第22話数学嫌い!
数学とはどうしてこうもつまらないのだろうか。先生もあんまり好きじゃないし……
「ふぁ~……あ~もうめんどくさ~い!」
5回目のあくびをし、椅子にふんぞり返る。
教科書の文を目でなぞりながら眉を下げる。つらつらと解説が書かれてあるが、私の頭では理解しずらい解説だ…きっとこう思っているのは私ぐらいなんだろうけど。
一方和人くんは夏休み前、姿勢よく座って熱心にノートをとっていた。
……頑張るかぁ…
私との違いを痛感してなんだか恥ずかしくなってきた。
ペンを握る手に力を入れた。
しばらくして学校に着き、部室に向かっている途中、階段でばったり和人くんとあった。
「和人君って勉強熱心で凄いよね~…私も頑張らないと…」
あ、いきなり変なことを言ってしまった。こんなの向こうからしたら「急に何?」
ってなるに決まってる……
「いやいや!全然そんなことないですよ!数音さんは練習にすごく熱心だし、僕の方こそ見習わないと!」
和人君は顔の前で手をブンブンと振る。
「いきなりごめん!」と謝ろうとした矢先、思いもよらぬ誉め言葉が返ってきた。
「ほんと?えへへ…」
思わずだらしない笑みが零れる。
「あ、えっと、私先に部室行ってくるね!」
羞恥心がこみ上げてきて、私は逃げるようにその場から離れた。
「わかりました…?」
和人君は私がなぜ恥ずかしがっているのかわからない様子だった。
部室に入るとムワっとした熱気が体を包んだ。部室には冷房が設置されておらず、いつも汗だくになる。扇風機はあるが、生温い空気が肌に当たるだけで何も涼しくない。
「暑すぎません……?」
部室に入ってきた克己君が背後で言う。
「ね~……」
振り返って克己君に言うと、先輩が部室に入ってきた。
「暑いね~!今日も楽しも~!」
夏の日差しに負けないぐらい輝く先輩の姿は見ていてどこか安心感があった。
「和人先輩とまだ来てないですね。あ、一花さんは今日休むって言ってました。家の事情らしいです」
あ、と思い出す。
「和人君早退しちゃったんだよ~!」
「え!?大丈夫なんですか!?」
思ったより焦る克己君の姿を見て、慌てて付け足す。
「頭痛と倦怠感があったらしいよ。多分熱中症かな?」
「なるほど……」
克己君は寂しそうに眉を下げる。
「水分しっかりとらないとね……みんなも気を付けよう!」
「ですね…」
「今日は演奏ができないから――あ!えっと、今日から演奏がない日は勉強とか宿題もOKにするよ!夏休みのワークとかもここでやって良いよ~!少しでも遊べる日を増やしたいからね!」
先輩が部室の窓を開けながら言う。
なるほど。凄く良い考えだ。
「僕は今日歌おうかな」
「なら私は……はぁ…数学の復習するかぁ…」
ノートと教科書を取り出しながら溜息をつき、机に座った。
「よし!この朱音様が直々に教えてあげよう!」
「いいんですか!?」
私が目を輝かせながら言うと、先輩は「もちろん!」と胸を張って言ってくれた。
先輩が私の隣に座り、「ここはね――」と優しく教えてくれる。その説明はとても分かりやすく、ワークの内容はすんなり頭に入った。
数学も案外悪くないかも……そんなことを考える私だった。
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