第17話クセ強顧問現る

今日は夏休みに入って最初の部活。

部室に入ると既に3人とも集まっていた。

けど…3人の横に……なんかイカつい人がいるんだけど…

「克己くん!今日は顧問の先生が来てま〜す!」

「ここの顧問やってます。松永仁まつながひとしです」

低い!!声が低い!背が高い!怖い!!

「―――怖い?」


「へ?」


「やっぱ怖い?」


自らの黒く光る肌を指さして松永先生が言う。

「まぁ……正直…」

いやまぁここで嘘をつくのもなんか違う気がしたから正直に言ったんですよ!――って言う勇気は僕には無い。ごめんなさい。


「――ずっ―ち――」

ん?

松永先生が蚊の鳴くような声で言った。それを聞いた先輩達は何かを察したような表情をする。その中で和人先輩は小さく溜息をついて視線を右上に移した。

「かずっちぃ……やっぱ怖がられるよ…」

「そりゃそうでしょうよ。先生を初めて見てビビらなかった生徒なんて居ないんですから」


かずっ………ち……???


「???」

「先生は俺のことをかずっちって呼ぶんだよ」

「まぁ要するに仲のいい生徒と先生って事だよ!」

数音先輩が付け加える。説明を受けてなお僕の頭の中は「?」でいっぱいだった。


目の前のイカつい顧問が急に悲しげな表情になったかと思えば生徒のことをあだ名で呼んで――情報量の多い文章だな…

「まぁいいか。たまに部室に来るんで。よろしくお願いします」

「よ…よろしくお願いします……」

「そんな固くならなくてもいいんだぞ!じゃ!」

そう言って松永先生は部室を出た。


「さてと…今日は何する?」

「たまには演奏します?」

最近はほとんど好きな歌を歌って他愛もない話をしてという流れが当たり前になっていたが、久しぶりの演奏となると期待と不安が同時にやってくる。

「この前歌唱部☆ライブで歌った曲でいいんじゃないですか?」

和人先輩が言う。

「いいですねそれ!」

僕は賛同し、2人の答えを待ったが、「待つ」という表現をするには早すぎるスピードで、

「そうしよっか!」

「さんせ~い!」

そう言ってくれた。


マイクを握り、電源をつける。僕はこの瞬間が好きだ。「歌唱部にいる」って感じがするから。

何度も練習したあの曲が部室の響き渡る。激しいメロディーが僕のテンションを上げてくれた。

「――♪――♪」

ひとりで歌うのとみんなで歌うのじゃ天と地の差。

曲が進むにつれ上がっていくテンション。僕は最高のテンションで歌い終わった。

気づけば額は汗で濡れていた。



「じゃあ今日はこれで終わりかな!」

夏休みの活動時間は通常より少し短い。

リュックを背負って階段をおりる。靴を履き替えていると1人の男子と目が合った。一瞬気まずい空気が流れたが、僕から目を離して昇降口から出ていった。

「?」

こちらを見ていた目にどんな感情が込められているのか僕には分からなかった。











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