第3話 帰り道ふざけて歩いた







 「ナギ、うちと一緒に帰らへんか?」


「おう、いいぜ…」


「なんや、どないしたんや? 昼までの元気はどこ行ったんや?」


「旅立った、今ごろグアムのビーチでバカンスを楽しんでるよ」


「「HAHAHA!」」


「えらいしんどかったんやな。やっぱあれか、あんた人気者やったからな」


「いや、わかってはいたんだけどさ…、あたしの体格を見ればわかるだろ?」


「そら、あんたを見たら運動部なら誰でも声かけるわなぁ。うちだってそうする」


「昼飯の邪魔されかけて最悪の気分だよ…」


「そらお疲れ様やで」


「お前は良いよな、ドイツ語で捲し立てて撃退出来るんだから…」


「まあな。おかげで煩わしさとは無縁や」


「お前がいなかったら手が出るところだったよ。飯時に邪魔する奴は何人たりとて許さん」


「HAHAHA!初日から停学食らうレジェンドの爆誕やな!…気持ちは痛いほどわかるけどな」


「おかげで初日から救われたよ。お前は天使か?」


「おお、バレてしもうたら仕方ないなぁ!せやで、アタシが天使や」


「あ、いや、ペテン師だったわ」


「「HAHAHA!」」


「あんた何言うとるんや?うちのどこがペテン師や?言うてみ?」


「ウィラ、お前都合の悪いときだけドイッチュラントだろ?」


「「HAHAHA!」」


「せやで、おかげで変な虫が寄ってけぇへん」


「それは便利だな。ところでウィラ、お前髪の色言われなかったのか?」


「これか? 地毛やで? ええ感じのブラオンやろ?」


「なるほどね、羨ましい限りだ」


「あげへんで?」


「出家したくなったら貰ってくぞ?」


「「HAHAHA!」」


「これ売ってヅラにするんかいな? 高いで?」


「………?」


「なんや、どないした?現代文の教科書に載っとらんかったか?」


「…あぁ、すまん、ネタがわからなかった。なんだ、もう教科書読んだのか?」


「せやで、一通り読破したから何でもうちに聞いてな?」


「お、おぅ。…ま、いいや。それより一緒に帰るんだろ?」


「せやせや、あんたはどっちの方向や?」


「駅の方だ。ウィラは?」


「おないやな。駅までご一緒しよか」


「あぁ、ついでに買い物もしたい。時間があれだったら途中先帰ってもいいぞ?」


「付き合うで。今日うちは暇なんや」


「いいぜ…、ってウィラ、買い食いじゃねーぞ?」


「ん?ちゃうんかいな!」


「あぁ、言ってなかったな…、あたしは一人暮らしなんだ」


「おっ、そら偉いな」


「えらい…か?」


「そらあんた、えらい大変なことやし、偉いに決まっとるやろ?」


「あー…そいつはどうも。ウィラ、そう言うお前はどうなんだよ?」


「うちか? うちも…、似た者同士や」


「お前も一人暮らしか? そりゃ言葉と文化が違うし、おな中がいないわけだ?」


「せやで、初日からスベらんといてよかったわ…、あんたが拾ってくれなきゃボッチやったで?」


「へぇ、そりゃどうも…、あたしが天使に見えるか?」


「天使言うよかな、毘沙門天様…「おいっ!」…冗談や」


「「HAHAHA!」」


「ところでな、ナギ…」


「どうした?」


「…あれや、おな中ってな、あんた何エロい事言うとるんや?」


「ウィラ…」


「なんや、なんかうち変なこと言うてもうたか?」


「よく聞け…」


「なんや、なんや?」


「そう言う意味じゃねーよ! 同じ中学校って意味だよ!」


「そうやったんか!? 知らんかったわ!」


「「HAHAHA!」」───。




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