第7話 宗教学18作

エジプト神話集成

ギルガメシュ叙事詩

リグ・ヴェーダ賛歌

神統記

オデュッセイア(全2巻)

ブッダ真理のことば・感興のことば

形而上学(全2巻)

史記(司馬遷。2巻まで読了。全8巻)

聖書

ラーマヤナ(全2巻)

マハーバーラタ(3巻まで読了。全12巻)

華厳経(全2巻)

コーラン(全2巻)

預言者の生涯(全4巻、イスハーク)

古事記

エッダ

「イスラム哲学 中世思想原典集成11」収録「有徳都市の住民がもつ見解の諸原理」

元朝秘史(全2巻)



 おれは宗教書の読書で、人類史の秘密を探る楽しみを得た。人類史の謎を宗教書で読み解くのは、なかなか楽しい読書であると思うので、それを行うのに役にたった本を推薦する。宗教書はその文化圏を理解するのに役立つ書物であり、実際に読んでみるとその宗教や文化圏について勘違いしていたことが多かった。実際に読むと、その文化圏についてのまちがった思い込みが解けてくるので、ここで紹介する。





「エジプト神話集成」


 紀元前3000年頃のエジプトの本である。パピルスに書かれた文書を集めたもの。人類の文化、宗教の起源を知るには、古代エジプトにまでさかのぼると見えてくるものがある。エジプト神話と呼ばれるものが、実際に読んでみると、幻想的な記述など何もないことを読み取ることができる。



「ギルガメシュ叙事詩」


 紀元前2000年頃に、石板か粘土板に書かれたメソポタミアの物語である。とても短い文章で、簡素に書かれた物語である。これが神話なのか、それとも歴史的事実なのか、それが気になる。神々とは何かについて知るには外すことのできない古典であるとおれは考える。



「リグ・ヴェーダ賛歌」


 紀元前1700年頃のインドの本。これに登場する神々は、いったい何者なのか。人々が産んだ幻想的人物なのか、それとも、古代人の英雄なのか。おそらく、人類の口伝が文字によって文書化されたものであると考える。人類に伝えられた口伝を読むことは、人類の歴史と文化を知ることでもあるとおれは思う。



ヘシオドス「神統記」


 紀元前700年頃のギリシャの本である。トロヤ戦争の記録であり、ギリシャ神話と呼ばれるものはこの本から始まる。これを読まずにギリシャ神話の本質を理解するのは難しい。歴史的事実がどのようにして神話になっていくのか、それを確認することは、ギリシャ神話を読む楽しみのひとつだろう。



ホメロス「オデュッセイア」(全2巻)


 紀元前700年頃のギリシャの本である。宗教の本ではないので、本来は文学の項目に入れるべきだったが、文学のおすすめ二十作の切れの良い数を守るために、「オデュッセイア」は宗教書に入れた。トロヤ戦争をうたった叙事詩であり、戦争の悲劇をえぐった名作である。この叙事詩における戦争の風刺は、なるほど、人類の普遍的な愚かさに通じているところがあるだろう。



「ブッダ真理のことば・感興のことば」


 仏教を知るのに最重要な本である。かなり、奇妙な思想が書かれているが、この奇妙な思想を本気で信じたのが仏教である。世の中の真実に思いをはせると、頭がこんがらがってきて、あるべきところの正反対に着地してしまうことがあるが、それがそのまま長期間にわたり正しいとされたのが仏教なのである。



アリストテレス「形而上学」(全2巻)


 古代ギリシャにおいて、物質の根拠を探求した本である。ギリシャのたくさんの思想家の主張が丁寧に引用されていて、とても面白くまとまっている。哲学書になるのだが、現在ではまちがっていることが確実である古代思想の本であり、幻想的な書物としかいいようがないので、宗教書の項目に入れてみた。世界の真実を探求すると、こんな考えにたどりつくこともあるんだなと、なかなか楽しい。



司馬遷「史記」(2巻まで読了。全8巻)


 儒教の本で一冊選ぶなら何が良いか考えてみると、四書五経ではなく、司馬遷の「史記」の方が良いと思った。第一巻の「本紀」は面白い本である。儒教とは、聖君に従おうという宗教であり、聖君がいかにあるべきかを述べている。そして、聖君の王家の血統が交替することに正統性があることを認める宗教であるので、それなら、歴代の王朝が何度も交替したことを描いた「史記」で儒教を知るので良いのではないだろうか。



