第18話ゲホゲホ!

「しんどい……」

 額に貼られた冷えピタ、冷たい氷枕、横に置かれたティッシュとスポドリ、 イガイガする喉、重い身体。

 そう、風邪だ。

 最近昼と夜の温度差が激しかった。恐らくそのせいだろう。

「熱計ろ……」

 体温計を脇に挟み、じっと天井を見つめる。

 体温計からピピピと音が鳴った。見ると、38.8度。朝より上がっている……

 ズズズと鼻水をすすり、軽く咳払いをする。


「克己〜?」

 お母さんの声だ。

「何〜?」

 ガラガラの声で応答するとドアが開いた。

 そこにはお粥おかゆを持ったお母さんがいた。

「はいこれお粥。明日明後日は学校休みなさい。誰かに伝染しうつしたりしたらいけないから」

「わかった」

 お母さんが部屋を出ると、湯気が出ているお粥の茶碗をゆっくり持ち上げ、スプーンを口に運んだ。

 温度はそこまで熱くなく、食べやすかった。



「ごちそうさま」

 空の茶碗を机に置き、重い体を横にする。ベッドがギギギと音を立てるの同時にあくびをし、目を瞑った。

 眠い時は寝た方がいいだろう。僕は寝ることにした。



「………ゲホゲホ!…夜か…」

 自分の咳で目が覚めた。体の調子は良くなっておらず、光が差し込まなくなった部屋は真っ暗だった。

 電気をつけて、スマホを手に取った。画面には、「3件のメッセージ」と表示されている。ロックを解除し、メッセージを確認すると、それは先輩たちからだった。

 朱音先輩、和人先輩、数音先輩の順で短くメッセージが送られている。


 大丈夫?練習は克己くんが来てから再開するからゆっくり休んでね!


 ゆっくり休んでね


 大丈夫か!ゆっくり休んでね!


 心配してくれるありがたさと、早く治さなきゃという申し訳さが入り交じる。

 鼻をすすってディスプレイに指を当て、送信ボタンを押した。


 ありがとうございます。なるべく早く直せるように頑張ります。


「これでよしっと……夕飯どうしよ」

 下の階まで降りるのもキツイし、家族に伝染すわけにはいかない。

 …今はお腹が空いてない。適当にスマホでもイジっていよう。




「克己〜ご飯ここに置いとくからね〜」

「っ!あ、は〜い」

 いきなりお母さんの声がしたのでびっくりした。

 お母さんが階段を降りたのを確認したあと、ドアを開け夕食を部屋に持って行った。

 生姜スープとお粥、そして卵焼き。食べやすいメニューだ。


「いただきます……」

 あぁ……早く治したい……












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