第6話 空
「相方よぉ、大学はどうした?」
「今日は日曜だよ。まったくソラえもんったら」
このボンクラ。月曜から言い始めてもう三日目だ。毎日が日曜日だったらいいとは言っていたが、学資ローンまで組んでパパさんとママさんが行かせた大学だ。さすがに俺も一言注意しなければならないだろう。しかし、俺もそう変わらない。和菓子屋へ行き、どら焼きを片手にサイレント嬢の風呂を覗く毎日だ。それにしてもこいつら、ほしいものはないのか?俺は風呂で泣きながら俺に裸を見せるサイレント嬢にたずねた。
「あんた、ほしいものとかないのか?」
「自由。私に貼られた値札を剥がしてほしい」
小説の方向性が定まらない。俺は狼狽し、ポケットの中を漁った。どら焼き屋のレシート、ソープの割引券、キャバ嬢の名刺とどれも役に立たない。しかし、最後に一枚のチケットが出てきた。
「檻の中から救えはしないが、空を飛んでみないか?」
サイレント嬢がシャワーを止めた。
「そんな夢が、また見られるの?」
俺はタバコに火をつけ、煙を青空に溶かした。
「ああ。ただ夢からはいつか覚める。あんたの値札、剥がしてやりたかったよ」
俺はサイレント嬢の家をあとにした。
こうしてはいられない。相方を動かさねばならない。あいつはサイレント嬢に惚れてる。彼女のために五人の屈強な男たちに抱かれた。そんな漢が、断るはずがない。
「相方、お前の出番だ」
「どうしたんだい?今日は素手ゴロコミックの発売日だよ?」
何て漫画を読んでるんだ。
「相方、サイレント嬢に夢を見させたくないか?」
「何を打つんだい?」
ドラッグか。小田昭次第二大学はどんなところなんだ?結構気軽に手に入る様子じゃないか。逆に聞かせてくれよ。何を打つんだ?
「とにかくこのチケットを見ろ。そして残りの二人を説得しに行こう」
空き地に近づくとBGMが変わっていく感じの話は割愛する。とにかく俺たちは豪傑とどら焼き屋の前に正座させられている。
「彼女に夢を見せたいんだ」
そう迫った相方は太ももにバタフライナイフを刺された。そしてどら焼き屋がワゴン車を横付けした。終わりだ。某ワークブランドの上下に目出し帽を被っている。次は俺が痛めつけられる。目を閉じたところで、豪傑が俺にたずねた。
「お前ら、何しに来たんだ?」
要件を言う前に相方は刺されたのか?俺は要件を言っていいのか?いや、言わなければならない。
「サイレント嬢が空を飛びたいって言うから、鳥人間コンテストに出ないかと思ってチケットを持ってきまして」
沈黙。サイレント。俺も変態に売られるのか。豪傑がどら焼き屋に向かって顎をしゃくった。
「面白そうじゃんよぉ」
ワゴン車は空き地から走り去った。相方は刺され損か。何てところだ。
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