第4話 豪傑

「俺様を待たせるとは良い度胸してんじゃんよぉ」

あの男だ。鼻の下に一本のラインがある。間違いない。右足でサッカーボールを踏みつける様はまさに豪傑だ。21歳になっても豪傑を貫いていたようだ。しかし豪傑はただの豪傑ではなかった。相方は胸ぐらを掴まれ、二度殴られた。俺は腹に回し蹴りを喰らった。

「俺様に逆らうとどうなるか分かったか?」

ここまで酷い男だっただろうか。相方のメガネは両眼とも割れている。それでサッカーができるのだろうか。しかしこのサッカーにメガネは必要ないようだった。


相方はゴールに設定された壁の前に立たされ、豪傑が蹴ったボールを全身で受け止めている。見ていられない光景だ。さすがの俺でも止めに入ろうとしたところ、ダメよソラちゃんとサイレント嬢に止められた。サイレント嬢も泣いている。いつものことなのだそうだ。しかし俺は、その横で意地悪そうに笑う男を見逃さなかった。

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