第20話 迷い猫の大冒険







 『フギァアア!…キャキャ…ゴロロロ…』


「あんたあいそええな? 名前なんて言うんや?」


『フニャアア…ンー…』


「そっかそっか、あんたええ毛並みやな?」


「おーいウィラ…なんだ、ずいぶんかわいいお友達じゃねーか?」


「おっ、ナギや。ほらあんた、挨拶せな三味線にされてまうで?」 


『フニャッ?ウウーン…キャキャッ?』


「お前はあたしを何だと思ってるんだよ? 茶トラか、あたしはナギだ」


『ンンッ?…キャキャ…』


「あんたもかわええな、猫ちゃんに挨拶するタイプやったんか?」


「意外か? あたしは意外かもしれないけど、かわいい生き物が好きなんだぜ? おい、お前腹減ってるのか?…ごめんな、餌付けするわけにはいかないんだよ…」


「あんたほんまは優しいんやな…なんや、同じネコ科やからか?」


「本当は優しいってな、同じネコ科ってな…ウィラ、お前…」


「冗談や、そんな怖い顔せんといてな?…ひょっとしてうち、食べられてしまうんとちゃうか?」


「ああ、お前は食べちゃいたいぐらいにかわいいからな?…性格悪いけど」


「うちの人生はこれまでやったか…ってな、性格悪いのは余計やで?」


「「HAHAHA!」」


『ニャッニャッ?ゴロロロ…』


「食べちゃいたいぐらいにかわいいのも事実だろ?」


「…ナギ、目がマジやから怖い…」


「なんてな?それよりこの茶トラの名前は?」


「さぁ、まだなんも考えとらんで?」


『フギァァ…ウウーン?』


「じゃあチャゲ?」


「Ja―Ja―Ja―」


「良いハスキーボイスだけどなんかイントネーションがちげぇな、ドイツ語か?」


「せやで、ヤーヤーヤーなんていうたらあれやろ、歌って踊れる美形のキッズ達のあれとちゃうんか?」


「そっちかよ、まぁいい…茶トラ、お前はなんて呼ばれたい?」


『キャッキャッ…』


「癒されるなぁ…お、この子…立派なたまたまやな? ふふっ、ええ男や………」


「おーい、淫乱処女ビッチのおぼこ芋娘、顔を赤らめるな、かえってこーい?」


「「HAHAHA!」」


「あかんあかん、うちがネコやったらこのままおピンクな性教育の時間やったで?」


「はいはい、とりあえずお前の名前は…バンチ、バンチでどうだ?」


『キャッキャッ…ウウーン?…ニャ!』


「なんでバンチなんや?」


「お前が立派なたまたま言うからな、たまたま、キンタ、大冒険、冒険…英訳でアドベンチャー、アバンチュール…アバンチュールからとってバンチってとこだ」


「なるほどな、あんたは今日からバンチやからな?ほんま立派なたまたま持っててよかったな」


「おい、盛り上がっているところ悪いが…」


「なんや、そらたまたまは盛り上がって当然やろ? な、バンチ」


『キャッキャッ』


「そうじゃねーよ…よし、バンチ…お前、今度病院に連れていかないとな」


『フギァ!?』


「そっか…病院連れてかなあかんか、かわいそうやけど…」


『フギャア!ニャッニャッ!』


「あぁ、こいつ…、人懐こい上に思ったよりも賢いぞ?」


「うーん、せやな」


『ウウーン…』


「「病院」」


『フギャ!フギャア!』


「ウィラ、お前は職員室に事情を説明。あたしは生徒会にカチ込む」


「わかった、ほなバンチ、あんたも行くんやで?…よいしょ…」


『ふにゃ?ウーン…キャッキャ…』


「いや、職員室まで連れていくのかよ?」


「そらな、説得力も必要やろ?」


「ああ、そうだな…あ、ついでに保健室にも行ってくるわ」


「なんや、今すぐ手術でもするんかいな?」


「おいおい、保健室利用している奴らはペットか?」


「「HAHAHA!」」


「飼い主さんは家にでもおるんかいな?賢いもんやな」


「「HAHAHA!」」


「ま、ジョークはそこまでだ。養護教諭の姉さんな、確か家族がネコボラやってるんだよ。話通しておけばさ、バンチにとっても悪い話じゃないだろ?」


『ニャッニャ!』


「なるほど、それええな。ほなバンチ、挨拶回りに行くで?」


『キャッキャ』


「それとあれだな…」


「せやせや…」


『フニャッ?』


「「病院」」


『フギャア………』───。




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