第2話 目覚め
目覚めたら押入れの中。襖を開けたら六畳間。黄色い服を着た男が寝ている。だいたいタイトルから予想が付くと思うので詳細は省略させていただく。俺はあの人に転生してしまった。いかつさを感じさせないスキンヘッド。首輪を付けたパンク。何でも叶えてしまう快男児に。
俺は全裸のポケイチになっている自分を心配したが、普段着ているジーパンとグレーのTシャツから特に変化はないようだった。散髪をしていないボサボサ頭、無精髭も変わらない。そして眠っている男も、やけに年齢がいっている。二十歳くらいじゃないだろうか。こいつもボサボサ頭に無精髭だが、黄色いポロシャツを着ている。やはりあの男なのだろうか。
けたたましい目覚ましが鳴り響き始めた。どこにこんな目覚ましが売っているんだ。15ワットのギターアンプよりでかい音だ。しかし男は起きない。やはりあの男だ。俺が起こさなければならないのだろう。
「やい!起きろ!このままだと遅刻だぞ!」
男が目をこすり始めた。しかし寝返りを打っただけで、夢の世界へ帰ろうとしている。俺は押し入れから枕を取り出し、男の頭を叩き始めた。この後にあのナヨナヨとした声が返ってくると思うと腹立たしい。
「何だよソラえもん。今日は日曜じゃないか」
やはりあの人だったようだ。そして俺はソラえもんか。事情は飲み込めたし、やるべきことも大体分かった。願いを叶えていけば良いんだな。不思議なポッケもついている。容易いことだ。ただ一つ、気になることがある。
「お前、いくつだ?」
「21だよ。忘れたのかい?」
「小学生じゃないのか」
「大学生だよ」
バトンタッチ。前任者が引き継ぎの作業を怠ったという訳だ。俺と同じフォルムのソラえもんが何人かいると思うと恐ろしいが、とりあえず寝床と食い物は確保した。良しとしよう。
「大学生だよな?どこの大学だ?」
「嫌だなあ、忘れたの?小田昭次第二大学じゃないか」
小田昭次って誰だよ。大学に第二ってあるのか?俺が言うのも何だが、あの後に終わったルートを歩んだんだな。通りでソラえもんも薄汚い訳だ。残りの連中はどうなったのだろうか。
「今日はみんなで遊びに行くのか?」
「空き地でサッカーをするよ。君も来るかい?」
38歳の俺が小田昭次第二大学の学生とサッカー。終わっている。しかし気になるものは気になる。この物語は基本的に終わりがないはずだからだ。登場人物は知っておくべきだ。そう思っているとBGMが変わり、場面も変わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます