第5話 科学10作

生命とは何か(シュレーディンガー)

人工生命 デジタル生命の創造者たち

ニューロサイエンス入門(松村道一)

時計にはなぜ誤差が出てくるのか

2000年間で最大の発明は何か

物質のすべては光

世界の覇権が一気に変わる サイバー完全兵器

あなたの体は9割が細菌

精神と自然

DNAの98%は謎



 科学の本のおすすめ十作である。これから、人類にとって重要な本となるのは、文学でも、SF小説でも、宗教書でも、哲学でもなく、科学なのは明らかである。科学の名著が見つかった時の喜びは、他の分野の名著が見つかった時のどれと比較してもそれより大きなものである。科学の名著を探さなければならない。おれは、まだあまり科学の名著を見つけていないが、おれの読んだ科学の名著の十作を紹介する。




シュレーディンガー「生命とは何か」


 シュレーディンガーの猫で有名なシュレーディンガーの書いた生物についての本である。生命とは何かを物理学者の視点から説明していく。物理現象における生命とは何かを知ることができて、とても楽しい一冊である。



スティーヴン・レヴィ「人工生命 デジタル生物の創造者たち」


 デジタルな根拠を持つ世界で、生物といえるものが発生するのかどうかについて研究した多くの科学者たちの研究成果の報告である。主にアメリカの科学者が紹介されている。単純な規則によって変化するデジタル世界で、周期性を持った個体領域が発生することがあるのである。それは本当に生物のようだ。コンピュータ上にひょっとしたら出現するかもしれないデジタル生物を、コンピュータがまだ低性能であった時代に探求していた人々の本である。



松村道一「ニューロサイエンス入門」


 九十年代の日本のニューロンについての研究者の本である。本格的な本であり、頭部のない猫を電気刺激で歩かせたりする。意識は無意識で考えたことが0.5秒遅れて想起されるという当時ではちょっと信じられなかった研究について報告している。他に、視覚がなぜニューロンで輪郭を描けるようになるのかも説明されている。



織田一郎「時計にはなぜ誤差が出てくるのか」


 時計についての雑学を収集した織田一郎の時計エッセイ集である。時間や物事の本質に、時計とは何かという視点から迫るとても面白い本だった。おれは、この本を読んで時計にnなぜ誤差が出てくるのかむかしは理解したのだが、今はもう忘れてしまった。しかし、とても面白くてためになる本である。



ジョン・ブロックマン「2000年間で最大の発明は何か」


 五十人くらいの人が2000年間で最大の発明が何かという質問に答える。いろいろな視点でどの発明が最も重要な発明だったのかに答える。これを読んで、賢い大人がいることを確認できて安心した。世間に出まわっている本が、賢さを微塵も感じさせない刺激のない本があふれていたので、賢い大人におれがうまくたどりつけていないだけだと思い安心した。



フランク・ウィルチェック「物質のすべては光」


 二十一世紀の物理学者の本。この著者はノーベル物理学賞を受賞している。物理の実験をふまえた物理学の本であり、同じようなことを何度も解説する入門書とはちがい、物理現象について見る目が変わってくる指摘をしてくる。おれは科学者に憧れていた。ぜんぜん科学をした人生じゃなかったけど、せめて一冊の良い物理学書を読めてよかった。



デービット・サンガー「世界の覇権が一気に変わる サイバー完全兵器」


 二十一世紀の本。現代機械文明は困難な迷走をしているのかもしれないが、科学開発の現場を襲う理不尽な仕打ちは凄まじい。ここで書かれたサイバー兵器の事実は、お茶の間のニュースでは報道されない過激なものであるが、なぜ、こんな大事件が報道されないのか、この事実を知らずに現代機械文明で生きていけるのかという重要な本である。



アランナ・コリン「あなたの体の9割は細菌」


 二十一世紀のアメリカの本。我々は普段は、机や椅子や自動車を見て暮らしている。細菌は目に見えない。しかし、ウィルスや細菌はとても小さいながらも、人類の人生に大きな影響を与えている。これは、我々と細菌の関係を知ることのできる面白い本である。賢く人生を生きるには、賢く細菌を知らなければならない。



グレゴリー・ベイトソン「精神と自然」


 1971年のアメリカの本。実験心理学では五個か七個しか分類されない心理の状態が、理論的には100個を超えて導かれるはずだという心の科学についての本である。心の働きについての十個を超える指摘は、とても賢い。



小林武彦「DNAの98%は謎」


 2017年の日本の本。ヒトのDNAで遺伝子があるのはたったの2%であり、98%は非コードDNAといわれる。非コードDNAはかつてはジャンクDNAとゴミ扱いされたが、非コードDNAは充分に生物の役に立っていたという本。DNA研究の新しい雰囲気が伝わる迫力ある本だった。



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