第25話 古都のカフェーで
◇
「GWを外してもこの賑わいか…ま、ここのカフェが空いててよかったよ」
「せやな、ええ天気やし、うちらとおないで古都を散策しとるんやからしゃーないな。ほんならうちらはのんびりな、おしゃれなカフェーでハムチーズサンドと…」
「お前、なんで飲めもしないコーヒーを頼んだんだ?」
「そらあれや、うちだってちょびっと大人になりたいときもあるんやで?」
「気持ちはわからなくもねえが、まだ早かったようで?」
「せやな、こんなん砂糖入れんと飲めへんわ…。ほんまやったらこのまま香りを楽しみたいんやけど」
「ああ、いつかわかるといいな…ところで、お前はいったい砂糖を何杯入れるつもりだ?」
「そら飲めるぐらいに決まってるやろ?…って、甘っ!?」
「入れすぎだ、コーヒーシロップでも作るつもりか?」
「ザッハトルテより甘いんとちゃうか?」
「お馬鹿、あたしにも一口くれ」
「ナギ、関西人にバカ言うたらあかんで?…ほな」
「………甘っ!?お前アホだろ!」
「「HAHAHA!」」
「やってもうたわ…これどないしよ?」
「さあな、胃もたれするかと思ったよ」
「なんや、おかんだけにもうおばはんか?」
「うっせーよ、まあ肩凝りは相変わらずだよ」
「そら自分の胸に聞いてみ?」
「あ?…もしもーし?お前らがあたしの肩凝りの原因か?…えっ、違う?それは夏目漱石が悪いって?」
「ほんまに聞くやつがあるか!」
「「HAHAHA!」」
「お前といるとな、あたしもボケないといけない気がしてね」
「そらナギのノリがええんやろ?あんたほんまおもろいで」
「そいつはどうも。で、そのコーヒーシロップは飲めるのか?」
「心配せーへんでもな、関西人は甘党やから気にせんでええ…って、甘っ!」
「「HAHAHA!」」
「なんだ、歴史的なあれか?」
「せやせや、大昔に砂糖が集まった地域やからな…しっかしこれ甘過ぎとちゃいますか?誰やねん、こんなん甘くしてどないすんねん?」
「それはあたしが聞きたいよ」
「「HAHAHA!」」
「そらええねん。それよかな、あんたのライスカレー…お口直しに一口くれへんか?」
「お子ちゃま舌には辛いぞ?」
「うっさいわ!」
「「HAHAHA!」」
「ま、コーヒーシロップにはちょうど良いかもな…ほい」
「ありがと、あーむっ…んっ…辛っ!」
「言わんこっちゃない…お前の作ったコーヒーシロップで中和しろ」
「ひーっ…こらあかんわ、ナギの間接キッス、刺激的すぎんとちゃいますか?…ひーっ…」
「お前の甘ったるくて苦いのとはまた違うだろ?」
「それな、スパイシーやけど案外相性ええかもな」
「確かに、あたしも大人ぶらないで甘いの頼んでおけばよかったかもな」
「ま、レイコーやったらええんちゃうか?」
「レイコー?…ああ、アイスコーヒーか。薄まっていくから苦味はあまり気にならないのさ」
「おっ、ナギが大人の余裕を見せ付けますな?」
「ああ、かわいい妹分を目の前にしたらな…しっかりとした姉をやりたくなるんだよ」
「せやけどたまにはうちを頼ってもええんやで?」
「おう、それじゃあウィラ姉…あたし迷子になるの恥ずかしいからさ、ここ出たら手繋いでくれるか?…」
「………」
「おーいウィラ姉、何か言えよ?」
「ごめん、ちょっとキュンときてもうた…」
「おう、しっかりしろよ?」
「もー、うっさいな、あんたがおかんやらんとうちどないしたらええかわからへんで?」
「ま、こんなかわいい姉がいてもいいかもな」
「うちがかわええのはほんまやけどな、あんまからかわんといてな?」
「はいはい、お前は本当にかわいいよ…」
「………ありがと、ナギ」
「いいって…ごちそうさま、そろそろいくか」
「せやな、ごちそうさま…ほんじゃここはうちが出すから財布仕舞いなはれ?」
「おっ、サンキュー」
「ええんやで、それよかな…ナギ」
「どうした?」
「手え繋ぐのはええんやけどな、あんたどうやったら迷子になるねん?」
「ああ…確かに大仏が動いていれば…って、コラ!」
「「HAHAHA!」」───。
◇
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