遠き山にて秋を待つ

持木康久

むかしばなし

 むかしむかし、その村にはたくさんのお化けがいました。

 お化けたちは村の人に悪さをしたり、育てていたお野菜を食べれないようにしたりして村の人たちを困らせていました。

 困った村の人たちは神様とお話ができる白いカラスにどうしたらいいのか尋ねました。 

 白いカラスは山の神様の所に行って、村を守るためにはどうしたらいいのか聞きました。

 山の神様は言います。

 「村を守る結界を作りなさい。そうすればこの村からお化けはいなくなります」

 白いカラスは尋ねます。

 「どうやって結界を作るんですか?」

 山の神様は白いカラスに言います。

 「村の人の中から美しい女の子を四人、ここに連れておいで。そしたら結界を作ってあげよう」

 白いカラスは村に戻って村の人たちにそのことを伝えました。

 村の人たちは大喜びしました。

 そして村の中でもとびきり美しい女の子を四人選んで山の神様の所に白いカラスと一緒に向かいました。

 山の神様は四人の女の子を見て満足そうに頷きます。

 「それでは結界の作り方を教えましょう」

 そう言うと神様はどこからか取り出した綱を三人の女の子たちの両手両足と首に巻いて引っ張りました。

 女の子の体はバラバラになってしまいました。

 しかし、なんということでしょう!

 バラバラになった女の子の体は美しい反物に変わりました。

 びっくりしている村の人たちに山の神様は言います。

 「足だった反物はアシヅキの方に。腕だった反物はテシロの方に。頭だった反物はカシラギの方に埋めなさい。胴体だった反物と巫女の魂は私が守りましょう」

 村人は山の神様に言われた通りに反物を埋めました。

 すると、村の中が七色に光りお化けたちが消え、田んぼや畑の植物がどんどん元気になっていきます。

 村人は山の神様にお礼を言います。

 そんな中、白いカラスは山の神様に質問しました。

 「もう一人の女の子はどうするんですか?」

 山の神様は言います。

 「最後の巫女は私がもらいます。結界を作ったせいで力が減ってしまったので」

 山の神様が村の人に「いいですか?」と聞くと、村の人たちは「もちろん」と言って頷きました。

 四人目の巫女もそれを受け入れました。

 その後、しばらくして山の中で美しい反物で作られた着物を着た四人の巫女たちが楽しそうに遊んでいる姿が見られるようになったそうです。



『白いカラスと山の神様』より

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