


「安心してな、うちもちゃんと考えておるんやからな」


「ほう、ならまずはあたしを安心させてくれ」


「そう心配せんでもな、こんなこともあろうかと、映画研究愛好会、放送部、パソコン部あたりに片っ端から声かけたで?」


「ほう、当選の暁には予算の増額あたりで釣ったのか?…お主、なかなかの悪よのう?」


「ふっふっふ…せやからな、うちを応援しぃ?って訳や。みんなうちの政見放送を見て笑い転げてたで?」


「そりゃ真面目ちゃんと比較したらそうだろうな。むしろ引いてた奴もいただろ?」


「しゃーないしゃーない、そら何も考えず性善説を信じたらあかんで?」


「ああ、確かにそうだ。性格の悪いお前が言えば納得だ」


「そら言わんといてな?」


「「HAHAHA!」」


「ところでさ、なんで撮影場所を家庭科室にしたんだ?」


「そらナギが家庭科部に入ったなんて、誰も信じておらんやろ?画面にちょびっとでも映ればな、運動部の連中も諦めるかもしれへんやん?」


「なるほどね、それで背景がぐだぐだなホームビデオって訳か…情報量多いな、おい」


「「HAHAHA!」」


「賑やかな家庭科部の活動報告にもなってな、一石二鳥とちゃうか?」


「確かにそうだな………で、あたしはどこに映ってるんだ?」


「あんたなら…、画面からはみ出とるわ」


「ああ、なるほどね…、これなら一目であたしだとわかるな…っておいっ!」


「「HAHAHA!」」


「こらこれでおもろいやんか?」


「確かにそうだな…で、結局誰が編集するんだ?」


「………知らん」


「おいっ!」


「「HAHAHA!」」───。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る