第25話 古都のカフェーで







「GWを外してもこの賑わいか…ま、ここのカフェが空いててよかったよ」


「せやな、ええ天気やし、うちらとおないで古都を散策しとるんやからしゃーないな。ほんならうちらはのんびりな、おしゃれなカフェーでハムチーズサンドと…」


「お前、なんで飲めもしないコーヒーを頼んだんだ?」


「そらあれや、うちだってちょびっと大人になりたいときもあるんやで?」


「気持ちはわからなくもねえが、まだ早かったようで?」


「せやな、こんなん砂糖入れんと飲めへんわ…。ほんまやったらこのまま香りを楽しみたいんやけど」


「ああ、いつかわかるといいな…ところで、お前はいったい砂糖を何杯入れるつもりだ?」


「そら飲めるぐらいに決まってるやろ?…って、甘っ!?」


「入れすぎだ、コーヒーシロップでも作るつもりか?」


「ザッハトルテより甘いんとちゃうか?」


「お馬鹿、あたしにも一口くれ」


「ナギ、関西人にバカ言うたらあかんで?…ほな」


「………甘っ!?お前アホだろ!」


「「HAHAHA!」」


「やってもうたわ…これどないしよ?」


「さあな、胃もたれするかと思ったよ」


「なんや、おかんだけにもうおばはんか?」


「うっせーよ、まあ肩凝りは相変わらずだよ」


「そら自分の胸に聞いてみ?」


「あ?…もしもーし?お前らがあたしの肩凝りの原因か?…えっ、違う?それは夏目漱石が悪いって?」


「ほんまに聞くやつがあるか!」


「「HAHAHA!」」


「お前といるとな、あたしもボケないといけない気がしてね」


「そらナギのノリがええんやろ?あんたほんまおもろいで」


「そいつはどうも。で、そのコーヒーシロップは飲めるのか?」


「心配せーへんでもな、関西人は甘党やから気にせんでええ…って、甘っ!」


「「HAHAHA!」」


「なんだ、歴史的なあれか?」


「せやせや、大昔に砂糖が集まった地域やからな…しっかしこれ甘過ぎとちゃいますか?誰やねん、こんなん甘くしてどないすんねん?」


「それはあたしが聞きたいよ」


「「HAHAHA!」」


「そらええねん。それよかな、あんたのライスカレー…お口直しに一口くれへんか?」


「お子ちゃま舌には辛いぞ?」


「うっさいわ!」


「「HAHAHA!」」


「ま、コーヒーシロップにはちょうど良いかもな…ほい」


「ありがと、あーむっ…んっ…辛っ!」


「言わんこっちゃない…お前の作ったコーヒーシロップで中和しろ」


「ひーっ…こらあかんわ、ナギの間接キッス、刺激的すぎんとちゃいますか?…ひーっ…」


「お前の甘ったるくて苦いのとはまた違うだろ?」


「それな、スパイシーやけど案外相性ええかもな」


「確かに、あたしも大人ぶらないで甘いの頼んでおけばよかったかもな」


「ま、レイコーやったらええんちゃうか?」


「レイコー?…ああ、アイスコーヒーか。薄まっていくから苦味はあまり気にならないのさ」


「おっ、ナギが大人の余裕を見せ付けますな?」


「ああ、かわいい妹分を目の前にしたらな…しっかりとした姉をやりたくなるんだよ」


「せやけどたまにはうちを頼ってもええんやで?」


「おう、それじゃあウィラ姉…あたし迷子になるの恥ずかしいからさ、ここ出たら手繋いでくれるか?…」


「………」


「おーいウィラ姉、何か言えよ?」


「ごめん、ちょっとキュンときてもうた…」


「おう、しっかりしろよ?」


「もー、うっさいな、あんたがおかんやらんとうちどないしたらええかわからへんで?」


「ま、こんなかわいい姉がいてもいいかもな」


「うちがかわええのはほんまやけどな、あんまからかわんといてな?」


「はいはい、お前は本当にかわいいよ…」


「………ありがと、ナギ」


「いいって…ごちそうさま、そろそろいくか」


「せやな、ごちそうさま…ほんじゃここはうちが出すから財布仕舞いなはれ?」


「おっ、サンキュー」


「ええんやで、それよかな…ナギ」


「どうした?」


「手え繋ぐのはええんやけどな、あんたどうやったら迷子になるねん?」


「ああ…確かに大仏が動いていれば…って、コラ!」


「「HAHAHA!」」───。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る