第5話 あなたはもう忘れたかしら?







 「いやぁ、ええ湯やったわ」


「ウィラ、ちゃんとタオル巻けよ」


「Ja!って、あんたはうちのおかんか?」


「全く世話が焼けるぜ…」


「「HAHAHA!」」


「そんなこと言うてもな、ナギ…あんた色々はみ出しとるやないか?」


「うっせー、サイズが足りないんだよ…」


「それとな、なんでさっきから屈んどるんや? お腹でも痛いんか?」


「…ウィラ、あとで話すから何も言うな…」


「??」


「それよりも身体拭き終わったら髪乾かそう。ウィラ、10円玉あるか?」


「ナギナギナギ!」


「騒々しい、どうした?」


「あんた、銭湯って言うたらフルーツ牛乳か?」


「あたしはコーヒー牛乳派だ」


「Jawohl!frau kaleun!(了解です! 海軍大尉殿!)」


「ドイツ海軍か!」


「「HAHAHA!」」


「今から10円玉作るで、おばちゃーん! フルーツ牛乳とコーヒー牛乳な」


「全く、元気なこった…ガキンチョか…」


「そらな、お毛毛生えとるけどまだガキンチョやで?」


「うら若き乙女が皆まで言うな!」


「「HAHAHA!」」


「はいナギ、コーヒー牛乳と十万円や」


「おう、ありがとう」


「ついでにな、あんたのコーヒー牛乳とうちのフルーツ牛乳ちゃん、一口ずつ交換や」


「おう、ありがとう」


「うちとナギの間接キッスやで?…あかん、ちょびっとドキドキして…」


「はい、飲め」


「いけずぅ…ありがと、コーヒー牛乳もええな。うちのフルーツ牛乳ちゃんも中々やで?」


「うん、うまい…ウィラ、飲み終わったら髪乾かすぞ…」


「ナギ、さっきからどないしたんや?」


「…お前本当、綺麗な髪してるな…」


「…なんや、ほんまにどないしたんや?」


「聞くな…、話は終わってからだ…」


「…調子狂うでほんま」



───。



「お客様ご職業は?彼氏おるんですか?…はい、ナギ、終わったで」


「…ありがとう、さて、とっとと着替えて出るぞ」


「はーい」


「ナギはあれか、さらしなんか巻いてあれやな、賭場みたいやな?」


「あー、あたしのサイズだとな、おブラ様が高くてな…」


「せやろな、あんたの身長でそのサイズやろ?………あ、ごめん」


「どうした?」


「…いやな、うち…、わかってもうたわ。うん、はよ出なあかんわそりゃ」


「あぁ、理解してくれたようで何よりだよ」


「よっし、ナギ、巻くの手伝うわ」


「おっ、助かる…って、よく知ってるな?」


「着付けしてもろた時にな、記憶しといたんや…うち凄いやろ?…よし!」


「ありがとう。よし、ウィラ、忘れ物は無いな?」


「うん、そんじゃ行きましょか。おばちゃーん、ええ湯やったわ、またな!」



───。



「ナギ、さっきはごめんな、うちにはわからんくて」


「いいんだよ、古い銭湯って…ま、当時の日本人の身長を考えれば、あたしは規格外だからな」


「そら仕切りの向こう側が見えてまう訳やな? そんでそんで? どうやった?」


「あぁ、ウィラの期待に添えないようで悪いが、萎びた全裸のおっさんパラダイスだった…」


「あれか? ち〇ち〇ぶーらぶらか?」


「言わんでいい!」


「「HAHAHA!」」


「ええ男はおらんかったんか…」


「お前は銭湯に何を求めているんだ?」


「いや、それな、赤いマフラーを手拭いに…」


「逆だ逆!そんなの恋人作ってから待たせとけ!」


「「HAHAHA!」」───。




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