第16話真夏のゲーセンは疲れる3

「っしゃあ!!」

 止まった光の位置は綺麗にバーの位置だった。

 バーが倒れてポテチが落ちてくる。

 取れたポテチは2袋だった。うすしおとコンソメ、どちらも好みの味だ。

 正直これで満足。冬弥を探しつつ他にいい台がないか探すことにした。


「くっそ…あと1回!あと1回だけ……」

 見るとフィギュアのUFOキャッチャーの前で悔しそうにしている冬弥の姿があった。

「お〜い」

 冬弥がこちらを見る。ボタンを押そうとしていた手がゆっくりと降りていき――


 ポチッ


「「あ」」

 アームが降りていく。フィギュアに向かって降りていったアームはガッシリとフィギュアの箱を掴んだ。

「「お!?」」

 そのままフィギュアは穴に鈍い音をたてて穴に落ちた。

「よっしゃああ!?」

 信じられない光景に半分疑問を持っているのか不安定なイントネーションで冬弥が叫ぶ。

「マジで!?」

 正に奇跡。冬弥はフィギュアの箱を抱え言った。

「3000円ぐらいかかったよぉ……」

 3000円。普通なら1500円ぐらいで諦めてもいいと思うが……アニメ好きは恐ろしい。

「てか克己それだけでいいの?」

 20分ぐらいかけて戻ってきた友達がポテチしか持ってなかったら至極当然な疑問だと思うが…

「その言葉そっくりそのまま返すわ」

「確かに」

 2人とも同じようなことをしていた事実に二人で笑い合う。

「さ〜て、帰りますかね!」

 冬弥は言った。現在時刻は午後5時。バスの時間なども合わせれば丁度いい時間だろう。

「だな!」

 笑顔で僕は言った。でも心の中で、このままもう少し遊びたいという気持ちがどこかあった。その気持ちを振り払うように「楽しかった」と僕は小さく呟いた。



「んじゃ俺はこのバスで帰るわ」

「了解。またね」


「またね」冬弥はそう言ってくれた。

 バスに乗り、窓から冬弥を見ると笑顔で手を振っていた。僕も手を振り返すと、バスが発車した。


 冬弥の姿が見えなくなった後、沈み始めている太陽を見てあくびをした。永松の景色が流れていき、段々と見慣れた街の景色が近づいてくる。

「っ!」

 メールの着信音だ。マナーにするのを忘れていた申し訳なさと一緒にメールを開くと


 楽しかった!!また今度遊ぼ〜ね!


 とあった。子供のような口調に冬弥らしさを感じる。僕の顔には自然と笑みが浮かんでいた。


 軽く伸びをし、下を向いて溜息を着く。この溜息には、疲れと再会できた喜び、そして寂しさが混ざっていた。

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