第7話

「今から、どこ行くの?」

「さあ? 特に考えずに飛び出しちゃったからな」

 わたしたちは並んで歩いた。行く当てもなく。

「俺さ」

「なに?」

「最近、頭の中でおまえとよく話してるんだ」

「は? え? どういうこと?」

 意味わかんないんだけど。

「俺もよくわかんねえんだけど。頭の中で、ガキの頃のお前と、よく会話してる」

「そ、そう?」

 頭おかしくなったのかな……。わたしも、人のこと言えないけど。

「俺、どっか、おかしいのかな?」

「お、おかしくは……ないんじゃない? みんな、人それぞれでしょ」

 ここでおかしい、なんて言っちゃ、わたしはわたしの頭の中でいつもベートーヴェンと話してるんだってことも、おかしい、っていうことになってしまう。それは嫌だ。

「今、こうして実物のわたしと話しているときは、頭の中はどうなってるの?」

「そうだなあ。頭の声と現実は、別物だから、基本、区別して考えてるけど、両方から話しかけられたら聞き取れないから、今は、現実のお前のほうに比較的耳を傾けるようにしてるよ」

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