第5話 あなたはもう忘れたかしら?
◇
「いやぁ、ええ湯やったわ」
「ウィラ、ちゃんとタオル巻けよ」
「Ja!って、あんたはうちのおかんか?」
「全く世話が焼けるぜ…」
「「HAHAHA!」」
「そんなこと言うてもな、ナギ…あんた色々はみ出しとるやないか?」
「うっせー、サイズが足りないんだよ…」
「それとな、なんでさっきから屈んどるんや? お腹でも痛いんか?」
「…ウィラ、あとで話すから何も言うな…」
「??」
「それよりも身体拭き終わったら髪乾かそう。ウィラ、10円玉あるか?」
「ナギナギナギ!」
「騒々しい、どうした?」
「あんた、銭湯って言うたらフルーツ牛乳か?」
「あたしはコーヒー牛乳派だ」
「Jawohl!frau kaleun!(了解です! 海軍大尉殿!)」
「ドイツ海軍か!」
「「HAHAHA!」」
「今から10円玉作るで、おばちゃーん! フルーツ牛乳とコーヒー牛乳な」
「全く、元気なこった…ガキンチョか…」
「そらな、お毛毛生えとるけどまだガキンチョやで?」
「うら若き乙女が皆まで言うな!」
「「HAHAHA!」」
「はいナギ、コーヒー牛乳と十万円や」
「おう、ありがとう」
「ついでにな、あんたのコーヒー牛乳とうちのフルーツ牛乳ちゃん、一口ずつ交換や」
「おう、ありがとう」
「うちとナギの間接キッスやで?…あかん、ちょびっとドキドキして…」
「はい、飲め」
「いけずぅ…ありがと、コーヒー牛乳もええな。うちのフルーツ牛乳ちゃんも中々やで?」
「うん、うまい…ウィラ、飲み終わったら髪乾かすぞ…」
「ナギ、さっきからどないしたんや?」
「…お前本当、綺麗な髪してるな…」
「…なんや、ほんまにどないしたんや?」
「聞くな…、話は終わってからだ…」
「…調子狂うでほんま」
───。
「お客様ご職業は?彼氏おるんですか?…はい、ナギ、終わったで」
「…ありがとう、さて、とっとと着替えて出るぞ」
「はーい」
「ナギはあれか、さらしなんか巻いてあれやな、賭場みたいやな?」
「あー、あたしのサイズだとな、おブラ様が高くてな…」
「せやろな、あんたの身長でそのサイズやろ?………あ、ごめん」
「どうした?」
「…いやな、うち…、わかってもうたわ。うん、はよ出なあかんわそりゃ」
「あぁ、理解してくれたようで何よりだよ」
「よっし、ナギ、巻くの手伝うわ」
「おっ、助かる…って、よく知ってるな?」
「着付けしてもろた時にな、記憶しといたんや…うち凄いやろ?…よし!」
「ありがとう。よし、ウィラ、忘れ物は無いな?」
「うん、そんじゃ行きましょか。おばちゃーん、ええ湯やったわ、またな!」
───。
「ナギ、さっきはごめんな、うちにはわからんくて」
「いいんだよ、古い銭湯って…ま、当時の日本人の身長を考えれば、あたしは規格外だからな」
「そら仕切りの向こう側が見えてまう訳やな? そんでそんで? どうやった?」
「あぁ、ウィラの期待に添えないようで悪いが、萎びた全裸のおっさんパラダイスだった…」
「あれか? ち〇ち〇ぶーらぶらか?」
「言わんでいい!」
「「HAHAHA!」」
「ええ男はおらんかったんか…」
「お前は銭湯に何を求めているんだ?」
「いや、それな、赤いマフラーを手拭いに…」
「逆だ逆!そんなの恋人作ってから待たせとけ!」
「「HAHAHA!」」───。
◇
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