第8話 誤植と大仏と学級委員







「ふふっ…。ナギ、あんたほんまにおもろいな?」


「…さっきから何だよ」


「いやな、うちらの席順、五十音順やんか」


「ああ、それがどうした?」


「あんたの後ろの子がな、めっっっっちゃ身ぃ乗り出しとったやろ?黒板見えへんから。それが気の毒で気の毒で………、つい笑てまうんや」


「うわ、性格悪。伏せたら伏せたで怒られるのアタシだし、それは癪だから」


「そら眠くなる授業をする方も悪いわ、あれ自分が総統閣下と勘違いしとるんとちゃうか?」


「お前が抗議して事なきを得たから助かったよ」


「ええんやで、うちはおつむの弱いノータリンと理不尽が大っ嫌いなんや」


「最悪な組み合わせだね、それは」


「「HAHAHA!」」


「年功序列で中々クビに出来ないシステムやとほんま面倒やからな…」


「あたしらからすれば反面教師って奴だな」


「せやせや」


「…って、おい、これガキのする会話か?」


「「HAHAHA!」」


「そら背伸びしたいお年頃やからな?」


「タッパがイロハ(168cm)あるお前が背伸び?」


「あんたがイワナ(187cm)そうな話やな?」


「「HAHAHA!」」


「言葉遊びは程々にな。ところであたしも気になったんだけどさ」


「なんや、うちがなんでかわええか気になるんか?」


「ああ、かわいいお前の色んな表情をみたくてたまんねえぜ?…いや、そうじゃなくて…」


「うちにベタ惚れとちゃいますか?照れるで」


「はいはい、そういうお前はな、五十音順とやらで間違われていただろ? なんでお前…"あ行"扱いなんだよ!」


「「HAHAHA!」」


「うちのフォーアナーメどこいったん!?」


「「HAHAHA!」」


「異文化交流の壁は高いな。これは近いうちに席替えでもしないと。学級委員でも立候補すれば?」


「そらええな、ほんまナギの後ろの子が不憫で…ぶふっ!あかん、思い出したら、あかん…HAHAHA!」


「お前笑いすぎだろ! この誤植!」


「「HAHAHA!」」


「あかん、お腹痛いわ!HAHAHA!…」


「はいはい、お前を学級委員に推薦しておけば解決だな」


「ほんならナギも推薦しとくで? こうなったら一蓮托生や」


「あ? あたしもやるのかよ?」


「そら言い出しっぺの法則や、観念しいや?」


「ったく、しょうがねえな…他の委員じゃダメか?」


「例えばあんたが風紀委員やったとするやろ?」


「うわっ、似合わねえ…」


「「HAHAHA!」」


「こんなデカブツおったら殺伐し過ぎとちゃうか?」


「うっせーよ、確かに否定は出来ねえけどさ、仮にそうだとしたら歩く戒厳令かもな」


「それな! せやけどあんたな、そもそもブレザーのボタンは全開、シャツのボタンはセクシー、ほんでリボンはどこいったんや? 月旅行にでも旅立ったんか!?」


「「HAHAHA!」」


「あたしのサイズに対応していないんだ、それで校則違反? まったく失礼しちゃうね?」


「そらあんたのスケールは規格外の特盛やからな、なに食うたらそんなに育つんや?」


「特にこれといった秘訣はないのだが…」


「ハンス=ウルリッヒ・ルーデルか!」


「「HAHAHA!」」


「あたしが風紀委員に向いてない事を理解した上で次だ。保険委員はどうだ?」


「保険金詐欺委員がなんやって?」


「おめーの耳はどうなってんだよ!あたしは反社か!?」


「「HAHAHA!」」


「ほんなら図書委員はどうでっか?」


「あたしに最適だな、高いところに手が届くし、何よりも用心棒に打ってつけだろ?」


「そら盗難被害は減るやろな、似合わへんけど」


「「HAHAHA!」」


「だがな、雑用以外の業務が思い浮かばないな…」


「そらな、委員会なんて体のいい雑用係やろ?」


「違いない」


「「HAHAHA!」」


「とりあえずうちらでクラス委員やりましょか!」


「あぁ、誤植のまんまはかわいそうだからな?」


「牛久大仏の後ろは悲惨やからな?」


「「HAHAHA!」」


「って、誰が大仏だ!!」───。






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