第13話 放課後の青春とかわいい独裁者
◇
「部活か?あたしはパスだ、仮入部行ってる暇あったらな、スーパーで今日のお買い得巡りをするよ」
「あんたは主婦か?おかんか?…いや、おかんやったわ」
「はいはい、それで運動部のラブコールに応えろってか?…ったく面倒くせえよ」
「バスケ、バレー、ハンドボールにソフトボールとあんたの恵体剛打はいつ活かされるんや?」
「却下、面倒くさいしあたしの自由時間が無くなるだろ?」
「せやけどな、貴重な女子高生の無敵時間と引き換えに汗水流してな、持ち出しばっかで銭にならんしょーもない青春を謳歌するんやで?…あ、そらうちも嫌やわ」
「おーい、青春しろ?」
「「HAHAHA!」」
「せやったらな、文化部なら時間の融通が利くんとちゃうか? 帰宅部よかええやろし、そうすれば運動部もセールスを諦めるかもしれへん」
「なるほどな、あたしだったら裁縫と家事全般が得意だから家庭科部か?…あるのか?」
「なんかあれや、地味と言っちゃあかんけど…」
「ああ、地味だな…」
「もしあんたが入部希望言うて飛び込んでみぃ? そらパニック映画でも始まるんとちゃうか?」
「おい…、悲しいけどそれ全く否定出来ねぇよ」
「「HAHAHA!」」
「想像するだけでシュールすぎるやろ? 仮にあんたが入部したとしてな、部活なにしよるん?…って聞かれてみぃ?」
「あ?家庭科部だけど」
「………ん、なんやって?」
「家庭科部」
「なんやって?」
「だから家庭科部!」
「もうええっちゅうねん!」
「「HAHAHA!」」
「確かに聞き返す、あたしでもそうするな」
「せやろ?」
「ああ、だけど家事スキルは活かせるし、あたしは服のサイズがないからよ…それで裁縫を覚えたんだよ」
「なんやろ、あんたが運動部やらされるよりよっぽど青春しとるな」
「だろ? ま、候補としては悪くねえな。ところでお前はどうなんだ?」
「うちか? 持ち出しばっかで銭にならん運動部なんかは嫌やで?」
「だろうな、それにお前を後輩に迎える先輩方が可哀想だ、性格悪いし」
「うっさいわ」
「「HAHAHA!」」
「で、お前だったら何をやるんだ?」
「それな、あんた生徒手帳見てみぃ?」
「なんだよ、藪から棒に?」
「ええからはよ」
「はいはい…で、生徒手帳がどうした?」
「………」
「おーい?」
「いや、あんたが律儀に生徒手帳持っとるとは思わんかったわ…」
「うるせーよ!」
「「HAHAHA!」」
「でな、校則のとこ見てみ?」
「ああ、眠気と肩凝りが酷くなる文字の羅列だ」
「あんたの肩凝りの原因はそこちゃうやろ? ここについとる立派なメロン二つをな、今すぐ出荷すれば解決するで?」
「出荷するな!」
「「HAHAHA!」」
「ま、話それたけどな…例えば頭髪規定を見てみ? 男子は七三分け、女子は三つ編み?…化石か! 古本屋が買い取り拒否するような歴史的資料を持たせてどないすんねん!?」
「あぁ、三葉虫の化石を見させられてる気分だよ。どうコメントしろと?」
「せやろ? こんなん載せててどないするんや? うちらもうこの時点でアウトやろ? なにそのまま放置しとんねん! 進化か絶滅か選ばんかい!」
「「HAHAHA!」」
「お怒りはもっともだが、ウィラ…それでお前は何をしたいんだ?」
「よう聞いてくれたな、ナギ、うちはな…」
「…へっくしょん!」
「こら! くしゃみしとる場合か!?」
「ごめんごめん、運動部の連中に噂でもされたんだろうな。それで?」
「…せや、うちはこないなケツ拭く紙にならんような校則をな、時代に合わせて変えるべきやと思うんや」
「そりゃそうだな…、そうなると…」
「せや、うちは生徒会に立候補するで?」
「なるほどね、それはありだが…役職は?」
「そら決まってるやろ、うちが生徒会長に立候補してな、卒業まで長期政権を築いたるで!」
「ほう、良いね…クソ生意気で性格の悪い一年生のお前が、上級生を差し置いて前例を覆そうってか? おもしれえな、せいぜい頑張れよ、かわいい独裁者。ハイル…「ナギ…、そら笑えんで?」」
「わりぃ、モンティパイソンって訳にはいかないか」
「そらブラックユーモアも笑えるんやけどな、一応な、うちのじっちゃん達はナチ嫌いで日本に亡命したんや…」
「そっか、それは悪かった」
「ええんやで…、ほんでうちの懐刀のあんたもな、当然立候補するんやで?」
「…って、あたしもかよ!?」
「そらあんたがおらんとかわいい独裁者はどないなる?」
「ああ、それは心配だね。それじゃああたしはラインハルトってか?」
「あほ、もっと物騒にしてどないするんや!」
「「HAHAHA!」」───。
◇
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