第20話 迷い猫の大冒険
◇
『フギァアア!…キャキャ…ゴロロロ…』
「あんたあいそええな? 名前なんて言うんや?」
『フニャアア…ンー…』
「そっかそっか、あんたええ毛並みやな?」
「おーいウィラ…なんだ、ずいぶんかわいいお友達じゃねーか?」
「おっ、ナギや。ほらあんた、挨拶せな三味線にされてまうで?」
『フニャッ?ウウーン…キャキャッ?』
「お前はあたしを何だと思ってるんだよ? 茶トラか、あたしはナギだ」
『ンンッ?…キャキャ…』
「あんたもかわええな、猫ちゃんに挨拶するタイプやったんか?」
「意外か? あたしは意外かもしれないけど、かわいい生き物が好きなんだぜ? おい、お前腹減ってるのか?…ごめんな、餌付けするわけにはいかないんだよ…」
「あんたほんまは優しいんやな…なんや、同じネコ科やからか?」
「本当は優しいってな、同じネコ科ってな…ウィラ、お前…」
「冗談や、そんな怖い顔せんといてな?…ひょっとしてうち、食べられてしまうんとちゃうか?」
「ああ、お前は食べちゃいたいぐらいにかわいいからな?…性格悪いけど」
「うちの人生はこれまでやったか…ってな、性格悪いのは余計やで?」
「「HAHAHA!」」
『ニャッニャッ?ゴロロロ…』
「食べちゃいたいぐらいにかわいいのも事実だろ?」
「…ナギ、目がマジやから怖い…」
「なんてな?それよりこの茶トラの名前は?」
「さぁ、まだなんも考えとらんで?」
『フギァァ…ウウーン?』
「じゃあチャゲ?」
「Ja―Ja―Ja―」
「良いハスキーボイスだけどなんかイントネーションがちげぇな、ドイツ語か?」
「せやで、ヤーヤーヤーなんていうたらあれやろ、歌って踊れる美形のキッズ達のあれとちゃうんか?」
「そっちかよ、まぁいい…茶トラ、お前はなんて呼ばれたい?」
『キャッキャッ…』
「癒されるなぁ…お、この子…立派なたまたまやな? ふふっ、ええ男や………」
「おーい、淫乱処女ビッチのおぼこ芋娘、顔を赤らめるな、かえってこーい?」
「「HAHAHA!」」
「あかんあかん、うちがネコやったらこのままおピンクな性教育の時間やったで?」
「はいはい、とりあえずお前の名前は…バンチ、バンチでどうだ?」
『キャッキャッ…ウウーン?…ニャ!』
「なんでバンチなんや?」
「お前が立派なたまたま言うからな、たまたま、キンタ、大冒険、冒険…英訳でアドベンチャー、アバンチュール…アバンチュールからとってバンチってとこだ」
「なるほどな、あんたは今日からバンチやからな?ほんま立派なたまたま持っててよかったな」
「おい、盛り上がっているところ悪いが…」
「なんや、そらたまたまは盛り上がって当然やろ? な、バンチ」
『キャッキャッ』
「そうじゃねーよ…よし、バンチ…お前、今度病院に連れていかないとな」
『フギァ!?』
「そっか…病院連れてかなあかんか、かわいそうやけど…」
『フギャア!ニャッニャッ!』
「あぁ、こいつ…、人懐こい上に思ったよりも賢いぞ?」
「うーん、せやな」
『ウウーン…』
「「病院」」
『フギャ!フギャア!』
「ウィラ、お前は職員室に事情を説明。あたしは生徒会にカチ込む」
「わかった、ほなバンチ、あんたも行くんやで?…よいしょ…」
『ふにゃ?ウーン…キャッキャ…』
「いや、職員室まで連れていくのかよ?」
「そらな、説得力も必要やろ?」
「ああ、そうだな…あ、ついでに保健室にも行ってくるわ」
「なんや、今すぐ手術でもするんかいな?」
「おいおい、保健室利用している奴らはペットか?」
「「HAHAHA!」」
「飼い主さんは家にでもおるんかいな?賢いもんやな」
「「HAHAHA!」」
「ま、ジョークはそこまでだ。養護教諭の姉さんな、確か家族がネコボラやってるんだよ。話通しておけばさ、バンチにとっても悪い話じゃないだろ?」
『ニャッニャ!』
「なるほど、それええな。ほなバンチ、挨拶回りに行くで?」
『キャッキャ』
「それとあれだな…」
「せやせや…」
『フニャッ?』
「「病院」」
『フギャア………』───。
◇
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