第23話 たぬきとキツネ
◇
「珍しいな、今日はタヌキうどんか?」
「ちゃうねん、ハイカラうどんや」
「ハイカラうどん?」
「せや、うちの方ではそう言うんや。タヌキちゅうたら京の方やとな、お揚げとネギの入ったあんかけうどんの事を言うんやで?」
「へえ、勉強になるな…それでさっき食堂のおっちゃんと揉めたのか」
「揉めてへん、そらカルチャーショックやからしゃーないしゃーない」
「まさかキツネうどんが売り切れなんてね、お前の広告効果で嬉しい悲鳴だろうよ」
「そらケツネうどんは最高やからな。関東風の出汁もええけど、やっぱうちは関西風が恋しいわ…あ、おっちゃんにリクエストしとこ」
「京風たぬきうどんもか?」
「おっ、せやな、冬場に近なったらリクエストしとくで」
「ま、お前も食堂のおっちゃん達も楽しそうだから良いんじゃないか?」
「ほんまええ人達やからな、今後もご贔屓にさせていただきますわ」
「それがいい、ところでタヌ…ハイカラうどんはどうだい?」
「言い直さんでええで? せやな、まあまあやな、たまにはありやで?」
「厳しいね、キツネうどんには勝てないか」
「そらな、うちはお揚げの事になったら目が無いんやから当然やろ?」
「全く、このおきつねさまは…あ、そう言えばこの前さ…、お前が家庭科室に現れたのは笑ったぞ?」
「そらな、うちのお揚げちゃんセンサーが反応したんやからな」
「手作りの油揚げをやるって話だったからな…、嫌な予感がしていたよ。…そしたらいつの間にか一人多いからな?」
「家庭科部のみんなびっくりしたんとちゃうか?」
「そりゃしれっと現れて妖怪みたいだったし…、ジャパニーズホラーか?」
「「HAHAHA!」」
「妖怪言うな!そらびっくりさせてもうたかもしれへんけどな、ジャパニーズホラーは酷いんとちゃうか?」
「いや、気配すらしなかったし、家庭科部の連中…うん、人が超常現象に遭遇したらああなるんだな…って、勉強になったよ」
「ま、挨拶せんとおケツネに夢中やったうちが悪いんやけどな」
「ああ、油使っている時だったから危ねえぜ?今度からはちゃんと声をかけろよ?」
「…ごめんなさい」
「いいよ、わかってくれれば。それよりもお前、随分と部員達に懐かれたな?」
「なんかあれやな、うち愛玩動物かと勘違いされたんとちゃいますか?」
「ああ、お前はいちいちかわいいからな、そりゃ部員達から人気なのも頷ける」
「そら…うち、かわええからな?…ちょっと想定外やったけど、めっちゃおもろかった!また遊びに行ってもええんかな?」
「いや、もう入部しろよ?」
「「HAHAHA!」」
「そらええかもな、運動部はがっかりするやろけど」
「ああ、あたしらは運動部の連中から青春の無駄遣いだって噂されてるぜ?」
「そんなん知らんがな、言わしときぃ」
「ま、家庭科部やりながら生徒会長目指して頑張るのも青春だろ?」
「せやな、ほなうちらの青春の為や、入部届け書いたるで」
「ああ、心から歓迎するよ」───。
◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます