第9話 ポスト







「あたしが書記だって?」


「うちは副委員長やで」


「いや、お前はともかくな…あたしが書記かよ?」


「そら委員長やりたがる人がうちら含めて数人やろ?うちのクラス、物好きが多いんとちゃいますか?」


「確かにな、他のポストが空いているのに揃って委員長狙いだろ?…あたしらはともかくさ、他はどうせ内申点が目当てだろ?」


「せやろな、委員長以外は地味思われとるんとちゃうか?知らんけど」


「かもな。それで他の役職の候補者を選出して、改めて集計するのが面倒だからあたしらはスライドって訳か…ま、案外合理的かもな」


「せやろ、中々ええアイディアやったろ?」


「お前の機転で残りは自由時間だろ?委員長より目立っていたな。書記のあたしは黒板とお友達って訳だ」


「そらあんたなら黒板の隅々まで使えるから適任やろ?」


「そうだな…で、投票用紙に『大仏』って書いたの、絶対お前だろ!?」


「あれ、おかしいな?みんなには『大仏』って書かなあかんで?…って根回ししたんやけどな…」


「やっぱお前かよ!?」


「「HAHAHA!」」


「ええやん、ちょっぴり親しみやすくなったんとちゃうか?」


「そりゃ確かにそうだな…で、それはいいけどさ、『メカG〇DZILLA』って誰だよ!? ったく、ふざけた事書きやがって…そいつの顔を見てみたいぜ?」


「あ、それうちや」


「お前かよ!?」


「「HAHAHA!」」


「そらー、うちのクラスに怪獣がおるからな」


「あたしの事かよ!?大仏になったり怪獣になったり忙しいな、おい」


「「HAHAHA!」」


「そらあんたからみたらなー。男子はともかく…その他大勢は逃げ惑う一般市民とちゃいますか?」


「あたしの身長測るスケールを間違えてないか? あれか、フィート換算か?」


「そら光の巨人が必要…あ、そっちでも良かったかもしれへんな」


「よくねーよ!?3分で帰ってやろうか!?」


「ごめん、冗談やから帰らんといて?…それでカラータイマーは…」


「少しは反省しろよ!」


「「HAHAHA!」」


「ええねんええねん!だってあんた書記やろ?…ほんならうちらに都合の悪い事あったらな、力業で書き換え可能やろ?」


「おい、それを言うならあたしを書記長って呼びな?」


「よっ、同志シュターリン!」


「お前、お疲れのようだから花壇の花を数える仕事でも紹介しようか?きっといい香りと色彩に癒されるぞ?」


「そらええかもな、シベリア行きより優しいんとちゃうか?」


「「HAHAHA!」」


「おいウィラ、ナイフを使えよ?」


「同志書記長、誰を?」


「「HAHAHA!」」


「ま、せいぜい書記長として邁進するぜ」


「せやな…って、なんでやねん!書記長おったら委員長いらんやろ!あんたはポリシェヴィキか!?」


「「HAHAHA!」」


「あーあー、うっせぇな、それはそうとお前が副委員長か。なんで?」


「それな、うち日本語不自由やって勘違いされたんや」


「「HAHAHA!」」


「お前、自己紹介でやり過ぎたな?」 


「せやせや、うち外人枠らしいで?」


「そりゃ25%がドイツ人、残りの全てが関西人…あ、やっぱ外人だな」


「「HAHAHA!」」


「うちちゃんと根回ししとったんやけどな…。なんかな、ナギが変な日本語教えたって事にされてもうたで?」


「自業自得だろ!」


「「HAHAHA!」」


「そんな訳でうちは楽なポストやし、委員長のオツムが固くてアレやけど、うちらの責任と神輿が軽なったで?」


「そりゃあ良いな、そういう発言するお前の性格は悪いけど」


「性格悪いのは余計や!」


「「HAHAHA!」」───。





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