第3話 日本文学15作

怪人二十面相

三島由紀夫レター教室

ノルウェイの森(全2巻)

脱走と追跡のサンバ

チグリスとユーフラテス(全2巻)

日蝕・一月物語

プラトニック・セックス

だいにっほん、おんたこめいわく史

道化師の蝶

テキスト9

サラバ!(全3巻)

デルフィニア戦記(4巻まで読了。全21巻)

涼宮ハルヒの憂鬱

「龍盤七朝 ケルベロス 壱」

羽月莉音の帝国(全10巻)



 次は、日本文学だ。日本文学のおすすめの十五作である。おれの読んでいる日本文学の数は、主流文学が270冊くらいで、SF小説が300冊くらいで、ミステリが100冊くらいです。ライトノベルの傑作も書いておきました。ライトノベルは、充分に世界文豪の小説と勝負することができると考えているからです。




江戸川乱歩「怪人二十面相」


 子供向けに作られたミステリの名作である。子供が絶対に楽しめるように、江戸川乱歩が微に入り細に至り作りあげたのだろうと推測される。苦心して作りあげたのか、それとも、楽しんで書き上げたのか。日本では、幅広い読者に支持される定番であり、これを読んだのは、楽しい読書体験だった。



三島由紀夫「三島由紀夫レター教室」


 三島由紀夫の通俗もののひとつである。五人の男女が手紙をやりとりする手紙だけで描かれた小説であり、読みやすく、人情味もある。誰が善人で、誰が悪人か、決めつけないで物語が展開するので価値観の転倒がある。



村上春樹「ノルウェイの森」(全2巻)


 二十世紀後半の日本の小説。保守思想にも染まらず、共産主義の革命闘争にも加わらず、政治的に中性である立場の大学生を描いた小説である。ノンポリ(非政治)とむかしはいわれていた。都会的でノンポリな小説である。日本の文学が土俗的だったところに対抗した都会的な若者の小説であり、なかなか心を打つ。



筒井康隆「脱走と追跡のサンバ」


 不条理文学の傑作である。書かれていることをそのまま受け取ると、この小説の登場人物にいったい何が起きているのか、はっきりしないことを少しずつはっきりさせていく読解の中で、幻想的な面白さが沸き上がってくる。たどりつけないという面白さもあった気がする。



新井素子「チグリスとユーフラテス」(全2巻)


 二十世紀後半の日本のSF小説。宇宙へ植民に行った船の乗組員たちの話。この物語を読んで考えるのは、ただ、希望の行く末である。この小説は希望とは何かを示した名作である。人生観を変えられた小説であり、全二巻とちょっと長いが、読むとたぶん頭がよくなる。



平野啓一郎「日蝕・一月物語」


 日本文学。「日蝕」と「一月物語」が併禄されている。「日蝕」は、西暦2000年の芥川賞受賞作。「日蝕」は、キリスト教的な言語を使わずに、キリスト教の世界を描こうとしたのだろうか。一種独特の独創的な神学世界を築きあげている。濃度の濃い名作である。



飯島愛「プラトニック・セックス」


 飯島愛の自伝の口述筆記。十代の女の人にやってくる衝撃的な人生が描かれていて、これも人生観を変えられた傑作だった。しかし、これが現実だとしても、どう解決すればよいのかおれには思いつかない。いい男を探して生きるのが、若い日本の女の仕事であるようである。日本の女たちがいい男だと考える男は、テレビなんかではやっていないだろう。



笙野頼子「だいにっほん、おんたこめいわく史」


 二十一世紀の日本の小説。かなり奇妙な本である。日本の文化について批判する作家の本である。日本文化の問題児たちを批判するのに、日本の遥か上層部がそれをどう見ているのかとか、その可能性まで考えているのかなと、おれは考えてしまう。感動を覚える名作だった。



円城塔「道化師の蝶」


 二十一世紀の日本の小説。文庫では「道化師の蝶」と「松ノ枝の木」からなる。「道化師の蝶」は、胡蝶の夢のような話を論理的に突き詰めて、現実や自分自身や他者について深めていく。奇妙で幻想的で不条理な小説であり、これが純文学としても成功してしまったのは、素晴らしいといえる。



小野寺整「テキスト9」


 二十一世紀の日本のSF小説。2446冊読んだおれの現在における人生でいちばん面白かった小説である。科学者の教え子が仕事をするために召集される。呼び出されたところを目指して出発してみれば、旅の途中からいくつもの騒動に巻き込まれる。遠未来SFであるが、サイバーSFの要素も持っていて、それらのアイデアが深い。



西加奈子「サラバ!」(全3巻)


 二十一世紀の日本の小説。一般文芸。いろいろ苦心して、冴えないところもあった少年が、大学時代を楽しむ物語だった。姉が出てくるが、姉の奇妙な人生観は印象深い。洗練された価値観がひねくれて、奇妙な行動にたどりつくのが興味深い。現代人は、そこまで難しい演出をするのかと圧倒されてしまう。



茅田砂胡「デルフィニア戦記」(4巻まで読んだ。全21巻)


 二十世紀後半の日本のファンタジー小説。おれが読んだのは、物語の最初の区切りである四巻まで。放浪の戦士に出会った女戦士が王国の謀略に対して戦う話。ありそうでない物語であり、ファンタジーに興味があるなら、典型的なファンタジーのあらすじのひとつとして読んで楽しめるだろう。



谷川流「涼宮ハルヒの憂鬱」


 二十一世紀の日本の小説。ライトノベルに分類されるが、おそらくジャンルはSFであろう。全知全能の存在が地球地表の男子高校生に好意を告げる場合、このようになるのだろうか。しかし、男子高校生と結ばれるまでの時間が長いことに、全知全能の存在の奥ゆかしさを感じる。



古橋秀之「龍盤七朝 ケルベロス 壱」


 二十一世紀の日本の小説。ライトノベルに分類されるファンタジー小説。中華ファンタジー。天下を狙った刺客と、狙われた覇王の物語。魔法的な要素はなし。天下を狙うことに熱さを感じる。だが、天下を狙うことは危うくもあり、不安感が付きまとう。ファンタジーは重厚な演出の方が好きなので、このような小説にがんばってもらいたい。しかし、重厚な演出が好きだといっても、読みにくい難解なものを期待しているわけではない。読みやすく頼みたい。



至道流星「羽月莉音の帝国」(全10巻)


 二十一世紀の日本の小説。ライトノベルに分類される青春小説。世界すべてで革命を起こすことを企む高校生の部活の物語。全10巻は長い。大長編である。世界で革命を起こすのに、どのような組織が必要なのか。最高意思決定機関は何人か。それらが従えることのできる人数は何人か。命令権や影響力が有効に働く組織規模はどのくらいか。とか、この本とは関係ないけど、革命について考えてしまう。



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