第5話

 夕方、授業を終えた私は門の前で葵を待っていた。すると、

「小春!」

 と声をかけられ、振り返る。

「おお。葵」

「急にどうしたの?」

 莉桜のことを話そうと、私は葵を食事に誘っていたのだ。

「うーん。何となく。西錦にしき行こーよ」

 西錦とは、この大学の近くに在る中華料理屋だ。大学の近くにある為、学生には人気がある。オマケに美味しい。

 葵は気前よく了承し、西錦へ向かう事になった。

 軽く談笑しながら、5分程で西錦に着いた。店の扉を開ける。

「いらっしゃーい!」

 と言う店主の明朗快活な声が店内に響き渡る。私たちはカウンター席に並んで座った。

 メニューを開かずに言う。

「私は決まりました」

「え! はや! まあ私も決まったけどねー」

「餃子は食べる?」

「食べるしか無いっしょ!」

 西錦の名物料理と言えば、焼きたてでアッツアツ、羽根パリパリ、溢れんばかりにタネが詰められた西錦オリジナル餃子『おいしーギョーザ』である。名は体を表すを表すを体現した本当に美味しい餃子だ。

 私は店主を呼び、注文を始める。

「味噌ラーメンと餃子二人前、それに回鍋肉お願いします。葵は?」

「私は餡掛け焼きそばと炒飯で」

「はーい。いつもありがとうね2人共」

 注文を確認した後、店主は厨房へ帰って行った。

 味噌ラーメンは、莉桜と一緒に食べたことがある。この店を見つけたのは、その時だ。確か高1の時。

 2人で雑談をしていると、思いの外早く料理が運ばれてきた。味噌の香りが鼻をくすぐる。白い湯気が高く登って行くのを見ながら、胸の前で手を合わせた。

「いただきます」

 割り箸をパキッと割り、麺を持ち上げ、思い切りすする。隣では葵が手を合わせていた。

「熱っ!」

 慌てて箸を起き。軽く咳き込みながら、水を飲む。大きな溜息を吐く。隣を見ると、葵は心配そうに見つめてから、

「何してんの」

 と言って笑った。私も笑った。莉桜と来た時もこうだった。それを思い出し、自然と顔が綻んだ。

 それから私達は夢中で料理を胃に収めていった。『おいしーギョーザ』は変わらずに美味しかった。


「ねぇ小春。なんか話したいことあるんじゃないの?」

 料理を食べ終え少し雑談をしていると、葵が急に聞いてきた。図星すぎて言葉に詰まる。

「……うん。まあちょっと」

 やっとの思いで口に出した。

「話して良いよー。この葵サマが聴いてやるー!」

 葵が雰囲気を明るくしてくれた。こう言う所が私は好きなんだ。

 少し経って、私はこれまであった莉桜との出来事を全て葵に話し始めた。

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