第24話校歌!?

「メガ歌唱部☆らいぶはみんなで6曲選んで演奏するよ!そのうち2曲は一花ちゃんの曲がいいんだけど――」

「やりますやります!」

 一花さんは目を輝かせて言った。体を前にぐっと動かしたので机がガタンっと動く。

「よかった!なら4曲決めないとね…」

 無難に青春チックな曲がいいだろうか。それと流行りの曲とか……

 うーん……学校で流すといい曲……学校といえば…


 校歌……校歌…!校歌だ!

 ただただ校歌を演奏するんじゃなくて、歌唱部らしくアレンジして――

 自分で言うのもおかしいが、良い閃きだと思った。

「先輩!校歌とかどうですか?」

 僕の唐突な意味不明な発言に朱音先輩は困惑と驚きの表情を浮かべた。

「ただ校歌を演奏するんじゃなくて歌唱部らしくアレンジしたりしましょう!」


「その発想はなかったな…すごいな克己君…!」

 和人先輩が目を見開いて言う。それに続けて数音先輩も「楽しそう!賛成賛成~!」と声を上げた。

「最っ高だよ克己君!先生たちもきっとOKしてくれるよ!!」

 朱音先輩がダンっと机に手をつけて言った。

 自分の発言でここまで周りが盛り上がったのは久しぶりだ。

「ありがとうございます!」

「ならアレンジは私ががんばる!」

「うんうん!」

 気づけば暑さを忘れてみんなで話し合っていた。

 そして残りの3曲が決まるのにそう時間は要しなかった。


「よし!決定!!」

 黒板にはさっき決めた4曲と『最強の2曲!!』と一花さんの字で書かれている。

「それじゃあ今日はこれで終わり!明日から練習開始だからね~!」


 帰り道、加藤君と会った。

「加藤君じゃん」

「お!」

「先輩に加藤君が入部できるか聞いてみた。考えとくって言ってたよ」

「え!?わざわざありがと…」

「熱意がすごく伝わってきたからできれば入部してほしいな」

「でもまだ決まったことじゃ……」

「ううん。入れるよ。絶対」

 言ってしまった。でも本当に入れると思ったんだ。

「じゃあ俺こっちだから」

「うん。じゃあね」

 僕は加藤君に軽く手を振って帰宅した。




 風呂上がりの火照った体をベッドに叩きつける。スマホを開くと冬弥からメッセージが届いていた。

『めっっっちゃ暇。今電話できる?』

 正直めんどくさかったが、明日のことを考えると歌の練習はできないので仕方なく『いいよ』と送信した。一瞬で既読がついたと思えばその直後にけたたましく着信音が鳴った。


「もしも~し」

『聞こえる~』


『すまん。暇でしかたなくてさ。最近どうよ?』

「授業がむっずい」

『そうか?」

「お前は地頭いいもんなぁ……」

『へへっ、まぁな』


『部活の調子は?』

「文化祭ででかめのイベントをやるんだけどさ、そこで歌う曲決めた」

『気になる』

「校歌」

 ニヤニヤしながら冬弥に言う。リアクションは予想できるが。

『校歌ァ!?』

 あまりにも予想通りのリアクション。笑いを抑えれるわけもなく電話越しに爆笑した。


「もちろんそのまんまじゃなくてアレンジとか加えるけどさ」

『前代未聞だろ……』

 ごもっともである。

「そういやお前漫画書いてるんでしょ?」

『え?うん』

「気になる」

『しゃあねぇな……』

 どんな漫画を描いてるのか、いつから描いてるのか、知りたいことばかりだ。

『描き始めたのは中二。最初はノートに描いてたけど機材買ってもらって本格的に描き始めた』

「え全っ然知らなかったんだけど」

『そりゃ言ってねぇもん。あ~…今度また色々話すわ。眠い』

「俺も」

『おやすみ』

「おやすみ」


 そこで通話は切れた。

 電気を消して目を瞑る。ふと頭の中で『校歌ァ!?』の声がリピートされる。

 思い出し笑いで2分くらい笑った。




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