第2話
取り敢えず、コートをハンガーに掛け、アクセサリーを透明の箱にしまう。
「……あと7分」
床に投げ出された参考書から片付けよう。参考書を重ね、1つにまとめ、それを棚の傍まで持っていく。一冊一冊丁寧に棚へしまっていった。
その最中、数年前に買った画集を見つけ読み漁っていると、アラームがけたたましい音を立てて7時になった事を知らせる。
「あ、やば。まいっか。よし。机の上は後でやろう!」
残り数冊を雑に棚へ突っ込み、私は立ち上がる。
洗面所へ行った。顔を洗い、歯を磨く。ふと鏡に写った自分の顔を見た。
(嫌い。なんでお前がここに居るんだ)
そう思ってしまった。鏡を割りたくなる衝動を抑え、洗面所を早々に後にする。
そのままキッチンへ向かった。食パンを1枚取り出し、トースターで焼く。その間にお湯を沸かし、コーヒーを淹れる。それを少しだけ口に含んだ。
舌に鋭い痛みが走る。その後、コーヒーの芳醇な香りが口に広がった気がするが、そんな事考えていられない。
「あっっつ!!」
マグカップを急いで置いて、口元に手を近づけ、また大きな溜息をついた。
そこで、トースターが音を立てて、食パンが焼き上がったことを伝える。舌のヒリヒリとした痛みと戦いながら、食パンを取り出し、お皿に移した。
冷蔵庫から取り出したバターを適当に塗る。食パンの中心にバターの塊が残ってしまったが、すぐに溶けるだろうと放置した。
バターナイフをシンクに置こうとする。そこでまた気付いた。
「……ほんっとに昨日の私は何してたの?」
昨晩の夕飯で使った食器がそのままシンクに残されていた。
(また後でやろう)
と、握り締めたバターナイフをシンクに置いた。
カチャン
と無機質な音が響いた。
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