第3話 帰り道ふざけて歩いた
◇
「ナギ、うちと一緒に帰らへんか?」
「おう、いいぜ…」
「なんや、どないしたんや? 昼までの元気はどこ行ったんや?」
「旅立った、今ごろグアムのビーチでバカンスを楽しんでるよ」
「「HAHAHA!」」
「えらいしんどかったんやな。やっぱあれか、あんた人気者やったからな」
「いや、わかってはいたんだけどさ…、あたしの体格を見ればわかるだろ?」
「そら、あんたを見たら運動部なら誰でも声かけるわなぁ。うちだってそうする」
「昼飯の邪魔されかけて最悪の気分だよ…」
「そらお疲れ様やで」
「お前は良いよな、ドイツ語で捲し立てて撃退出来るんだから…」
「まあな。おかげで煩わしさとは無縁や」
「お前がいなかったら手が出るところだったよ。飯時に邪魔する奴は何人たりとて許さん」
「HAHAHA!初日から停学食らうレジェンドの爆誕やな!…気持ちは痛いほどわかるけどな」
「おかげで初日から救われたよ。お前は天使か?」
「おお、バレてしもうたら仕方ないなぁ!せやで、アタシが天使や」
「あ、いや、ペテン師だったわ」
「「HAHAHA!」」
「あんた何言うとるんや?うちのどこがペテン師や?言うてみ?」
「ウィラ、お前都合の悪いときだけドイッチュラントだろ?」
「「HAHAHA!」」
「せやで、おかげで変な虫が寄ってけぇへん」
「それは便利だな。ところでウィラ、お前髪の色言われなかったのか?」
「これか? 地毛やで? ええ感じのブラオンやろ?」
「なるほどね、羨ましい限りだ」
「あげへんで?」
「出家したくなったら貰ってくぞ?」
「「HAHAHA!」」
「これ売ってヅラにするんかいな? 高いで?」
「………?」
「なんや、どないした?現代文の教科書に載っとらんかったか?」
「…あぁ、すまん、ネタがわからなかった。なんだ、もう教科書読んだのか?」
「せやで、一通り読破したから何でもうちに聞いてな?」
「お、おぅ。…ま、いいや。それより一緒に帰るんだろ?」
「せやせや、あんたはどっちの方向や?」
「駅の方だ。ウィラは?」
「おないやな。駅までご一緒しよか」
「あぁ、ついでに買い物もしたい。時間があれだったら途中先帰ってもいいぞ?」
「付き合うで。今日うちは暇なんや」
「いいぜ…、ってウィラ、買い食いじゃねーぞ?」
「ん?ちゃうんかいな!」
「あぁ、言ってなかったな…、あたしは一人暮らしなんだ」
「おっ、そら偉いな」
「えらい…か?」
「そらあんた、えらい大変なことやし、偉いに決まっとるやろ?」
「あー…そいつはどうも。ウィラ、そう言うお前はどうなんだよ?」
「うちか? うちも…、似た者同士や」
「お前も一人暮らしか? そりゃ言葉と文化が違うし、おな中がいないわけだ?」
「せやで、初日からスベらんといてよかったわ…、あんたが拾ってくれなきゃボッチやったで?」
「へぇ、そりゃどうも…、あたしが天使に見えるか?」
「天使言うよかな、毘沙門天様…「おいっ!」…冗談や」
「「HAHAHA!」」
「ところでな、ナギ…」
「どうした?」
「…あれや、おな中ってな、あんた何エロい事言うとるんや?」
「ウィラ…」
「なんや、なんかうち変なこと言うてもうたか?」
「よく聞け…」
「なんや、なんや?」
「そう言う意味じゃねーよ! 同じ中学校って意味だよ!」
「そうやったんか!? 知らんかったわ!」
「「HAHAHA!」」───。
◇
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