「聖書」


 キリスト教の聖典である聖書である。旧約聖書と新約聖書からなる。創世記は一度、読んでみるとよいと思う。おれは旧約聖書より新約聖書の方が好きである。死刑囚が神の子とされるほどに讃えられるようになる逆転劇であるからだ。死後に名誉を回復してもあまり嬉しくはないが、それでも、せめてもの慰めなのかもしれない。



「ラーマーヤナ」(全2巻)


 三世紀頃のインドの叙事詩である。ヒンズー教の聖典のひとつ。妻がさらわれて、それを奪い返すラーマ王子の物語である。なかなかよくできていて、さらわれた妻の体が心配になってしまうが、妻を誘拐した魔王ラヴァナはちょっと変なやつで、その辺りの問題が面白い味わいを出している。



「マハーバーラタ」(3巻まで読了。全12巻)


 ヒンズー教の聖典のひとつである。幻想的な雰囲気で書かれた面白い叙事詩である。主筋は、ある王国の五人の兄弟の復讐劇である。「マハーバーラタ」がどんな物語なのかをおれが知ったのはごく最近なので、この本を聖典に掲げる宗教がどんな価値観をしているのかいまいちつかみきれない。



「華厳経」(全2巻)


 仏教の経典のひとつ。とても長い本である。仏教において、価値観を逆転させた本である。華厳経で語られる価値観を良いとするか否とするかは、人の性格を大きく二分する。日本の伝統文化では、華厳経を肯定するか否定するかが、大きな影響力を持っている。いくつかの重要な古典に、華厳経の存在を示唆することばが描かれている。また華厳経かよ、と思うことは多い。



「コーラン」(全2巻)


 七世紀のイスラム教の聖典である。多神教の時代に、一神教を主張した詠唱集である。一神教の概念は、この本によって定められたとおれは考えている。流麗なことばでひたすら神を讃える。モーセの起こした奇跡を根拠に神の実在を主張する本。旧約聖書の注釈のような本でもある。



イスハーク「預言者の生涯」(全4巻)


 イスラム教の開祖ムハンマドの伝記。困難を乗り越えて勝利したムハンマドの人生を神秘的記述で感動的に描く。たった数百人の戦争に勝利したことが、のちの世界的大帝国を築くことになったと思うと感慨深い。世界史的な重要人物の伝記が幻想的世界観で記述されていることに幻惑感を感じる。



「古事記」


 八世紀の日本の本。日本の神話時代の歴史書である。世界史的に見れば、八世紀にようやく民族の歴史書が編纂されたのは遅いといえるが、それでも、遅れてやってきた民族が繁栄することはできるといえよう。いったい、日本神話のどこで世界が始まったのか解釈するのは難しいが、それは逆に、解釈しだいで面白い天地開闢神話を作ることができることを意味するのだろう。



「エッダ」


 十世紀の北欧民族の本。北欧神話は、十世紀に作られた。あまり上手だとはいえない武骨な文章で書かれた短編小説群であるが、そこに見出されるアイデアは、後に北欧神話を魅力的なものにすることに成功した。



「イスラム哲学 中世思想原典集成11」収録「有徳都市の住民がもつ見解の諸原理」


 イスラムの哲学者ファーラービーの哲学短編。一神教の教義をおれが知る限り、最も賢く読み解いた本である。あまりにも難しすぎて、どうでもよくなってくることもあるのだが、キリスト教徒たちが神についての解釈で終わることのない論争を行っていることもあるので、それをとても太刀打ちのできないくらい賢明に解説してあるのがこの短編である。幻想的な天動説世界観の完成形のひとつである。



「元朝秘史」(全2巻)


 モンゴルのチンギス・ハンの伝記。モンゴルの言語がどのようなものなのか、おれはあまり知らないのだが、かなり難しい訳文で、難しい内容が語られている。しかし、そこには、大帝国を築いたモンゴルの思想を伝えているところがあり、読むと世界史を見る目が変わる重要な本である。


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